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『オトシネマ 夏の怪談特集』~其の弐 建設現場の男~ 短編オトシネマ(オーディオドラマ)脚本

「耳で聴いて心で感じる」オトシネマは、音の映画をコンセプトに、様々な音声作品をSpotify等の音声プラットフォームにて配信しております。

こちらのオトシネマ作品集【脚本アーカイブ】では、配信されている作品を文章の形でご紹介させて頂きます。

耳の不自由な方、聴くのが難しい環境の方も、是非こちらからオトシネマコンテンツをお楽しみ頂けましたら幸いです。

『オトシネマ 夏の怪談特集』
  ~其の弐 建設現場の男~

あらすじ
夏と言えば、怖い話。怖い話と言えば、怪談!
怪談師が身の毛もよだつ怪談話を披露する「オトシネマ 夏の怪談特集」
今回は怪談師・ウエダコウジの飲み友達が、建設現場で働いていた時に起こった実話をお届けします。
かなり怖い内容ですが、勇気ある方はぜひ…!

(※以下Spotifyリンクよりオーディオドラマのご視聴が可能です。)



ウエダコウジです。


今日はですね。
少しこう、夏を味わっていただくような。

そんな、気温の暑い話が出来ればと思います。


僕のお酒の飲み友達で、
三島さんという男性がいらっしゃるんです。

この方、現在50代のもう後半の方で、
お車がとても好きな方なんですね。


18歳になったらすぐに車の免許を取得して、
でも、クラシックカーなんかを自分で買い込んできてですね、

そして、こう、使えないパーツがあったら自分でお金をかけて直す。
そして、もう街中を走る。

若い時からそんな事をされてる、
まぁ、お車大好きなそんなおじさまだったんですね。


となりますと、
やっぱ車の趣味というのはね、
かなりお金がかかるんですよね。

だから、若い時から色々なアルバイトをしてたそうなんです。


その中でも、一番その報酬の割が良かったのが、
建築関係。

若かりし頃の三島さんはですね、
色んな現場で、まぁ色んな作業されてたみたいなんですよね。



ある時の現場が、

奈良県の山奥。


コンクリートで出来た建物を、
まぁ改修するような、改築するような。

そんなような現場だったそうなんです。


朝からバンに乗って親方に現場に連れて行かれますと、

親方「おい、三島。お前はそしたらこれ、ドリルを渡しておくから。
地下室にある、この壁を、掘削しろ。」と。

そんな風な指示を与えられたんです。


三島さん早速、「わかりました。」ということで
ドリルを持って。

地下室に、

タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ…

と降りて行った。


薄暗い地下室…。

夏ですからねぇ、
熱気がこもってましてムンッと暑いんですよ…。


あぁー・・・、ここで一日仕事するのか。俺大丈夫かな。

そんな風に少し不安に思った。


そして、言われているコンクリートの壁。

あぁこれかこれか。
見つけて。

ドリルを用意して。

ダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッ・・・・

掘削を始めたんですね。


そしたら下に、コンクリートの塊が、

ゴトゴトゴトゴト、ゴトゴトゴトゴト、


山のように堆く積み上がっていく。
それをまた除けて、

ダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッ・・・・

作業を続けたんです。


やっぱり暑いんです、地下室。
窓も無いんですよ。

湿気もありましてねぇ…。

やってますと意識が朦朧となってくる。

ふー・・・っと身体も上下に揺れるんです。


手には重いドリルを持ってますからね、
これ危ないんですよ。


はぁ、あかんあかんあかん!
ちょっと今意識失ってたわ、あぁ…気を付けよ気を付けよ。



水を一杯飲んで、

ダッダッダッダッダッダッ・・・

また開始する。


しばらくしてますと、

ふー・・・っ。


また朦朧としてくる。

こんなことが二回も三回もあったそうなんですよね。


そして、

はぁー…、あかんあかんあかんあかんあかん…。
でもこの地下室何とかならんかな。
このまま一日続けられるかな。


そんな風に思って、

少し下を向いてから視線を上に戻した。



・・・へ?



三島さんの目の前。







人が居たんですよ。



壁しか無いはずが。





頭だけの男の人。

首から下が無いんですね。



真っ白い顔して、

表情は苦しそうに目を閉じてる。



あぁいう時って、人間はビックリするんですけど、


とっさにその場を逃げ出したりですとか、
大きな声を上げたり出来ないんですね。

へ?

最初にそう思っただけなんです。


どういう事か分からない。


段々段々、その怖さが
三島さんに伝わってくるんです。


どういう事や。
何で顔だけなんや。
ここは俺しか居ないはずや。

そんな風に色々色々、
ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる頭の中で巡ってますと、


バッ!!!!


