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自由俳句

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#季語

自由俳句 #16 粘菌

自由俳句 #16 粘菌

粘菌を探せし母と小春下

 少し早いですが、秋と冬の句を。表題の句は、現実味があるかわかりません。変形菌を一度は見てみたいです。

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   #16  粘菌

裏声の裏の爛漫読書の秋

とちの実の煎餅いふを貰ひけり

絆創膏の指が木の葉のお金拾ふ

革ベルト毛皮とともに吊られゐし

盆栽の鉢に枯れ葉の二枚寄す

きつつきの話膨らみ紅茶の香

撒き散らす副流煙を野分せよ

粘菌を探せし母と小春下

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自由俳句 #15 秋の陽

自由俳句 #15 秋の陽

柚子五つ袋の皺を透かしたれば

薄手の袋を透かせば摘んだばかりの柚子が入っています。もうすぐ立冬。秋もわずかです。

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   ♯15 秋の陽

紅茶から庭にコゲラの話へと

夕食の前のポテチとみかんの皮

みそ汁や白菜のほか輪ぎりして

回送の幼稚園バス柿渡る

選挙来て校庭の葉の二三枚

看板の文字はつきりと刈田行く

煙突から煙今年の豆腐はどう

小銭ばかりの財布を椅子に行く秋ぞ

ひと

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自由俳句 #11 天高し

自由俳句 #11 天高し

天高し回送電車高架ゆくも

 仕事終わりの夕方、高架の上を回送電車が走っていました。何度も利用した路線です。しばらく天気が良く、澄んだ空が高くにみえました。

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   #11  天高し

ハッカ油とは団扇二枚の涼しさよ

白鵬の眼にモンゴルの地平線

マスクべったり四畳半漂流す

鮭ときのこの炊き込みご飯貰ふ

曇りなき容器へ何を入れ返す

天高し回送電車高架ゆくも

青海苔の静脈透ける磯辺揚

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自由俳句 #10 芋づる

自由俳句 #10 芋づる

芋づるの紅葉一枚の絵として見よ

 色づいた葉の入り乱れる姿が好きだ。どこか調和が取れている。木の紅葉もいいけれど、葉の形のはっきりとした草の紅葉がよい。

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   #10  芋づる

庭石の奥メヒシバの点と線

芋づるの紅葉一枚の絵として見よ

屋根の上人影暗し秋の暮

三輪車ノウゼンカツラの塀を打つ

蓮根の大き穴より盆の菜

蓮根の穴よりお茶の湯気登る

掃除機の中の小言や流れ星

縄跳

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自由俳句 #9

自由俳句 #9

聞き馴れし酒の今年や惣社町

 栃木県道2 号線沿いに「鳳凰美田」で知られる小林酒造の第二工場がある。惣社とは、地域の祭神を集めた神社のことだそう。

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   #9

聞き馴れし酒の今年や惣社町

鼻先をかすめてゆくは畦の風

秋の田と夜風を走る友の声

冷ややかな風父の声聴こえない

同級生の顔が曖昧マスクなど

夕飯の食器の嵩が夜食後も

居待月立看板の見飽きたり

改装後のスーパー明し

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