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1月19日、異才、コパチンスカヤが曝け出す、帝国の落日と中欧の諸相、やっぱ、ただならない!

ヴァイオリンの異才、パトリチア・コパチンスカヤが、鬼才、ファジル・サイのピアノで、ヤナーチェク、ブラームス(3番)、バルトーク(1番)のヴァイオリン・ソナタを弾く。
ALPHA CLASSICS/ALPHA885

チェコの奥、モラヴィア地方に生きたヤナーチェク(1854-1928)のソナタ(1914)に始まり、ハプスブルク帝国の帝都、ウィーンを拠点としたブラームス(1833-97)の3番のソナタ(1886-88)、そして、ハンガリーを深く探求したバルトーク(1881-1945)の1番のソナタ(1921)... 中欧に君臨したハプスブルク帝国の古き良き頃(ブラームス)と、帝国が瓦解する端緒、第一次大戦(1714-18)、勃発の年(ヤナーチェク)、大戦終結による解放後、間もなく(バルトーク)のヴァイオリン・ソナタ、3作品が取り上げられる。

いや、異なる音楽性の3人が、ひとつのアルバムに収められてのスパーク感が、凄い(ブラームスですら刺激的に感じてしまう!)。多民族、多文化が、ごった煮のようになって育まれた、中欧ならではの味わい深さに、"民族自決"という劇薬が注入されての、国民楽派なんてレベルに留まらないトンガリ具合(特に、バルトーク!)... ごった煮の帝国が生み出した旨味をベースにしながら、それに挑戦するように切っ先鋭く個性を主張するという... いや、複雑な感情が渦巻いて、聴く者の心をザワつかせる!

そんな中欧を展開してみせた、コパチンスカヤ、やっぱ、ただならない!彼女ならではの繊細にして鮮烈なヴァイオリンが、鋭く、それぞれの作品の背景へと分け入って、真実を曝け出すかのようで... また、それを煽るようなサイのピアノ!2人の丁々発止のやり取りは、作品同士をますますスパークさせ、何だか、恐いくらい... いや、これこそが、中欧の真実なのだろう。聴く者に迫ってくる。

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