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英語コーチが「最強の英語学習法」とその論理的根拠をお教えします!

6月に入り、旅人のための短期間英語コーチング、英検一級・準一級最短合格コースと、40歳を超えて英語で第二の人生を切り拓いてきた僕の英語学習理論・コーチング手法の粋を集めた新しいサービスを立ち上げてきました。

どちらのコースも、41歳から英語を学びなおし始めた僕の、そして英語コーチとしてのこれまでの僕の集大成とも言うべき内容になっていると自負しているのですが、旅、英検に特化した内容で、短期的な目標を達成するためのものである以上、全ての人にとって有効な普遍的なものとは言い難いものがあります。

そこでこの記事では、すべての英語学習者の方に有効だと思われる、現時点での最強の英語学習セットをご紹介していきたいと思います。

第二言語習得論、そしてこれまでの僕の英語学習経験、指導経験を踏まえ、まさに「これを3ヶ月〜半年間続ければ絶対に誰でも英語力を伸ばすことができる!」と自信を持って断言できる英語学習の組み合わせはこちらです。

◆『英語のハノン』(初級)
◆「多読・多聴」(任意の英文テクスト)
◆単語帳を使った学習
◆『基本文法から学ぶ英語リーディング教本』
◆発音矯正(オンラインレッスンor「ELSA Speak」などの発音矯正アプリ)

1.『英語のハノン』で総合的な英語力を作る

僕のnoteでも折に触れてご紹介してきている『英語のハノン』を使った学習。10年に一度出るか出ないかのクオリティのこの書籍を英語学習に取り入れない手はありません。

興味がお有りの方は、英語のハノンの著者である横山先生のご高覧に預かってご好評いただいた下記の記事をぜひご一読下さい。1万2千字以上の長文になりますが、すべての英語学習者の方の心に響く内容だと思っています。

『英語のハノン』の正しい実施法(詳細は上記リンク先参照)で涵養したい英語能力は次の3つです。

1.英語の「オト」に馴染む

次にご説明する「多読」の効用を最大限に引き出すためには「正しいオト・リズムで英語を読める」事が必要です。

『英語のハノン』による、英語の音声にフォーカスした学習は、英語の正しい発音とイントネーション、リズムを養うのに最適化されています。

これにより、英語力全般の飛躍的な向上が見込まれます。音が言語力UPに多大な役割を占めている事実については後述します。

2.英文法を理解する

無骨な印象のある紙面に馴染めないという方もいらっしゃいますが、必要な情報が簡潔にまとめらていて、文法をしっかりと復習したいという方にも『英語のハノン』は大変有用な一冊になっています。

こちらの「文法力」も、やはり多読などの英文の読解や、英語リスニングには欠かせないものです。

3.英語を「体で覚える」

英文法を理解できるようになったからと言ってすぐに英語が自由自在に聞いたり話せたりできるようになるか?と言われれば答えは残念ながらNoです。

具体的には、その英文法を、実際に頭で考える前に体が反応してインプット・アウトプットできるようになるくらいまで「身体化」させることが重要です。

英語のハノンを使った学習ベースにある徹底した反復練習は、空手の「型」の習得のごとく、頭で理解している英語を体になじませ、自由自在に使いこなせるようになることを可能にしてくれます。

2.多読・多聴

僕が40歳で英語を学び直し初めてはや7年が経過しましたが、その7年のうちにあった最大の画期が2018年から英語学習に取り入れた「多読・多聴」です。

僕はこの学習法に出会ったことで、当時、海外生活(フィリピン・セブ島)でどうにかこうにか生き延びられる程度のブロークンイングリッシュから脱却して、今はネイティブのナチュラルスピードの英語・英会話に完全についていけるくらいの英語力を身につけることができました。

1.多読

「多読」とは「うんとやさしい英文をとにかく大量に読む」という、ただそれだけの学習法です。

「うんとやさしい」とは、例えば英検準一級・TOEIC700点台レベルの方はネイティブの小学校低学年生(1〜3年生位)が読む児童書、TOEIC900点・英検一級レベルの方はネイティブの小学校高学年(4〜6年生)〜ティーンが読むような児童書くらいのレベルの英文です。

