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勝手にシュンとなっています。


自分の思う「いい」と、他人の思う「いい」は違う。
当たり前のはなし。

いつもボーイッシュな格好をされているお客さまがふんわりとしたベージュのワンピースを着て来られたのは1ヶ月くらい前だったろうか?

ガラッと雰囲気が変わって、そのワンピースはとてもとてもそのひとによく似合っていた。

もう、しばらく目が離せない、そんな感じだった。

「この前のワンピースはよく着てるんですか?」

「あのワンピース、ハサミ入れてカーテンにしちゃいました。」

「ええ〜!勿体ない!すごい似合ってたのに!」

「ずっとは着られないなって、今じゃないって思って、、、」



衝撃でした。
衝撃だったけれど、考えてみれば当たり前の話。

自分とその人は違う人間。

わたしの「いい」を、他人に押しつけてはダメ。


「お姉さんは、紺色と白、どっちを選びますか?」

急な雨に降られて今すぐに長袖の服が欲しいという。

シンプルなTシャツをおススメしたが、
「妥協したらまたすぐ着なくなってしまうから、、、長く使いたいんです。ちょっといい値段だけど、、、」と彼女は言って、約2万円の丸襟シャツを選んだ。


「紺色と白、どっちがいいと思いますか?」

委ねてくれるのなら、わたしも妥協しない。

いつも濃い色ばかり選んでしまうから明るい色に挑戦したいと思っていることは知ってる。

でも、そのひとには紺色のほうが似合っていた。

これはわたしが思う「いい」だ。

彼女の思う「いい」も、同じだろうか?

少し自信がなくなる、もしまた着なくなってしまったら、、、弱気になる。

「時間がないんです、お姉さんならどっちを選びますか?」

ワンピースにハサミを入れ、長く着る覚悟でシャツを手に取り、最後の選択を真っ直ぐに委ねられて、わたしも覚悟を決めた。


「紺がいいです、紺色のほうがお似合いです。それに、わたしも買うなら紺を選びます。」


お会計を済ませると、彼女は小走りでお店を出ていった。

あ!傘を忘れてる!

慌てて追いかけた傘を握るわたしの手にはぎゅっと力が入っていた。

「風邪引かないようにしてくださいね。」と、何かを込めて傘を渡した。

何か、(シャツ、たくさん着てくださいね。)というわたしの願い。


帰り道、ワンピースにハサミを入れたという言葉がどうしても頭から離れなくて、ひとりメソメソしながら歩いていた。

わたしのワンピースじゃないのにどうしてこんなに切ない気持ちになっているのだ。

彼女がそんなに軽い気持ちで服を買うひとじゃないと知っているから。


分かってます、「いい」と思うことは人それぞれ。

そのことを分かりつつも勝手にシュンとなっている梅雨の終盤の23時です。



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