読書記録#7 雨の日の女#241・#242 村上春樹

―――彼女がベルを押すと、がらんとした家の中にチャイムの音が響きわたった。まるで巨大なからっぽの胃の底に座って、誰かの大きな笑い声を聞いているみたいだった。

 冒頭から身悶えしたくなるような素晴らしい比喩が現れる本作品。

 暗い雨の日がミステリアスに描かれています。

 主人公が家の中でじっと息をこらして女をやり過ごす訳は、数日前の悪夢。

 わたしも悪夢を見ることのほうが多いのですが、夢というものは興味深いですね。余談ですが、訓練すれば明晰夢(夢を見ているという自覚があり、自由に動いたり、景色を自由に変えられる夢)を見ることが出来るようになるそうです。
 
 主人公の夢は、意味不明でありながらも示唆的で、不吉な予感を感じさせます。主人公自身もそれを感じていて、死を連想させる記憶を思い出すようになります。

 短いけれど、一節一節に考えさせられる迷路のような作品でした。また読み返したいです。

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