そんな簡単な英文を読んでなんの意味があるのか?とおっしゃる方も多いですが、ここで養いたいのは「英文を日本語に訳さずに前から読めるようになる能力」で、決して難解な文章をウンウンうなりながら正確に訳すことができる力ではありません。

また、簡単な文章なので「辞書はなるべく使いません」。もしわからない単語が出てきても、いちいち辞書を調べません。僕たちも日本語の小説を読むときに、少々わからない単語や固有名詞があっても飛ばして読むでしょう?それと同じです。

その事によって「知らない表現に出会ったときにフリーズする」という、日本人の最大の弱点を克服して、文脈や話の流れで意味を類推しながら読む(聞く)力を育み、ネイティブの会話に置いてけぼりにされることを防ぎます。

多読がバッチリできるようになれば、不思議なことですが海外ドラマなんかも字幕無しで観られるようになります。

ただ、英語の「オト」に馴染みがないと不可能なので、そこを補ってくれるのが「多聴」です。

2.多聴

上述した多読と同じ効果を得られることに加え、リスニング能力の大幅なUPを見込むことができるのが多聴の効果です。

多聴もまた、基本的には自分の理解が十分に及ぶようなうんと易しい音源を大量に聞く学習法です。ただし、スピードに関してはネイティブがネイティブに向けて話しているコンテンツなど、ナチュラルスピードの音源がいいでしょう。

おすすめは、ネイティブの小学生向けのポッドキャストや、ネイティブの児童向けに絵本を読んでいるネイティブのYoutubeなどの動画です。

3.英語のハノンとの相乗効果ーリテンション能力

『英語のハノン』で身体化させた英文処理能力と、「多読・多聴」で英語を日本語に変換することなく前から処理していく能力を組み合わせることで「リテンション能力」の向上が見込まれます。

リテンション能力とは「一度に頭の中に保持できる英語の絶対量」のことで、ビギナーでは数語しかできなものを、上級者になると10語以上頭の中に蓄えてそれを自在に出し入れすることができるようになります。

これは「英語を単語単位ではなくチャンク(塊)単位で扱えるようになる能力」と言いかえることができるでしょう。ビギナー〜中級の方にはちょっとピンときにくい話かもしれないですが、上級者ほど、英語を「大きな単語群の塊(チャンク)で処理して聞いたり話したりしています。

そして一度に扱えるチャンク量が多い人が「英語ペラペラ」とか「海外ドラマを字幕で見れる」人たちなんです。おそらくこれには例外がありません。

英語のハノンと多読・多聴の組み合わせは、最終的にこの「英語リテンション能力の向上による英語処理能力の劇的な向上」を約束してくれます。

3.単語学習

英語学習者のみなさんにとって一番頭がいたいのがこの「単語学習」ではないでしょうか。

頭が痛い理由は色々とありますが、煎じ詰めれば「やりたくないけど、やらないといけないことはよくわかっている」というジレンマにあるんじゃないかと思います。

1.効率的な単語の覚え方

単語の学習の仕方に関しては諸説ありますが、個人的には「一週間毎日100〜200の単語を回していく」というやり方が、クライエントさんを拝見していて一番定着率がいいように思います。

つまり「1日に10個ずつ覚えて10日で100個」というよりは「同じ100個の単語を一週間毎日回し続ける」ほうが効率的ということです。これは僕のコーチングの師匠である船橋由紀子コーチから教わった方法です。以下の船橋氏のご著書にも確か記載があったと思います。

これは「ものは覚えたてが一番忘れやすい」という人間の忘却のメカニズムを考慮に入れたやり方です。逆に言うと、覚えたての単語は毎日触れていくことで脳に定着し、長期記憶へと移行していきます。

とはいえそれでも一週間触れ続けた単語もしばらくすると抜け落ちていきますから、効果的なタイミングで復習は必要です。「エビングハウスの忘却曲線」などの記憶に関する心理学的知見を学習に取り入れることで、より効率的に単語の定着を促していくことができる様になるでしょう。

2.おすすめの単語帳・教材は?

