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大好きな人のために~高校3年間でお菓子作りが得意になった話~

「分量通り作ったんだけど、全然おいしくない……」

絶対失敗しないカップケーキ」と書かれたレシピと、ずっしり重たくて卵の味しかしないカップケーキを持って母に訴えた中学3年の私。

そう、私は「絶対失敗しない」とタイトルのついたレシピですら失敗するようなポンコツでした。

そんな私がお菓子作りに目覚めたのが高校1年生のクリスマスが近い頃。

当時、私には大好きな世界史の先生がいました。

授業中には板書する先生の後ろ姿をうっとりしながら見ていたほどで、廊下や職員室で偶然会えると「今日はラッキー!」などとよく運試しをしていたものです。

もっと先生と仲良くなりたい。そう思って「先生のお気に入りの生徒」になる方法を色々と考えました。

そこで私はひらめきました。

「そうだ、なにかお菓子を作ってプレゼントしよう!」と。

少し前のハロウィンの時、先生の所へノートを提出しに行ったら上級生がハロウィンのお菓子を先生にプレゼントしているのを目撃しました。

ちょっと嫉妬(笑)そして「私も何か作ればよかった」とめちゃくちゃ後悔しました。

それで私はさっそく、普段先生とやり取りしている「提出ノート」で先生の好きなものを聞いて何を作ろうか考えました。

その中で、これなら作れるかもと思ったのがチーズタルトでした。

タルト作りは初めてで、タルト生地を焼くところからやったので結構時間がかかります。宿題そっちのけでお菓子作りをしていました(笑)

表面が焦げないか、ちゃんと焼けるのか不安でオーブンをじっと眺めていました。後ろ姿は小さい子どもみたいだったと思います。

焼きあがったチーズタルトは熱々で表面がまだプルプル。ちゃんと固まってくれるのか不安で、翌日の朝はめずらしく早起きをしました。

100%納得のできとはいきませんでしたが、私はそれを大事に高校へ持っていきました。しっかり保冷剤を入れて完全防備で運ぶ私は、自分でもなかなか滑稽に思えました。

先生にプレゼントする予定の昼休みが近づくたびに鼓動が早くなり、まったく授業に集中できません。ちなみにタルトは教室の外のベランダで冷やしていました(笑)天然冷蔵庫です。

お昼休みになり、私はお昼ご飯そっちのけでタルトをプレゼントしに職員室へ向かいました。

先生に「チーズタルトを作ったので食べてください!」と言って手渡すと、「えー、嬉しい!クリスマスケーキにしようかな」といつもの素敵な笑顔で言ってくれました。

「頑張ってよかった」

大好きな先生のために頑張ったその時間がわたしにとってのクリスマスプレゼントになりました。

ちなみに後日、お返しということで先生手作りのプリンと「タルト、すごくおいしかった!」という嬉しいお言葉をいただきました。そのプリンの写真を30枚くらい撮ってから、ちびちび味わって食べたのはいい思い出です。

そんな私はイベントがあるたびに大好きな先生のためにスイーツを作ってはプレゼントしていました。シフォンケーキ、プリン、ムースケーキ、みたらし団子、チーズケーキ、生チョコタルト、メロンパン……いろいろ作りすぎて全部は把握しきれていません。

そして気づけば私は「お店で出せる」と言われるくらいお菓子作りが得意になっていました。

これには本当にびっくりしました。あのカップケーキすらまともに作れなかった私がここまでこれたんです。

高校卒業直前、最後のお菓子を作りながら「誰かのために頑張ると自分のためだけに頑張るよりも何倍も成長できるんだ」そんなことを思いました。

今でもその先生との関わりは続いていて、たまにお菓子を作ってお茶会をしています。

そしてそのたびに、先生の美味しそうに食べる顔を見ながら嬉しくなるのです。

さて、今度は何を作ろうかな。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。とっても嬉しいです。また読みに来てください!