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【小説】肥後の琵琶師とうさぎ

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#短編小説

【小説】肥後の琵琶師とうさぎ14

【小説】肥後の琵琶師とうさぎ14

「私が見ていたのは夢だったのか?」
 私の質問に、毛玉はため息まじりに答える。
「いや、夢を見ていたのは娘の方だ」
 ーー娘の夢?
 私は、いまいち現実味のない現状に困惑し、毛玉と景色とを見比べるしかなかった。
「娘が望んだ夢を、お前と俺が見た。娘は、哀れな琵琶師を救いたかった」
「娘が私を?」
「そうだ。娘は、見目は娘だが、お前の母だった」
 ーー私の母……。
「職を、食事を施されただろう」
 

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【小説】肥後の琵琶師とうさぎ13

【小説】肥後の琵琶師とうさぎ13

毛玉と私はすでにあの黄泉地で魂の抜けた腑抜けで、ただ欲ばかり大きく、それも自分のことすら後始末ができていないのに他人のことには厚かましく幸福を願ったりしているので、神様たちもほとほと呆れていたのだ。
 思いが届いたとまでは思わないが、願いが叶う機会は与えられたのだ。願いが叶うとき願掛けの紐が切れるように、毛玉の仔うさぎたちは救われ、私の眼球は、娘は、その連鎖から救われたはずだった。

【小説】肥後の琵琶師とうさぎ6

【小説】肥後の琵琶師とうさぎ6

 産山の神様におつかいを命じられた。
 ――琵琶の音で、生命を踊らせる者がいる。産山にふさわしい者だ。産山のカゴを渡してこい。それから、この山で琵琶を奏でさせろ……。そうすれば、悪童うさぎたちのことは許してやろう……。
 トビキチは耳を垂れ、頭を垂れ、返事をした。
 ――これでチビどもの心配はなくなる。
 ひと月前、トビキチの仔うさぎたちは、山ひとつを裸にしてしまった。仔うさぎたちは食欲旺盛。その

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