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さぶすクラシック日誌。2023年版!

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毎日、1タイトル、スポティファイでクラシックの新譜を聴いてみた。
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#室内楽

4月4日、バッハ、構築の極みと、ウェーベルン、抽象の極みが織り成す、絶対音楽の庭...

ピリオドに軸足を置きながら、大胆に時代を飛び越えてゆくヴァイオリニスト、ロドルフォ・リヒターと、彼が率いるリヒター・アンサンブルの演奏で、バッハの『フーガの技法』と、ウェーベルンによる弦楽四重奏のための3作品... 絶対音楽の両極を並べる大胆な組み合わせ! passacaille/PAS1129 対位法の大家、バッハ(1685-1750)の集大成、『フーガの技法』に、12音技法を極めたウェーベルン(1883-1945)の弦楽四重奏のための作品、5つの断章(1909)、6つの

3月30日、音楽史に置かれた呪物、『音楽の捧げもの』、今、その呪いを解き、祝福する...

バロック・ヴァイオリンのヴィルトゥオーゾ、ヨハネス・プラムゾーラー率いる、パリを拠点とするピリオド・アンサンブル、アンサンブル・ディドロの演奏で、バッハ、晩年の傑作、『音楽の捧げもの』。 Audax RECORDS/ADX13781 1747年、次男、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ(1714-88)が仕えていたプロイセン王、フリードリヒ大王(在位 : 1740-86)の"ギャラント"な宮廷を訪れる"対位法"の大家、大バッハ(1685-1750)が、当代切っての音楽通

3月14日、苦難の歴史と、ひたむきな音楽人生が導き出す、"シルヴェストロフならでは"の、やさしい音楽...

イギリスのヴァイオリニスト、ダニエル・ローランドと、ウクライナのピアニスト、ボリス・フェドロフによる、ウクライナを代表する作曲家、シルヴェストロフの室内楽作品集、"The Messenger"。 CHALLENGE CLASSICS/CC72939 ロシアによるウクライナ侵攻を目の当たりにし、今、改めて注目されているように感じる、ウクライナ、キーウに生まれ、育ち、学び、長年、活動の拠点としてきたシルヴェストロフ(b.1937)の音楽... そのエッセンスを詰め込んだアルバム

3月11日、"ENCOUNTERS IN ROME"、コレッリからヘンデルへと受け継がれるもの...

ベニャミーノ・パガニーニ(クラヴィオルガヌム)とネーレ・ヴェルトメン(オーボエ)が率いる、ベルギーのピリオド・アンサンブル、ムジカ・グローリアの演奏で、ヘンデルとコレッリのコンチェルトとソナタ... 若きヘンデルのローマ滞在にスポットを当てる、"ENCOUNTERS IN ROME"。 ET'CETERA/KTC1787 ハンブルク、ゲンゼマルクト劇場(バロック期、ドイツ・オペラの中心だった公開のオペラハウス!)での成功を引っ提げて、1706年から1710年の4年間、音楽先

3月2日、レクイエムとしてのゴルトベルク変奏曲、弦楽三重奏版... 3世紀の時を経ての癒し...

ピリオドの弦楽四重奏団、サラゴン四重奏団が、コロナ禍を経て、新たにサラゴン・トリオとして歩み出す... バッハのゴルトベルク変奏曲、シトコヴェツキーによる名アレンジ、弦楽三重奏版で... ET'CETERA/KTC1780 ソヴィエト出身で、西側へと亡命(1977)を果たしたヴァイオリニスト、ドミトリー・シトコヴェツキー(b.1954)が、ゴルトベルク変奏曲で伝説となったピアニスト、グールド(1932-82)の死を悼み、オマージュとして生み出した、ゴルトベルク変奏曲、弦楽三

2月28日、朗らかにして、神秘的... うつろう時代を生きたカール・フィリップ・エマヌエル・バッハの、"Light and Darkness"。

イタリアのピリオド系フルート奏者、マヌエル・グラナティエロと、イタリアのピリオド・アンサンブル、アカデミア・オットボーニの演奏で、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハのフルートのためのソナタ、いろいろで編まれる、"Light and Darkness"。 ARCANA/A537 カール・フィリップ・エマヌエル(1714-88)が、父、大バッハ(1685-1750)の下で学んでいた頃の作品(父の作品と間違われていたことも... )、フルートとオブリガート鍵盤のためのソナタ、

2月9日、ウィーン、ベルリン、そしてアメリカ... 20世紀の苦難が育むラートハウスの音楽の芳醇さ!

ポーランド系のユダヤ人、ラートハウスの音楽を掘り起こす、ポーランドのアンサンブル、カロル・ラートハウス・アンサンブルによる、ラートハウスの室内楽作品と歌曲の数々。 DUX/DUX1854 カロル・ラートハウス(1895-1954)。 元はポーランド領、当時はオーストリア=ハンガリー帝国、現在はウクライナのテルノーピリにて、ユダヤ系の家に生まれた、ラートハウス。幼くして音楽の才能を開花、やがて、帝都、ウィーンに出て、ウィーン音楽演劇大学に入り、シュレーカーに師事。第1次大戦(

2月8日、僕には確かにわかる、君に再び会えることを... 21世紀、今、掘り起こされる、ホロコーストの犠牲になった音楽の数々...

