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米中間選挙で民主党が失速する最大の理由

日本でも繰り返し伝えられるように、11月8日の米中間選挙では共和党の下院奪還が確実、上院でも民主党のコントロールを奪うことが予想されています。各州の知事選や州議会選でも、軒並み民主党の苦戦が伝えられます。

ある意味で、これは大統領の党が議席を減らすいつものパターンの踏襲なのですが、別の意味において大衆の民主党に対する反発の面があります。

わかりやすいのは、高インフレにみられる経済失政です。与党は、有権者の怒りから逃れることはできません。とは言え、もしトランプ前大統領が続投していたとしても、高インフレで同じように有権者の罰を受けたことでしょう。

共和党は怒れる労働者や低所得層の支持を急速に伸ばしていますが、しっかりとした経済立て直しの策があるわけでもなく、逆に福祉や医療予算カットで人々を苦しめることになるでしょう。米国の有権者は、日本の有権者が「旧民主党系だけには政権を任せたくない」という消去法で自民党に票を投じるように、「民主党だけはダメだ」という消極的な気持ちで共和党を勝たせようとしているように見えます。

しかし、もうひとつ、非常に大きな要因があります。それは、バイデン大統領が11月2日の演説で、「中間選挙では民主主義の存亡が争点だ」と述べたことにみられるような二元論です。これはバイデン氏の大統領としての言動に一貫する傾向なのですが、民主党イコール民主主義、共和党(特にトランプ派)を民主主義の敵とみなしています。

だから、民主党を支持するものの、民主党の経済失政に怒って共和党候補(特にトランプ派)に票を投じる人も、自動的に「民主主義の敵」になってしまうのです。こうした、「私の味方をしないあなたは邪悪で敵だ」式のロジックは、スターリンや毛沢東、ヒトラーにみられた粛清の論理と同じです。この国民統合と融和を否定する姿勢が、多くの米国民に民主党が嫌悪される最大の要因ではないでしょうか。

大統領の演説について、保守系のFoxニュースのピーター・ドゥーシー記者に、「有権者が共和党に投票したら、それは民主主義への脅威だと大統領は考えているのか」と質問され、ホワイトハウスのジャンピエール報道官は、「そんなことはない。それはバカげた質問だ」と答えています。

しかし、これはドゥーシー記者の仕掛けたワナだったのです。なぜなら、バイデン大統領は繰り返し共和党、特にトランプ派が民主主義の敵だと明言しており、そのロジックに従えば、どのような理由であれ共和党に票を投じる米国人は民主主義の敵になってしまうからです。

ジャンピエール報道官は「バカげている」と一蹴しましたが、そうした二元論を用いているのはバイデン大統領その人なのです。だから、報道官は大統領の論理がバカげていると認めたような体裁になってしまいました。まんまとワナにはまったわけです。

いずれにせよ、民主党の権威主義的で異論を許さない姿勢に、多くの米国人はうんざりしているように見えます。今回の中間選挙で予想される民主党の大敗は、経済失政もさることながら、独善的かつ排他的な本質が多くの米国人に愛想を尽かされた結果であることは、押さえておく必要があるでしょう。




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