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魔法少女の系譜、その31~『ミラクル少女リミットちゃん』~


 今回も、前回に続き、『ミラクル少女リミットちゃん』を取り上げます。
 今回は、七つの視点で、『リミットちゃん』を分析してみます。

[1]魔法少女の魔力は、何に由来しているか?
[2]大人になった魔法少女は、どうなるのか?
[3]魔法少女は、いつから、なぜ、どのように、「変身」を始めたのか?
[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?
[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?
[6]魔法少女は、呪文を唱えるか? 唱えるなら、どんな時に唱えるか?
[7]魔法少女の魔法は、秘密にされているか否か? それに伴い、視点が内在的か、外在的か?

の、七つの視点ですね。

[1]魔法少女の魔力は、何に由来しているか?

 リミットちゃんは、サイボーグです。人間の科学技術の力によって、「ミラクルパワー」を得ています。
 『キューティーハニー』と同じく、人造型の魔法少女ですね。

 ちなみに、リミットちゃんのサイボーグとしての動力源は、超小型核融合炉です。何を原料に核融合しているのかは、語られません。リミットちゃんは、普通の人間と同じように食事をしているので、食物から、原料を得ているのかも知れません。


[2]大人になった魔法少女は、どうなるのか?

 これについては、放映当時の時点では、はっきりしません。サイボーグ化されたリミットちゃんが、普通の人間のように成長するのかどうかさえ、わからないのです。

 作品中には、恋をしたリミットちゃんが、「サイボーグだから、彼と一緒に成長はできないんだ」と、思い詰める場面が登場します。普通の女の子としてのおませな部分と、サイボーグという重い事実との、葛藤場面ですね。
 ただし、この時は、本当にリミットちゃんが成長しないかどうかは、わかりません。彼女自身が、そう思い詰めているだけです。

 リミットちゃんをサイボーグ化した張本人、リミットちゃんのお父さん―西山博士―は、研究を続けて、いつかは、彼女を、人間に戻すという目標を掲げています。それは、リミットちゃん自身の、「人間に戻りたい」という願いを叶えるためです。

 作品中で明確にはされていませんが、リミットちゃんは、将来的には、普通の人間に戻って、平凡な女性として一生を送ることが、暗示されていると思います。


[3]魔法少女は、いつから、なぜ、どのように、「変身」を始めたのか?

 リミットちゃんは、ハニーとは違って、「魔法少女としての姿」に変身することは、ありません。

 けれども、「変身」はします。変身というより、変装といったほうが、ふさわしいものです。看護婦や婦人警官といった、「制服職業」の人に、よく「変身」しています。
 このあたりは、子供の「あんな大人になりたい」という素朴な願望を、そのまま実現していますね。『ひみつのアッコちゃん』以来の伝統を、受け継いでいます。


[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?

 リミットちゃんは、魔法の「七つ道具」を持っています。七つ道具という名前でも、八つ以上あることが、確認されています。
 主な道具は、マジックペンダント、フライングバッグ、マジックベレーなどです。どれも、人間の科学技術力によって、作られた物です。

 リミットちゃんは、人造型、かつ、魔法道具型の魔法少女と言えますね。


[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?

 リミットちゃんには、マスコットに相当するものがいます。ロボット犬のグーです。

 ロボット犬と呼ばれているものの、実際には、リミットちゃんと同じサイボーグです。もともと、リミットちゃんのペットの犬でした。
 リミットちゃんと同じ飛行機に乗っていて、飛行機事故に遭い、やはり瀕死の重傷を負いました。西山博士によって、サイボーグ化されました。

 グーの動力源は、核融合炉ではありません。太陽電池です。このため、光が当たらない時は、休眠状態に入ってしまいます。

 グーには、空を飛んだり、変身したりする超常能力があります。その能力を使って、リミットちゃんを助けます。

 ロボット犬と言えば、『リミットちゃん』とまったく同時期に放映されていたアニメ『新造人間キャシャーン』にも登場します。フレンダーですね。

 同時期に、同じアイテムが、「男児向け」の『キャシャーン』と、「女児向け」の『リミットちゃん』と、二つの作品で登場したことは、示唆的です。ロボットとか、サイボーグといったSF的要素が、アニメに本格的に取り入れられてゆく時代だったのでしょう。


[6]魔法少女は、呪文を唱えるか? 唱えるなら、どんな時に唱えるか?

