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【チャートで簡単創作】王道ラブコメの作り方【③︰自覚編】

 こんにちは、渡柏きなこです!

 今回はラブコメ展開の作り方、いよいよ最終・第3回です。前回、前々回と、下のチャートに沿ってラブコメストーリーを作る実演と解説を行なって来ました。

ーキャラクターの仲良し方程式ー

【Part.1:出会い】
・ファーストインプレッション
・表面的な二次情報
・再会と確認

【Part.2:共同作業】
・興味と質問
・咄嗟の救助と返報性の原理
・仲良しの儀式

《間》

【Part.3:自覚】
・周囲からの指摘
・特別という認識
・行動の変化とギクシャク

 さて、それぞれどんな内容だったかをざっと振り返ると……

Part.1:主人公がファーストインプレッションでヒロインに強烈な印象を抱き、興味を持って周囲にヒロインのことを尋ねるも表面的な二次情報しか得られず、ヒロインに再会して確認を行う。

Part.2:ヒロインに興味を持たれた主人公は二人で話す機会を得て、初対面の時の出来事について質問をすることに。ヒロインの事情を知った主人公はその後、ヒロインのピンチを咄嗟の救助によって救い、返報性の原理によってヒロインも主人公になんらかのお返しをしてくれます。その後ふたりは仲良しの儀式を経て、互いのことがその他大勢ではない状態になります。

 こんな感じでしたね。前記事ではこれを『涼宮ハルヒの憂鬱』や『僕の心のヤバいやつ』などを大変な好例として取り上げつつ、作例としてオリジナルのお話も作りました。よかったらぜひそちらもご参考にどうぞ🙇‍♂️

【簡単創作術】あなたの物語にラブコメ展開を!①【出会い編】

創作初心者のためのラブコメ展開の作り方【②︰共同作業編】

 さて、ではいよいよ本日はその続き。チャートのPart.3の部分について詳細を解説していきます。今回のお題は『自覚』です。

Part.1〜Part.2である程度仲が深まった二人。しかし彼らの関係性は友情? 愛情? まだまだどっちとも言えない感じ。それでは彼らはどうなったら恋愛関係に発展するでしょうか? というお話です。

 大切なのは、他者から指摘され、考えること。そして「もしかして俺はあいつが好きなのか!?」となった主人公の行動が変化することです。以下、詳しく見ていきましょう。

【Part.3:自覚】
3−1:周囲からの指摘
クラスメイトや仕事仲間など、主人公とヒロインをどちらも知っている人物から、「お前、ヒロインさんと仲良いよな」と指摘されます。これにより、客観的に見ても主人公とヒロインの関係性は周囲より一歩抜きん出て見えるということが主人公に伝わります。

3−2:特別という認識
周囲からの指摘を受けて主人公は考えます。俺とヒロインは仲が良いか? 他に自分がヒロインと同じような対応を取る相手がいるだろうか? いや、いない。ということは俺は本当にあいつと仲が良いのだ。というかもしやこれ、割とそういう意味で『好き』では? と認識が変化していき、主人公が自らの気持ちを自覚します。

3−3:行動の変化とギクシャク
『好き』を自覚した主人公は、それによって以前のように気軽に仲良くすることができなくなります。ヒロインのことを『かわいい』と思ったり『綺麗だ』と思ったりすることが増えるでしょう。あるいは他の男子の話をされると嫉妬してしまったりするかも。違和感を覚えたヒロインにそれを指摘されたり、喧嘩になってしまうこともあるかもしれません。

 はい、こんなところでしょうか? この部分はラブコメの真骨頂といいますか、一番面白い部分ですよね。世の中の多くのラブコメ漫画はこのパートに【遅延】を使うことで長期の連載を継続させているように思います。

 例えばカップリングの教科書『WORKING!』では『好き』の気持ちを自覚した後の『3−3:行動の変化とギクシャク』に遅延を使って、いつも通り振る舞おうとしているのに相手が好きすぎて可愛くていつも通りにできない、というシーンがめちゃめちゃ入ります。

『とらドラ!』では『3−2:特別という認識』の完了までにかなりの遅延を入れ、お互いがお互いのことが好きである、と自覚させるまでの描写をメインで楽しむ構成になっています。

 ラブコメディはキャラクターがくっつくまでが花。なのでいかに『易々とくっつけさせないか』が鍵になります。だから主人公が告白しそうになったタイミングでライバルキャラが出現したり、ちょっとした言葉のあやで喧嘩したり、親の介入が起きたりするのです。『ラブコメにおける遅延』についてはまた後日!

 ともかく今回はこのチャートを使って、前回まで展開してきた実例・仮面ライダー555好きの青年とお金持ちお嬢様のお話の続きを実作してみましょう。いったいどうなることでしょうか?

3−1:周囲からの指摘
※今回はヒロインのお嬢様側に視点を変更します。
「ねえ、ちょっとヒロインちゃん」とクラスメイトのA子からある日声をかけられたお嬢様。「ん、どうしたんですの?」とにこやかに応じると、A子は「ヒロインちゃんて主人公君と付き合ってたりする?」と訊ねてきてお嬢様は「ぶっふ!!!!」と吹き出します。

「な、なんでそうなるんですの!?」と聞くと
「え、違うんだ? いや、なんか最近いつも一緒にいるし……」

「ねぇ?」とA子が振り返ると、そこにはニヤニヤ顔を浮かべる他のクラスメイト女子の皆さん。「う……」と言葉に詰まるお嬢様。

「い、いえ……主人公さんとはそういうのではなく……」
「えーじゃあいつも一緒に何してるの? 部活とかも別に一緒じゃないよね?」
「あ、それはその……」まさか仮面ライダーの話に花を咲かせているとは言えないお嬢様。

