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魔法少女の系譜、その9~『魔法のマコちゃん』~


 前回(その8)は、『魔法のマコちゃん』を取り上げましたね。人魚が魔法少女になる作品です。
 今回も、『魔法のマコちゃん』を取り上げます。例によって、「六つの視点」で、『魔法のマコちゃん』を分析します。


[1]魔法少女の魔力は、何に由来しているか?

 マコちゃんの魔力は、「人魚の涙」という名のペンダントに由来します。『ひみつのアッコちゃん』などと同じ、道具に依存した魔力です。

 ただし、そのペンダントは、元・人魚の人間しか使えないようです。事実上、マコちゃんしか使えません。
 このために、「ペンダントを悪用される」おそれは、ありません。それは、話のバリエーションを作るには、不利な条件ですね。
 でも、ペンダントをなくしたり、盗まれたりといったことは、あり得ます。そういう話を作ることができるので、話のバリエーションが狭すぎるほどではありません。

 道具依存型の魔法少女と、生まれつき型の魔法少女との、折衷型ですね。先行作品を踏まえて、「いいところ取り」しています。

[2]大人になった魔法少女は、どうなるのか?

 ここは、注目すべき点です。マコちゃんは、魔法の力を持ったまま、大人になることが暗示されています。人間界で、魔法を使える大人が存在する可能性を、初めて?示しました。

 正確には、魔法を使える大人は、『コメットさん』で登場しています。
 コメットさんは、「魔法が使える宇宙人」ですね。そもそも、普通の人とは、まったく違うものとして描かれています。そして、それを、周囲に隠していません。周囲の人々は、「宇宙人だから」で、すべてを受け入れています。

 マコちゃんの場合は、元・人魚です。普通の人間の姿をしていても、元・人魚という異類であった事実は、変えられません。普通の人ではない点が、コメットさんと共通しますね。魔力を持ったまま大人になれる理由は、ここにあるのでしょう。

 マコちゃんは、コメットさんと違って、元・人魚であることを、周囲に隠し続けます。それは、知られてはいけない秘密です。おそらく、その状態は、大人になっても続きます。

 実際には、物語の中では、大人になったマコちゃんは、描かれません。ですから、本当に魔力を持ったまま大人になるのかは、わかりません。
 とはいえ、その可能性を示した点が、大きな一歩だと思います。

[3]魔法少女は、いつから、なぜ、どのように、「変身」を始めたのか?

 マコちゃんの「魔法少女としての姿」は、あえて言うなら、元の人魚の姿ですね。
 けれども、彼女は、魔法を使う時、わざわざ人魚の姿に変身したりしません。普通の人間の姿のままです。

 彼女が変身したのは、人魚から人間になったその時、ただ一度きりです。

 この点で、後年の「人魚で魔法少女」作品と、差が際立ちますね。
 具体的には、『ぴちぴちピッチ』との差です。
 『ぴちぴちピッチ』では、主人公の「るちあ」は、人間の姿⇔人魚の姿と、何回も変身します。るちあの仲間の人魚=魔法少女たちも加わって、同じように変身します。おかげで、画面がとても賑やかです。

 『魔法のマコちゃん』から『ぴちぴちピッチ』までの時間差は、約三十二年です。この年月の差が、同じモチーフの作品でも、変身の有無を生みました。
 しかも、『ぴちぴちピッチ』では、複数回の変身、複数人数での変身です。この三十二年間に、より華やかに、魔法少女アニメが進化したことが、わかりますね。

 『魔法のマコちゃん』は、変身が一般的になる前の魔法少女作品でした。

[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?

 マコちゃんは、「人魚の涙」という魔法のペンダントを持っています。魔法を使うには、このペンダントがなければなりません。

[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?

 『魔法のマコちゃん』には、マスコットに当たるものは、登場しません。

[6]魔法少女は、呪文を唱えるか? 唱えるなら、どんな時に唱えるか?

 マコちゃんは、呪文を使いません。
 じつは、魔法少女ものとしては、この点も画期的です。先行作品は、すべて、何らかの形で、呪文が登場しましたから。


 まとめてみますと、先に書いたとおり、『魔法のマコちゃん』は、先行する魔法少女作品の要素を、うまく取捨選択していますね。
 マスコットや呪文のように、すっぱり切り捨てた部分もあれば、魔法の道具(ペンダント)のように、「いただきます」した部分もあります。

 今回は、ここまでとします。
 次回は、『魔法のマコちゃん』と、伝統的な口承文芸作品とを、比較する予定です。



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