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視覚障害者にとっての駅の音

私たちが日頃利用する駅のコンコースやホームは、様々な音で溢れています。
電車の到着や出発を知らせるアナウンス、自動改札機を通過するときの”ピッ”という音、利用者の足音や話し声。もちろん電車の音もありますから、利用者が多い都心の駅となれば、とても騒がしい空間ですよね。
そんな駅で聞こえる音に対して特に敏感な利用者がいます。それは視覚障害者の方です。

例えば、改札機付近では「ピ~~ン ポ~~ン」という音、ホーム階と改札階を繋ぐ階段付近では「ピヨピヨ」という音が聞こえる駅があります。これらの音は視覚障害者の方に改札や階段の位置を知らせるための音なのです。普段何気なく利用していると気づかないかもしれませんが、その他にもトイレの位置やエスカレーターの上り/下りを知らせる自動アナウンス等があります。
駅という電車が通過するとても危険な場所では、視覚的な情報が得られにくい視覚障害者にとって音はとても重要な情報源です。そして、これらの音がどこから聞こえてくるのかもとても重要なのです。

とある駅の改札口。足元には誘導ブロック、天井にはスピーカ。
ホーム階と改札階をつなぐ階段の上部にもスピーカ。
ここでは、カモメの鳴き声が使われています。

例えば、吸音仕上げがない駅の通路やコンコースでは、音が響いていたり、喧噪や様々な騒音が空間に充満して騒がしい空間になってしまいます。そんな空間では、離れた目的地にあるスピーカから出る音を聞き分けて、その音に近づいていくことがどんなに難しいことか、、、。試しに視覚障害のない方も目を閉じてみれば、目的の音に近づくどころか、その音を探し出すことすら難しいかもしれません。
そのような場所を利用する視覚障害者の方は、足元の誘導ブロックを頼りにしていますが、誘導ブロックが無い場合には、目的地までの方向と歩数を覚えておいて記憶と方向感覚を頼りに歩き、音がしっかり聞こえるようになってから音の方向に進むという人もいます。
例えばここで、広い天井面や利用者に近い壁面を吸音仕上げに出来れば、響きや騒がしさを抑えることが出来ます。その結果、音の内容や方向も分かりやすくなり、視覚障害者の方にとっては周囲の状況を把握しやすくなって安全や安心感につながります。また、視覚障害のない方にとっても、アナウンスが聞き取りやすくなったり、騒々しいと感じていた駅の居心地が改善されることになります。

吸音仕上げというと、ホールや音楽室、会議室に使うものというイメージがあるかもしれませんが、公共空間に吸音仕上げを計画することが、様々な利用者にとっての居心地の良さや安全にも繋がるという認識が広まっていけば良いと思います。

                            (服部 暢彦)

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