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二人のためのレシピ|7.真鯛のセビーチェ

強烈な紫外線と暑さは肌に体に堪えるけれど、同時にキリッと酸味のきいたお料理がとてつもなくおいしく感じられるようになってきます。

レモンの爽やかな酸味をきかせた魚介のマリネ「セビーチェ」は、オイルを使わないためすっきりと軽く、蒸し暑い日にも食欲が湧く味わい。私は酸味が大好物なのでレモンをかなりきかせて作りますが、人によっては全体の酸味は少し控えて別にカットレモンを添え、食べるときに好みで調節するのがよいでしょう。

美食の国として注目の集まる南米ペルーで国民食と言われるほど大人気のお料理。生魚を使う海外の料理に出会うと親近感が湧いてきます。

レモンの酸で締めた新鮮な魚にコリアンダー(香菜、パクチー)の香りは、異国情緒がありながら思いの外私たちの味覚にも馴染みやすく、夏の暑さに立ち向かうのにぴったりの、元気を呼び起こしてくれる味わいです。

今、心にいるその人とご一緒に、ぜひどうぞ。

真鯛のセビーチェ【材料】2人分

・刺身用さく…200g ※今回は真鯛を使用

・セロリ…1/2本
・玉ねぎ…1/2個
・コリアンダー(香菜)…1株
・レモン(お好みで)

〈マリネ液〉
・レモン汁…大さじ2
・塩 小さじ1
・おろしにんにく 小さじ1/2〜1
・鷹の爪(小口切り)…ふたつまみ

魚の種類は、鯛、スズキ、ヒラメなどの白身魚全般、ホタテなど貝類、ビンチョウやキハダといったさっぱり目のマグロ、タコも合います。手頃な生魚が見つからない場合は、冷凍エビのボイルでもおいしく作れます。油を全く使わない味付けも特徴の一つ。キリッとしたレモンの酸味と香味野菜の香りが爽やかな、最高に夏向きのお料理です。


セビーチェの作り方

⒈火を使わずに作れるセビーチェは、材料を「切って、冷やす」ことが調理のメインです。
セロリは表面の太い筋をすっと引いて除き、太い部分は幅を半分にしてから繊維を断つように薄切りにします。

玉ねぎは長さを半分にして繊維に沿って薄切りにし、セロリと一緒に水に10分ほどさらします。

玉ねぎの辛味が抜けてパリッとしてきたら、ザルで水切りして、さらにキッチンペーパーで水気をしっかり取っておくと水っぽさのない丁寧な味わいになります。

生魚と野菜はどちらも水分が多い素材。「余分な水気」ができるだけ入らないようほんの少し気遣うだけでも、料理はぐんとおいしくなります。

セロリの葉っぱはこのお料理には使いませんが、そのまま置いておくとすぐに黄色くなってしまうので、新鮮なうちに刻んで炒めてから冷凍しておき、チリビーンズやミートソースなどの煮込み料理に使っています。

⒉ボウルに〈マリネ液〉のレモン汁、塩、おろしにんにく、鷹の爪を入れて、混ぜ合わせます。レモン汁は生のレモンを自分で絞っても、量をたくさん使うので市販のものでも構いません。

一般的な西洋風のマリネと違う点が、オイルを使わないこと。それによってキリッとレモンの酸味が立ったいかにも夏向きの味つけになり、物足りないどころか食欲がどんどん湧いてきて困るほどおいしくなります。

⒊真鯛は、お刺身よりもやや厚みを持たせて一口大にスライスします。鯛は特に身の弾力が強いので、食べやすさを考えながら、幅を半分にしてから1~2cm程の厚みに切ります。

魚は、淡白な白身魚はもちろん、キハダ、ビンチョウなどのマグロ系、ボイルのタコやエビ、青魚でアジもおいしいと思います。いくつか種類を混ぜても楽しいですよ。

マリネ液のボウルに切った魚を加えて軽く和え、10分ほど冷蔵庫で冷やします。夏に特においしく感じる冷たいお料理は「冷やす」ことも大事な料理の工程です。

⒋10分ほど経つと、和え立てとは状態が変わってレモンの酸の働きで身の表面が白っぽくなっていると思います。これは日本で言うなら締め鯖のような状態。時間を置くことで、切っただけ和えただけとはまた一味違う独特の風味が加わります。

そこへ水気を取ったセロリと玉ねぎを加えて手早く和えます。
具材を全部一緒に調味料で漬け込むのではなく、まず魚にしっかりと味を馴染ませて、そこへ後から香味野菜を合わせることで、野菜から出る水気で味がぼやけることがなくキリッとした味わいのまま仕上がります。

仕上げに、コリアンダーを2cmにザクザク刻んでボウルに加え、行き渡る程度にサッと和えて完成です。
香りの強いハーブも、仕上げに上からパラリではなく、香味野菜の一つとしてたっぷり入れてみてください。全体の色味もエキゾチックな雰囲気も、一気に盛り上がりますよ。

それにしても、このセビーチェに欠かせないコリアンダー(香菜、パクチー)が、これほど日本で定着したのは、どういう訳でしょう。

セビーチェの愉しみ方

ぜひ、冷たいうちにどうぞ。
レモンの酸味できゅっと引き締まった鯛と香りの強い野菜を合わせた一皿は、お刺身と妻の取り合わせにも通じるところがあって思いのほか馴染みやすく、それでいて和食とはやはり一味も二味も違う新鮮な味わいがします。

酸っぱいものがお好きな方は、さらにレモンを絞ってどうぞ。私は口がすぼまるくらい酸っぱくするのが好みです。

マリネのように他のお料理と並べて楽しんだり、セビーチェの本場ペルーでは、じゃがいもやとうもろこしを加えて主食のように食べることもあるそうです。夏の日本なら、染み出たマリネ液に冷たい素麺を浸して食べるのもすっきり意外なおいしさです。

キンキンに冷えたビールや白ワイン、シュワっと炭酸の刺激が心地良いサワーなどと合わせて、窓の外の夏の日差しとともに楽しんでください。

それでは今日はこのへんで。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


お読み頂きありがとうございます。 これからもおいしいお料理とおいしいお酒をたくさんお届けします。