アンサンブル・ノヴァ・ソナンティアによる、ホロコーストの犠牲となったクラーサ、ウルマンをはじめとする、第2次大戦、苦難の中に在った作曲家たちの作品を掘り起こす、"ENTARTETE SEELEN"。 ET'CETERA/KTC1777 テレジエンシュタット収容所(ナチスのプロパガンダのために芸術家たちが集められ芸術活動が行われた... )に収容された後、アウシュヴィッツに送られ、命を落とした、クラーサ(1899-1944)、ウルマン(1889-1944)、アドルフ・シュトラ

2月7日、文明の十字路、地中海を体現する作曲家?ヘムシ... 魅惑的...

激動の20世紀、その困難な中で生れた作品に光を当てる、カナダのアンサンブル、ARCアンサンブルの意欲的なシリーズ、"MUSIC IN EXILE"、第6弾、トルコ生まれのセファルディ、ヘムシの室内楽作品集。 CHANDOS/CHAN20243 アルベルト・ヘムシ(1896-1975)。 イタリアからトルコへと渡って来たセファルディム(スペインから離散したユダヤ系の人々... )の一家に生まれたヘムシ... 幼い頃からシナゴーグで歌われる聖歌に興味を示し、音楽を学び始めると才

1月21日、19世紀後半の古典主義?チェコ出身、ウィーンで活躍したベネシュの弦楽四重奏曲の不思議な優美さ!

チェコの老舗クァルテット、マルティヌー四重奏団の演奏で、19世紀、ウィーンで活動した、チェコ出身のヴァイオリニストにして作曲家、ベネシュの弦楽四重奏曲全集。 SUPRAPHON/SU4320 ヨゼフ・ベネシュ(1795-1873)。 チェコ中部の小さな村、バテロフの学校の教師を父に生まれたベネシュ... 父から音楽を学び始め、幼くしてヴァイオリンの才能を開花させると、ウィーンに出て研鑽を積み、1822年、ライバッハ(現在のスロヴェニアの首都、リュブリャナ、当時はハプスブルク

1月19日、異才、コパチンスカヤが曝け出す、帝国の落日と中欧の諸相、やっぱ、ただならない!

ヴァイオリンの異才、パトリチア・コパチンスカヤが、鬼才、ファジル・サイのピアノで、ヤナーチェク、ブラームス(3番)、バルトーク(1番)のヴァイオリン・ソナタを弾く。 ALPHA CLASSICS/ALPHA885 チェコの奥、モラヴィア地方に生きたヤナーチェク(1854-1928)のソナタ(1914)に始まり、ハプスブルク帝国の帝都、ウィーンを拠点としたブラームス(1833-97)の3番のソナタ(1886-88)、そして、ハンガリーを深く探求したバルトーク(1881-194

1月17日、ブラームスの音楽の確かな魅力!思い掛けなく発せられる若さ!ピアノ五重奏曲と2番の弦楽五重奏曲。

チェコの凄腕、パヴェル・ハース四重奏団が、ボリス・ギルトブルク(ピアノ)、パヴェル・ニクル(ヴィオラ)を迎え、ブラームスのピアノ五重奏曲と2番の弦楽五重奏曲を取り上げる。 SUPRAPHON/SU4306 ブラームス(1833-97)の活動が、ウィーンを軸に動き出し(1863年にウィーン・ジングアカデミーの指揮者に就任... )、その後半生が始まる頃、34歳、1864年に完成したピアノ五重奏曲と、晩年となり、作曲への衰えを感じた頃、筆を折ろうとすら考えた57歳、1890年、

1月9日、民俗的であることがカッコいい!ノルウェーの音楽の源泉を見つめる、"OPPHAV"。

ノルウェー、アークティック・フィルハーモニーのヴァイオリニスト、サンデル・ティングスタの演奏で、グリーグの2番のヴァイオリン・ソナタなど、ノルウェーの民俗音楽にインスパイアされた現代までの多彩な作品、4作品を取り上げる、"OPPHAV"。 SIMAX/PSC1385 ノルウェーを代表する、グリーグ(1843-1907)の2番のヴァイオリン・ソナタ(1867)に始まり、グリーグの国民楽派の系譜を受け継ぐ、ブルースタ(1895-1978)のヴァイオリン・ソロのための民謡組曲(1

1月4日、モーツァルト、最後の3つの弦楽四重奏曲の、ヘヴンリー... 初春感あります!めでたい!

モダンとピリオドを器用に行き来するヴァイオリニスト、アリーナ・イブラギモヴァのピリオド弦楽四重奏団、キアロスクーロ四重奏団による、モーツァルトの弦楽四重奏曲、21番、22番、23番、プロシャ王セット。 BIS/BISSA2558 かのフリードリヒ大王の甥、プロイセン王、フリードリヒ・ヴィルヘルム2世(在位 : 1786-97)の委嘱で作曲されたとされる、プロシャ王セット。モーツァルトがベルリンの宮廷を訪ねた年、1789年、ウィーンで作曲された21番に、モーツァルトが世を去る