 はい、ここまでが『周囲からの指摘』のパートですね。Part.1の主人公がクラスメイトと話すシーンと読み味が似てしまう気がしたので、お嬢様側の視点に変えてみました。

 このシーンがあることによって、客観的には主人公とヒロインが仲良しさんに見えるということがわかります。趣味が合っていて仲良くお話ができるわけですから、読者的にみても二人が仲良くなってきているのはわかりますからね。クラスメイトたちは読者の代弁者でもあるわけです。

 さて、指摘を受けたヒロインのお嬢様。主人公とはそういうのではなく、と言っていますが、実際のところはどうなのでしょうか。さっそく次のパートで自問自答してもらいましょう。

3−2:特別という認識

「えー、じゃあ私たちの勘違いなのかー。好きとかじゃないんだ?」

 と残念そうにブーたれるクラスメイトの女子たち。

「そうですわよ! 当たり前ですわ! 主人公君なんて全然――」

 おーほほほと笑いながら、しかし改めて考えてみるお嬢様。脳裏に浮かぶ主人公君の顔。仮面ライダーについて語る自分を認めてくれた彼。そして秘密がバレないよう頑張ってくれたその姿。

 ぼふん!

 とやがて爆発したように顔を赤くするお嬢様。
「えっ」となるクラスメイト女子たち。
「あっ」となるお嬢様。

「こ、これは……これはなんでもないんですのよ!
 お、おほほほほほ! あの! ええと!」

「ごめんあそばせーーっ!!!!」と言って走り去るお嬢様でしたが、クラスメイト女子たちは「え、もしかして本当に……?」とそわそわ話し出すのでした。

 はい、ここまでが『特別という認識』のパートです。周囲から指摘されたことをキッカケにあらためて考えてみたところ、どうやら自分は相手のことが好きらしい、とここで自覚を持つことになります。相手の『咄嗟の救助』のパートや『仲良しの儀式』がここで役に立っていて、好きだなあという気持ちの説得力を増しています。

 ここで遅延を入れて延々話を続けてもいいのですが(その場合、お嬢様が段々「ああ自分は主人公のことが好きなのだ」と自覚させられていくお話になります。ヒロインの赤面が描きたいならオススメです)今回はすんなり続きのパートへと入っていきましょう。次は自覚が芽生えたことによる行動の変化を描きます。

3−3:行動の変化とギクシャク

 教室から逃げ出してしまったお嬢様はぐんぐんと廊下を走っていきます。

(あたくしはいつの間に主人公君のことを!?
 いや、そんなわけないですわ……!)

 とか考えながら走っていると、曲がり角から偶然階段を登って来た主人公君が! 「ぶつかる!」と思って咄嗟に避けたお嬢様は階段から落ちそうになってしまいます。すると。

「危ない!」と言って主人公くんがお嬢様の手を握り、咄嗟に抱き寄せました。力強い腕。近づく物理的距離。抱き止められるような格好になったお嬢様に、主人公君は言います。

「大丈夫か? まったく、ドジなお嬢様だな」

 その顔がいつもよりキラキラと輝いて見えてしまって、お嬢様は顔を真っ赤にしてしまいながら――

「いやぁーーーーーーっですわ!!!!」

 と主人公の頬に本気ビンタを喰らわせてしまうのでした。 

 はい、ここまでが『行動の変化とギクシャク』のパートです。いままで気にしていなかった相手が、気になるようになってしまったお陰でいつも通り話せなくなる、挙動が落ち着かなくなる、という部分を生かしてコメディを成立させましょう。

 ここまでくればもうこの二人は安泰です。両片思いが成立しているので、あとは適宜イベントを起こしさえすれば色々な恋愛模様を見せてくれることでしょう。相手を喜ばせたい……でも気持ちが伝わってしまったら変に思われるかもしれなくて怖い……そんな付かず離れずな距離感をそのまま書いて行けばラブコメになります。

 3−3に『咄嗟の救助』っぽい文脈があったように、これ以降のシーンはここまで描いて来たパートを別の形で起こしたり、流用したりすることによって延々描くことができるはずです。学園ものなら学園ならではのイベントで、ファンタジーならファンタジー、バトルならバトルの、それぞれ『らしい』イベントを二人の間に起こすことで独自のラブコメディを描いていってください……!

===== 追記 =====

今回書いた『仮面ライダー555好きのお嬢様』のお話ですが、面白そうなので本格的に小説作品にしてみようかと考えています。カクヨムなどで公開するつもりなので、もしご興味がおありでしたら作例としてぜひ見に来てください!

ほぼここに書いた通りの展開で進めるつもりですが、お嬢様が主人公を恋愛的に『好き』になる要素が少し足りない気がしますので、『咄嗟の救助と変法性の原理』のパートを、チャートの『間』の部分に少し足していこうかなと思っています。

 さて、三週間に渡って解説してきた創作初心者向けのラブコメストーリーの作り方、いかがでしたでしょうか? 今回ご紹介したのは、私が二十万字ほど作品を書いて来て思った、『王道のラブコメ展開』によく見るシーンをまとめて言語化したものです。なので絶対のものではなく、あくまで初心者の方向けに『こう考えると作りやすいよ』というのを解説しているにすぎません。

 チャートが頭に入ってくると、このシーンは飛ばそうとか、このシーンは尺をとってたっぷりやろうとか、順番を変えてみようとか、色々にアレンジして独自の物語が紡げるようになってくるはずです。たくさんチャレンジして、あなただけのラブコメディを作ってみてください。

 それでは、また来週の記事でお会いしましょう! あなたの創作がうまくいくことをいつも願っております! 渡柏きなこでした✨

前回:創作初心者のためのラブコメ展開の作り方【②︰共同作業編】

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