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沈黙という対話

現在わたしは、立教の人材・組織開発を学ぶ大学院である、立教リーダーシップ開発コース(LDC)に通っています。今年の3月に卒業予定です。その学びを、一年ぶりに振り返ってみたいと思います。このnoteは、2021年立教LDCアドベントカレンダーの1日目です🎉

一年目の振り返りはこちら

なぜ、LDCに入学したのか

もともとは、人事制度設計の実務家として力をつけたくて、大学院への進学を決めました。freeeで人事企画になったけれど「実務から学べることだけでは、会社のスピードについていけない」、そんな焦りを感じ、すがるように進学しました。

見える景色はどう変わったのか?

入学当初、世の中は白黒はっきり結論が出せることが素晴らしい、ロジカルに考えられることが善、それこそがビジネスマンとして素晴らしいことだと思っていました。高い山が一つだけあり、それに向かってひたすら走る、これが企業人としての人生だと思っていました。

実務に置き換えれば、「すばらしい人事制度」を一つ作り上げれば、会社で働く人のモチベーションがぐんぐん上がり、会社の業績も伸びていく。そんな考え方を持って仕事をしていたように思います。

今は、緩やかな丘がたくさん連なっているような、世界にはグラデーションがことを認識するようになりました。自分の中の多様性・場面ごとの多様性に耳を傾けるようになりました。

人を大きく捉える。元ラグビー日本代表監督のエディージョーンズについて授業で触れた時、心に残っている言葉です。自分の中にはマジョリティの言葉、マイノリティの言葉がある、相手もそう。常に一貫性のある自分じゃなくても良いと認められるようになったのは、大きく人生観が変わった瞬間でした。

他の人にとってみたら、ささいな、たわいもない変化かもしれません。でも自分にとっては、大学院で学んだどんな理論や知識より、この変化が一番の気付きでした。

素晴らしい人事制度が人を幸せにするのではない。その人のアイデンティティやプロセスに耳を傾け、制度をうまく利用する。その先に、組織や仕事へのエンゲージメントやコミットメントがある。まずは対話を通して、個人を理解することから人事の生業は始まるのだと、認識を改めました。

変化のきっかけ

きっかけはたくさんありました。授業で得た知識、グループワークの中でのフィードバック、仕事でのフィードバック、家族との関係性。いろんなことが繋がって、自分が作り上げてきた不要な価値観や足枷を外すことができたのかなと思います。

強いて一つ挙げるならば、「グループプロセス・コンサルテーション」という授業の中で「沈黙という対話」を体感したことが大きなきっかけとなりました。

グループプロセス・コンサルテーションとは、自分自身の知覚・影響力(ユース・オブ・セルフ)を使って、意図的に組織に介入していくことです。厳密な定義は以下の通り。

グループが効果的にその合意による目標を達成することを支援するという目的に沿って、グループで今起こっていることやダイナミックスに対して、
コンサルタントによってなされる理由のある、そして意図的な介入である。
W. Brendan Reddy

ファシリテーションは議論を前に進めることが重要ですが、グループプロセス・コンサルテーションはその場のプロセスに目を向け、「今ここ」に着目することを重要視します。

そんな授業の中で、私自身がコンサルテーションする側に周り、場に介入する機会がありました。放った言葉はそう多くありませんでしたが、それまでの過程を知っている同期メンバーからすると「今お前がそれをいうのか?」と、ちょっとぎょっとさせる言葉だったと思います。その後1分くらい沈黙が流れました。

オンライン授業で誰も話さない1分って結構ひやひやします。「あぁやってしまったかな」と思う反面、同期がぐっと考えディープダイブしている顔を見て「これが対話か!」と腑に落ちる感覚を味わいました。

「対話=ずっと話し続ける、耳を傾け続ける」的なことをイメージしていましたが、自分自身の発言がどう相手に影響を与えるのか考えた上で、ぐっと相手に一歩踏み込む。「自分を使って場を動かす=対話」でありグループプロセス・コンサルテーションの醍醐味だなと衝撃が走った瞬間でした。

こんな些細なことがきっかけですが、人を広く捉え、白とも黒ともいえないグレーの世界でもがき、それでもちょっと前進してみる。これがLDCで得られた一番の経験と気付きです。

この気付きをくれた同期と先生はとても感謝しています。

「人に向き合うことって大変、だってそれは自分と向き合うってことだから。でも組織開発をする人はそれを諦めちゃいけない。」

後日、授業を担当してくださった先生からもらった言葉で、ずっと大事にしていきたいなと思います。

もっとグループプロセスについて知りたい人は、社会構成主義の入門書をどうぞ

3年後どうしていたいか?

今、LDCの一期生にあたる二年生は修論にあたるプロジェクト報告書の執筆に追われています。まさに追われています。

あと書きの章では「今後のキャリア」について触れる場面があり、それをみんなで考える授業もあります。手厚い、手厚いぞLDC。それをきっかけに私も3年後を考えてみました。

「自律分散型キャリアを歩む人が組織を変えていくカルチャーを日本に根付かせる」、これが今後私がチャレンジしたいことです。

学びながら大学院に通い、人生のサードプレイスができたことで、入学前に比べて余裕と自信を持って生きることができるようになりました。キャリアというと仕事だけを指すことも多いですが、個人的には、仕事・学び・人との繋がりこの3つがキャリアの柱だと捉えています

私にとっては、大学院が仕事と切り離されたところで一つのキャリアとして分散し、その結果仕事でよりチャレンジできるようになったり、新しい人との繋がりが生まれました。学びという柱を起点に、仕事・人との繋がりに循環が生まれ、入学前に比べ楽しく・朗らか・自由に生きられるようになったと感じます。自律分散型キャリアを歩み始めるきっかけが大学院でした。

そんなこんなで、キャリアプラトーや人材不足など多くの人にまつわる問題を抱える日本で、ちょっとでも世の中が良くなる方向に貢献できたらなと、考えています。

おわりに

人や組織にまつわる問題。(ちょっと風呂敷を広げて)日本が抱える様々な問題。実務とアカデミックの両輪で解決してやるぜ!と思った方、ぜひLDCへ!


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