 リミットちゃんは、呪文は唱えません。
 ハニーと同じように、「技名を叫ぶ」形ですね。走る前に、「ミラクルラン!」と叫び、跳躍する前に、「ミラクルジャンプ!」と叫びます。怪力を使う時は、「ミラクルパワー!」です。

 この点は、『キューティーハニー』と同じように、男児向けの特撮作品から取り入れたのでしょう。以前に書いたとおり、『リミットちゃん』の放映当時は、特撮変身ヒーローものの黄金時代ですからね。
 『仮面ライダーV3』、『イナズマン』、『キカイダー01』、『ウルトラマンタロウ』、『風雲ライオン丸』など、綺羅星のごとき作品群がありました。


[7]魔法少女の魔法は、秘密にされているか否か? それに伴い、視点が内在的か、外在的か?

 リミットちゃんがサイボーグなのは、秘密です。秘密を知っているのは、西山博士と、彼の研究所で研究の手伝いをしている「みどりさん」だけです。

 このために、作品全体は、リミットちゃんの内在的な視点で描かれています。

 作品中には、リミットちゃんの秘密がばれそうになって、一生懸命、それを隠そうとする場面が、何回も登場します。結局、最終回まで、ばれないのですけれどね。


 上記のマスコットの項で触れたとおり、『リミットちゃん』には、SF的要素が強いです。それは、時代の要請でした。
 『リミットちゃん』放映の一年前、昭和四十七年(一九七二年)には、『マジンガーZ』が放映されています。「巨大ロボットもの」というジャンルを創り出した、偉大な作品ですね。
 同じ昭和四十七年には、『科学忍者隊ガッチャマン』も、放映されています。こちらは、巨大ロボットものではありませんが、科学の力で悪の組織と戦う点が、『マジンガーZ』と共通します。

 そして、『リミットちゃん』放映の昭和四十八年(一九七三年)には、『新造人間キャシャーン』、『ゼロテスター』、『ミクロイドS』、『キューティーハニー』といった、科学の力で戦うアニメが、登場しています。
 この流れの中に、『リミットちゃん』もあるわけです。

 このために、『リミットちゃん』を、魔法少女アニメでなく、SFアニメとして評価する動きもあります。
 私は、それについては、まったく否定しません。『リミットちゃん』は、魔法少女アニメであると同時に、SFアニメでもあると考えます。

 『リミットちゃん』と、同時期のSFアニメとを比べると、『リミットちゃん』は、ヒロインが戦わない点が、ユニークです。
 これは、当時の「魔法少女アニメ」が、そういうものだったからですね。この点のために、『リミットちゃん』は、SFアニメより、魔法少女アニメと見られることが、多いのでしょう。

 最後に、リミットちゃんの服装について、触れておきましょう。
 リミットちゃんは、いつも、ショートパンツをはいています。魔法少女アニメとしては、これは、画期的です。
 それまでの魔法少女ヒロインは、みな、スカート姿でした。野性的な「忍者少女」の『さるとびエッちゃん』ですら、そうだったんですよ。

 ショートパンツ姿のリミットちゃんは、活発なヒロイン像を表わしています。なおかつ、視聴者である女の子たちが、「パンツ姿もおしゃれ」と思うのでなければ、このようなヒロイン像は、作られなかったでしょう。
 たぶん、女性のパンツスタイルが普通になってきたという、時代の流れを反映しています。

 「スカート姿でない、初めての魔法少女」として、リミットちゃんは、評価されるべきですね。

 『リミットちゃん』については、ここまでとします。
 次回は、新しい作品を取り上げる予定です。



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