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柚木沙弥郎のことば

新年に染色工芸家の柚木沙弥郎(ゆのき さみろう)さん(御年101歳!)の欲しかった本「柚木沙弥郎のことば(柚木沙弥郎・熱田千鶴=著)」(グラフィック社)を買いました。帯からして堪らない言葉が載っておりまして、

「いつからはじめたっていいんだよ。
僕だって物心ついたのは
80歳になってなんだから
        ―― 柚木沙弥郎」

「柚木沙弥郎のことば(柚木沙弥郎・熱田千鶴=著)」グラフィック社

何かを作る人間として、勇気づけられます。
編集者の熱田千鶴さんのまさに熱意と意志(柚木沙弥郎さんの言葉を後世に残したいという想い)が伝わる本です。

本の紙と水色が素晴らしい装丁デザインでして絵は柚木さんですがディレクションは誰だろう、とか思いますね。
彼の師匠はわたしですら存じ上げている芹沢銈介(せりざわ けいすけ)という方で、ご存知、柳宗悦が提唱された民藝(民芸)に共鳴された方でした。

「柚木沙弥郎のことば(柚木沙弥郎・熱田千鶴=著)」グラフィック社

日本の美術は工芸が主であり、屏風、焼き物から漆器の椀もすべて実用品ですが、西洋文化が入ってくるようになってから、それらは「美術」と呼ばれるようになった、という歴史があります。つまり日本は実用品のなかに美術・芸術が入り込んでいる文化を育んでいたということだと思います。そういった生活の実用品のなかに美しさがあるという芸術を民藝(民芸)と総称的に呼ぶことにしたようです。西洋のような額縁に絵を飾り、有難がるというような文化はそれまではなかったのかもしれませんね。それが悪いとかよいではなく、日本人に馴染まない部分があるように感じる方がいるのならばそれは生活のなかで芸術を愛でていたからなのかもしれません。

で、最近、うどん屋にいたら若いサラリーマンの男性たち(3名)がうどんを啜りながら「食器なんか三百均にもいいの売っているよね」なんて言葉を聞きましたが、別にいいけどそのような話には溜息ぐらいは出させてくれよと思います。わたしだってそういった類を使うことはありますし、この傾向が仕方ないとしてもそんなものが文化になる日がきたら、もうおしまいだなと老婆心ながら思うのです。勿論、彼らが悪い訳じゃなくケチ臭くなった時代を嘆いているのです(うむむ)。

『やまと民藝店』

新年は柚木さんの本を見た母も彼を知っていたようで、京都の『やまと民藝店』(BALのすぐ横)に一緒に行きました。店番をされているおばさまと少しお話させていただけて嬉しかったです。柚木さんのクッションカバーが欲しかったですが、高価で諦めました。無念。

『やまと民藝店』
〒604-8033
京都市中京区河原町通蛸薬師上ル
tel/fax:075-221-2641

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