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広告批評を読む(#2)

前回の記事はこちら↓

広告批評を読む #2をはじめていきましょう。「今月のベスト5」という、その月に放送された広告事例を取り上げた特集がありますので、そこから引用していきたいと思います。

広告批評(125号),マドラ出版より

(画像右)自社社員の声を集めて広告に活用する事例は、今となっては定番の手法になっていますが(伊藤忠商事の広告とか好事例ですよね)、1990年当時から活用されていたようですね。

右下の広告なんて、なんかfacebookとかinstagramを彷彿とさせるビジュアルに仕上がっていて、面白い広告作ってたんです。消費者からの質問に日立社員が回答した形式らしいですが、中には「セクシャル・ハラスメントをどう思いますか?」なんて質問もあったようで、そういった質問が当時からあったのも意外ですが、それを敢えて広告紙面に活用した日立も流石と思う訳です。

(画像左)三田工業という会社を存じ上げなかったのですが、YouTubeで検索したらまだ残っていましたこのCM。なので、まずは一度視聴してみてください。

この雰囲気、いま放送されていてもまぁそんなに違和感無いかもしれません。

おとそ気分で浮かれている世の中に、「うっかりするとこうなりますよ」というメッセージを送り届けるのが、どうも三田のお好みらしい。「グッドニュース」であることがふつうのCMのなかに、こういう「バッドニュース」が入ると、それだけで目立つし、印象も強い。が、それだけに・・・(途中省略)へたをすると見ている人にあざとさや不快感を与えてしまうことにもなるのだが、・・・(以下省略)

広告批評(125号),マドラ出版より,協調は筆者による

こういうトンマナのCMが好きな会社らしいです。そして、映像にくっついてしまうあざとさを綺麗な映像に仕上げることでうまくかわしてゆく。こういう作品、あまり見かけなくなりましたよね。景気が良かった時代は制作費も潤沢で、海外撮影もどんどん行われてたらしい。お金があったからできたこと、、、とは思いたくない。

広告批評(125号),マドラ出版より

(画像右)紹介されている松屋の広告。
墨田区に住まう実際のご家族の家族写真を時系列で並べていった広告。よくここまで撮り続けてくださいました、と言いたくなる。

子供たちの成長していくサマは当然のことながら、お母さんのファッションの変化や、お父さんのたたずまいなどに、いわくいいがたい”時間の流れ”が映りこんでいて、おかしくも切ない。

広告批評(125号),マドラ出版より

上記の指摘されている点が非常に重要で、百貨店を経営する松屋は消費を下支えする企業である。家族写真撮影など、かしこまった"ハレの場"ではそれ相応のおめかしをして、手持ちの一丁羅で臨むことだろう。つまり、当時のトレンドが凝縮されたこのキャンペーンを選んだ松屋のセンスが素晴らしいと思う。「どや、これがトレンドを作る松屋さまだ!」って強めに推されるよりも、こうして滲み出る情報にこそ価値を見出している人は、きっと松屋に買い物に行っていたことでしょう。こういう家族、現代にもいるのかなぁ。。

コピーだけど、「家族晴れ」よりも「長いおつきあいです。」の方が良い。

広告批評(125号),マドラ出版より

文中で言及されている”東欧の地殻変動”とは、東欧革命のことを指しているのだろう。そして91年にはソビエト連邦が崩壊するに至る。我々は歴史を知っているからこう語れるが、その時代を生きていた人たちが、事態をどう捉えていたかを知ることは非常に興味深い。

出版社だけではない、あんなにビビッドに地殻変動の模様を伝えてくれたテレビ局の広告が、みんな遊園地の広告みたいな顔つきをしているのにはおどろいた。・・・(途中省略)「テレビの人たちって、何を考えてるんだろう」と、ほとんど宇宙人を見るような気になってくる。

広告批評(125号),マドラ出版より,強調は筆者による

きっと局内では様々な意見が出てきっと別案もあったと思うのだが、「まぁ敢えて暗い広告出してもしょうがないでしょう(私の想像です)」とかの意見の方が強くて、そうなったんでしょうね。報道のTBS以外、空気読まないのはこの頃からでした。

広告批評(125号),マドラ出版より

各企業がそれぞれ夢っぽいことを語るなか、編集部の辛辣なコメントがよかった。

六〇年代型の”甘い夢”が完全にこわれ、政治家も宗教家も企業家も”新しい生活のイメージ”を提示できない状態がずっとつづいているだけに、・・・(途中省略)。チャチな夢にはのらなくなった”過熱時代”のぼくら消費者が、思わずからだを乗り出すようなリアルで楽しい夢を、ことしはぜひ見せて欲しいものだ。

広告批評(125号),マドラ出版より,強調は筆者による

これを読んで思うのは、「あぁこの頃からずっと言ってるのね・・・」ということ。わたしたちの生活イメージって、昭和からはアップデートされたかもしれないけど、平成からはまだ脱しきれていない気がする。失われた十年が、二十年になり、三十年になる。そんなことを繰り返している日本だから、まだ数十年後も同じことを言っている気がする。

ただ、露悪的でもなく斜に構えているわけでもない、世の中の流れをみて批評的に物事を語る人や媒体はいなくなった。(いや、居るかもしれないけどTwitterとかのSNSで匿名で口を出す人の方が悪目立ちしてしまっている)。そんなネットで生まれる大きな流れに見えるものが結局ハッシュタグ運動にしか収束しない昨今、何が必要なんだろう?とにかく、広告批評は復刊して欲しいなとは思う。

広告批評(125号),マドラ出版より

懐かしいCMが出てきました。サントリーの鉄骨飲料。耳に残るCMってこういうのです。そして、実家にもあったテレビデオ。

とりわけ、年末年始の宴会芸用に、このテのグループ踊りが大人気で、ビデオにとって研究したり、踊り方を教えろと各企業に問い合わせが相次いだり、ホント、やっぱり日本て、ハッピーなんだよねぇ。

広告批評(125号),マドラ出版より

時代は変わる、人の内面は変わらない。相変わらず日本てハッピーなんだよねぇ。

広告批評(125号),マドラ出版より

あの伝説的なCMってこの年に作られたんです。制作は電通+TYO。電通を擁護すると方々から虐められそうですが、ちゃんとこういうCMも作ってたんですよ。そして今でもCMを作っている。ただし、時を経ても振り返ってもらえるCMが作られているのかどうか、それは時代しか分からない。けどやっぱり、こういう風に批評して残しておかないと、後で振り返れないから、どれだけこの情報が貴重か、ということです。

広告批評(125号),マドラ出版より

(画像左)変わり続けて訳わかんなくなって消えちゃう企業もあれば、昔から相変わらずな企業がある。パルコは後者の相変わらずな方かもしれない。

道ばたの葉っぱとか、そのへんの虫とか、ふだん、人があまり気にしてないものを拾ってきては、その”美しさ”をアップにしてみせてきたパルコが、今度は一転して、鉄板。

広告批評(125号),マドラ出版より

パルコってしょっちゅう広告が炎上しているイメージがあるけど、この頃から不思議な広告作ってたんだねぇ。錆の詩ってさ。。。しかもコピーが「あなたも、わたしも、ちょっとずつ狂っています。」だからさ。

狂ってるね。私もパルコも。


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