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スローニュースとしての"映画"

さて、実は筆をおろし始めて3ヶ月が経っているのですが、あと数日で終わる2021年にビクビクしています。

そんな2021年3月末で、大好きな朝の番組「モーニングクロス」が終わって、早9ヶ月…。
最終回は、番組の色を凝縮したかのように問題提起の意思や、感謝と愛情に満ち溢れ、とても素敵な回でした(号泣)。

ラストのコメンテーターの一人、瀬尾 傑さん(スマートニュース メディア研究所 所長)が新たに取り組まれるメディア「SlowNews(スローニュース)」をご紹介されていたのですが、あまり聞き慣れなかったスローニュースという言葉について、今年最後に触れてみたいと思います。


Fast News とSlow News

※両者とも、特別どこかで定義されているような言葉ではありません(多分)

まず、Fast Newsについて。

ニュースや報道において、スピードの「速さ」は価値だと感じる方は多いと思います。私たち生活者も、速報を知ることで、瞬時に災害や事件から身を守る行動を取ることもできます。
報道する側にとっても、「誰より早く速報を出すこと」を目指した速報至上主義が蔓延している状態が窺えます。

また「瞬時に素早く概要を理解できる」を価値としたニュースメディアが増えたり、SNSにおける個人発信のメディアも影響し、報道発表のスピードだけでなく、伝達・拡散のスピードも爆発的になってきています。
結果として、見出しの文字数13文字に切り取られた言葉が事実と違うような印象を生んだまま拡散される、なんてことも散見されますよね。情報が溢れかえる現代では、FastであればあるほどFakeの可能性を注視し、信憑性を疑うことのできるアンテナ、「メディアリテラシー」が必須になってきます。

わたし個人としては、「速さが生んだ危うさ」として、一つ一つのニュースが孕んでいる事実・実態がコンテンツのように消費されるようになってきたなということも危惧しています。大炎上した1週間後、もうすっかり忘れられていたり…なんてことの繰り返し、多いですよね。


そして、Slow News。

シンプルに、Fastの対極なのでSlow。

冒頭ご紹介した瀬尾さんは報道側の方の立場として、お金と時間・労力をかけて取材や調査を行って報じる調査報道やドキュメンタリーが、信頼性が高く希少性もある高い価値を持つニュースとして取り扱われる仕組みづくりを-と、新たな事業を立ち上げ、Slow の価値を提唱してくれていました。

私たち読み手にも、とある部分だけを切り取った編集に惑わされず、見出しだけでなく、自分の目と耳で情報を正しくインプットし、吟味・判断・咀嚼するために「ゆっくり詠む」意識が必要です。

(それはわたしも努力中…なのですが)

その観点で大事なのは、「その情報が正しいか」だけではないのです。

ものごとの文脈を覗いて見ることかなと思っています。

そう考えると、
「映画」というメディアにおいては、ダイレクトに報道ドキュメンタリー作品でなくてもSlow Newsになり得るのではないでしょうか?

  • なぜ、あの国ではこんな作品が生まれたのか-

  • なぜ、この作品は現代で評価をされているのか-

  • あの描写は何を訴えたかったのか- etc…

例えば、
2018〜2019年発表の米映画には、某元大統領下の影響を受け、Black Lives Matterの運動が起きる以前から問題提起を含んだ作品が続々と増えていて、北米での悲痛の叫びを間接的に感じることができました。


「自己」の価値観を形成してきた映画

話は変わって…。

とある楽曲の歌詞・漫画やドラマのセリフ・偉人の自伝などから、今の自分の信念やモットーだったり、自分を奮い立たせるための辞書に刻まれているメッセージって、ありませんか?

「諦めたらそこで試合終了ですよ」
「明日やろうはバカヤロウ」
とかとか…。


一方で、
こと「映画」においては、具体的なセリフや言葉というよりも、その作品全体がもつメッセージ性や、物語の「設定」にある時代ごとの社会事情そのものが、自分の「意識」や「価値観」にじわじわと影響を及ぼしているものが多いなと感じました。

さらにいうと、もしかすると、それらの映画は「好きな映画ベスト3って何?」って聞かれた時に頭に浮かぶものとも、ちょっと違うかもしれません。

小さい頃、スピルバーグ監督全盛期で、兄姉みんなで何度もロードショーを録画したビデオを見ていました。ジュラシックパークは、当時はハラハラドキドキ、スリルと生還への満足感を楽しんでいたように記憶しています。今ふと思い起こすと、そこにも人間のエゴによって遺伝子操作を行うことへの問いが含まれていて、その影響からか、自然と地球生命体のサスティナブルについては意識が芽生たような気もします。

同じようにここ数年思い起こす映画が、ペイフォワードです。

このnoteを書くにあたり改めて調べていたら、こんな記事が見つかって、読んでたら泣いてしまいました😭

当時は大ヒットとまではいかず、配給担当者も悔しい想いをしていたようなのですが、この映画をきっかけに浸透し始めた「ペイフォワード」という言葉が、コロナ禍でエネルギーを帯びて現代に送られてきたというエピソードは、まさにSlowな伝播だと感じました。

みなさんも同じように、
改めて考えてみると、あの映画のこんなところに影響されたな〜ってことがあるはずで、それは紛れもない私たちの生きてきた時代の時事を受けたものだったんだと思います。(当たり前のようなことを言っていますね汗)


さまざまな切り口で「問い」を潜ませる映画

2021年、どんな映画を見ましたか?
何を感じましたか?
憤りましたか?お腹を抱えて笑いましたか?
新しく知った事実や価値観はありましたか?

直接的な作品テーマ・モチーフに取り上げられていなくても、映画には、時事がリアルであるということを実感させてくれる要素が随所に詰まっているのです。

  • 人種的Diversityとジェンダー平等の意識されたキャスティング

  • 王子様を待つだけでない冒険心あふれるお姫様像

  • 多様な「正義」を共存させるエンディング

  • 主役重要順でなく登場順で紹介されるエンドロールのキャスト  etc…

これらは例ですが、同じ時代の作品を見ていると、受けを狙うためのマーケットトレンドとはまた違う時代の「潮流」が見えてきます。

これら一つ一つも、その表現が今の時代に正しいかどうかではなく、自分の価値観にどういう影響を与え得るのか、どんな「問い」を与えてくれているのか、そんな向き合い方で見てみてください。

ひどく共感したり、ちょっとでも違和感がのこった表現・描写がもしあれば、もう少し「なぜ」を観察してみると、何か発見できるかもしれません。


おわりに

2021年は、少しずつ日常的な文化活動が再開している様子が見れて嬉しくもあり、まだまだヨーロッパ諸国に比べて文化支援が不足している周囲の友人たちを見ながら、歯痒い気持ちにもなった1年でした。

悲しいことに、コロナ禍を機に、営業を終了してしまう映画館の報せも時折ありました。

文化は、生きるのに、豊かさを醸成するのに、必要です。

Fastな情報だけに躍起にならず、Slowに今の社会や自分に向き合ってみる時間を大切にしたいものです☺️
来年も新しく出会える映画が楽しみです!

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