見出し画像

日本の海の幽霊・妖怪 (中公文庫BIBLIO)


日本の海の幽霊・妖怪 (中公文庫BIBLIO)

 この本を読むと、日本人が、「海の幽霊と妖怪に、密接な関係がある」と考えていたことがわかります。
 というより、「日本の海では、幽霊と妖怪を区別できない」というほうが、正しいでしょう。

 例えば、日本には、船幽霊【ふなゆうれい】という伝承があります。この本に載っています。
 名前に「幽霊」が付くとおり、これは、海で死んだ人が、幽霊となって現われるものです。

 ところが、船幽霊は、妖怪の一種とされることもあります。日本の妖怪に関する本には、たいてい、海の妖怪の一種として、船幽霊が載っています。

 なぜかといえば、船幽霊は、必ず、海で怪異をもたらすからです。人を恐れさせ、実害をも与えるもの、とされています。
 実害とは、船幽霊に遭った人を、海で死なせる―あるいは、それに近い目に遭わせる―ことです。

 日本の海の幽霊は、この手のものが、とても多いです。
 この本には、その種類が、たくさん載っています。文字どおり、日本の海の幽霊や妖怪を知りたい人には、欠かせない本です。

 また、この本には、「海の幽霊になる前」のことも、詳しく載っています。
 つまり、海で遭難した時の様子です。昔の人にとって、海がいかに恐ろしいところであったか、よくわかります。航海技術の未熟さが、切ないです。

 この本では、江戸時代以前の遭難の様子が、真に迫って書かれています。歴史の資料としても、貴重ですね。

 以下に、本書の目次を書いておきます。


お礼にかえて

第一章 船幽霊とは
 1、船人の見た幽霊
 2、船幽霊の見分け方
 3、船幽霊の呼び名
 4、船幽霊の性格
 5、船幽霊の船
 6、船幽霊出現の季節

第二章 海の幽霊の成り立ち
 1、海での死さまざま
 2、督乗丸船員飢餓の漂流死
 3、伊勢丸の船員奴隷となり死に及ぶ
 4、海賊の名で殺された越前の船乗り
 5、漂流船を引き寄せる怨念の海域

第三章 漂流中の船人の信仰
 1、操船を決めるおみくじ
 2、たらしで船の流れをくい止める
 3、竜神に刀髪を供える
 4、悪霊をさけ帆柱を切断する
 5、船を助けに来る神
 6、船から逃げる神

第四章 海上に現れる幽霊たち
 1、霊風【たまかぜ】は海の亡者の怨霊
 2、山や岬に憑く船人の亡霊
 3、船を止めるシキ幽霊
 4、柄杓貸せと叫ぶ海の亡者
 5、海坊主さまざま
 6、名指しで現れる幽霊

第五章 海辺の妖怪たち
 1、磯女の不思議
 2、牛鬼、濡れ女の怪

第六章 海中の妖怪―共潜【ともかず】き
 1、海女【あま】の幻覚か妖怪を見る
 2、共潜【ともかず】きの性格
 3、聖地に現れる共潜き
 4、海女の恐れと慎み
 5、幽霊へと変化する共潜き

第七章 死霊鎮慰の呪法
 1、海上での呪術
 2、海中での呪術

第八章 海の幽霊、伝承文学への昇華
 1、海の幽霊と文学とのかかわり
 2、平家一門生霊から死霊へ
 3、西海に浮遊する平家の公達

先輩関山守彌さん

解説
索引



この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?