その男の人、

目を見開いたんです。


その瞬間に三島さん、

うぐぁ!!!

その場で尻餅をついてしまった。


その男の人と目が合ってしまったんです。


腰にぶら下げている道具が、
下のコンクリート床に当たって、

ガチャン!!と音を立てる。

その音に驚いた親方が飛んできたんです。


親方「おい三島どうしたんや、大丈夫か!なんや調子悪いんか?」

三島「いやいや違うんです。親方、聞いて下さい…。
あの…僕ね今ね、あの、これドリルで、穴開けてましたらね、あの、あの、あの…いやいや、あの、や…」


親方「三島どうしたんや、落ち着けって。」

三島「いや親方、本当なんです本当なんです本当なんです本当なんです…!
あの…、あの、あのっ、僕の…僕のね、目の前に、
男の人が出てきたんですよ。
しかも、しかも、ハァ…。首から下が無かったんです…。
最初その人、目閉じてたんですけど、
カッ!と目を開いたかと思うと、僕の目をジーッと見てきたんですよ!!
親方!!何なんですか、何なんですか何なんですか…。」


親方「三島、落ち着け! …な?
お前よく考えろ。暑いやろ?俺も悪かった。
こんな中でお前作業してるから、何か朦朧として変なもの見たんや。
もうすぐ昼やからな、お前ちょっと早いけど休憩に行け!
水でも飲んでこいよ。」


そうやって気遣ってくれたんです。

そして三島さん、
外で一人、水を飲んで。

休憩してたんです。


弁当持ってきてたんですけどね、
そんなもの、喉通らないんですよ。


あれ何やったんやろ…。
何やってん何やってん…。

俺やっぱり変なもん見たんかな?
何で親方信じてくれへんねん、俺確かに見たのにな。

はぁ…それはそうと午後からまたあそこで作業すんのか。
嫌やな嫌やな嫌やな嫌やな…。


でもね、そうは言っても三島さん、
非常に真面目な性格。

親方に迷惑かけたくないんです。


嫌だなぁ…と思いながらも、

とぼとぼとドリルをまた手にして、
地下室に戻って行ったんです。


またあの人出てきたらどうしようかなぁ…。
今度はどんな事があるんやら…。

さっきは目が合っただけやったけど、
何かあったら嫌やなぁ…。


ダッダッダッダッダッダッダッダッ・・・


そんな風に思いながらも、
一生懸命にドリルで、ね。

壁に穴を開けた。


ダッダッダッダッダッダッダッダッ・・・


三島さん心配してたんですけど、
午後からの作業は、特に何も無かったんですよ。


あぁー、よかったよかった!
なんや俺の思い過ごしかいな。

親方の言うように俺やっぱり意識朦朧としてたんやな。
なんや、もうすぐ夕方や。大丈夫や。


ダッダッダッダッダッダッダッダッ・・・


掘削を続けていく。

下には瓦礫が、ゴトゴトゴトゴトゴト。
山のように堆く積み上がっていく。


ダッダッダッダッダッダッダッダッ・・・



カラン。

コロンコロンコロンコロンコロン・・・



そういう音と同時に、
瓦礫とはまた別の物が、

三島さんの目の前に落ちてきたんです。


三島さん止めときゃええのに、その、
落ちてきた物を、

手ですくい上げた。

それ。





人間の頭の骨やったんですよねぇ。




かなり古い物なんでしょうか、

所々ひび割れている。


ボロボロなんですよ。



すぐに親方を呼んだ。

「親方、これ見てください!」


親方すぐ警察呼びまして、

まぁそれはその日はそのまま現場を後にしたそうです。



三島さん、
僕に言うんです。

「ウエダくんねぇ…。
大分昔の事やけど…あんな人柱みたいな風習、今でもあるんやなぁ…。
あそこにはもう行きたくないな。」

僕に話してくれたんですよね。

ちなみにこの話はね、

奈良県の、

まぁ山奥。ね。

ある村で起こった話なんですよね。



少し話変わるんですけど、

僕ドライブ好きなんですよね。


車でね、こう。

田舎町とか海沿いを走ってますと、こう、
心が穏やかに穏やかになる。

ねぇ。そういうところに行くと、
のどかなこう山村とかね、
あの、まぁ海のね、漁村があったりするじゃないですかねぇ。


あぁ~、どんな暮らししてるんやろうなぁ。

心穏やかになるんですよね。





さっきのね、

骨の話。





そんな村で起こった、

出来事なんですよね。


ありがとうございました。



作品制作キャスト・スタッフ

■語り手/怪談師:ウエダコウジ
■企画・収録・編集:松本大樹

■脚本編集/記事掲載:ニーナ


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