ではどんな単語帳がおすすめなのか?気になるところですが、これは一概に言うことはできません。すべての方の英語力は千差万別で、英語のハノンや後述の『黄リー教』と違って、万人に勧められる共通の単語帳というのは存在しないからです。

ではどうすればいいのか?まずこのまま書店へと足を運んでいただき、気になった単語帳を「パラパラー」っとめくってみて下さい。

そこに掲載されている単語の6割位が「知っている単語」で構成されているレベル感の単語帳。これがまさに今、あなたが手にとって徹底的にやるこむべき単語帳です。

「6割も知っている単語が掲載されている単語帳を買うのは金がもったいない。もっと難しいほうがいいんじゃないのか?」僕がこれまで何百回も聞いてきた反論です。

が、そんな方に必ず伺っていたのが「では、その難易度の単語帳を最後までやり切ったことがありますか?」という質問でした。そして残念なことに、この質問に100%自身を持って「やり遂げました!」とお答えくださった方に、僕はいまだかつてお会いしたことがありません。

そう、みんな最後までやりきることができず、本棚の肥やしに年間数千円から数万円を費やしているんです。で、その理由は実に「難しいから」なんです。

『パス単』『金フレ』『キクタン』『究極の英単語』『速読英単語』『ターゲット1900』…なんだって構いません。自分が手にとってみて紙面がしっくり来るもので、掲載後の6割が理解可能な単語帳。これを手にとってみて下さい。これだけで、単語学習は7割成功したようなもんです。

あとは「継続できるか否か?」あなたの意志の力にかかっています。

4.『基本文法から学ぶ英語リーディング教本』(黄リー教)

実は上述の3つの英語学習を一日2〜3時間程度続けるだけで、ほとんどの英語学習者ははっきりと英語力の伸びを実感することができるはずです(正しい方法で実施した場合に限る)。

しかしながら、ここに「黄リー教」の愛称で一部のコアな英語学習者から絶大な人気を集めている『基本文法から学ぶ英語リーディング教本(黄リー教)』を加えることで、あなたの英語力の伸びはその加速度を増すでしょう。

そしてその加速度以上に有意義なのは「生涯に渡って衰えることのない、本物の英語力の獲得」を可能にしてくれるのが「黄リー教」である、ということです。

詳しいことは上のリンク先の拙記事に譲ります。また、黄リー教のことを更に深く知りたい、と思われた方は、僕がこのnoteにマガジンとしてまとめているこちらの記事も合わせてお読みいただければと思います。

これらの記事もまた著者である薬袋善郎先生にお読みいただき、ご好評いただいた記事です。著者の先生の意図をしっかり汲み取って本書のインストラクションどおりに英語学習を続けたことによって、僕の英検一級・TOEIC925点の英語力はもう1段も2段も上昇しました。

かとってこれが英語上級者向けの学習参考書かと言われれば全くNoで、むしろ本書は『基本文法から学ぶ〜』というタイトルからも明らかなように、ビギナー〜Intermediate(中級)の英語学習者の方にこそ手にとっていただきたい一冊なんです。

Long story short、僕が「多読・多聴」によって数年(と数万円)かけて手に入れた英検一級・TOEIC925点レベルの英語力に、本書はわずか数ヶ月で到達させてくれるポテンシャルを秘めている、ということです(正しい方法で本書を読み込んでいけば、ですが)。

5.発音矯正

最後に、上述のすべての英語学習をきちんと統合して、その効果を「真の英語力」へと高めるための仕上げの一品であるエッセンス「発音矯正」についてです。

発音の矯正=スピーキング力の向上。これはどなたにもご理解いただけると思います。ここまでご紹介してきた学習で、真の英語力の獲得のために必要と言われる「大量のインプット」は確保されています。そしてその質についても。

しかしながら、僕がここでご紹介した英語学習方法との相乗効果を狙った「発音矯正」は、個々の学習の効果を統合して真にその英語を「使えるもの」にするためのスパイスなんです。

正しい音で話せる英語はもとより、正しい音で読める英語、正しい音で聞ける/書ける英語を手に入れるために必要な発音矯正。以下の効果が期待できます。

1.リスニング力向上

「発音できるオトは聞き取ることができる」これは英語リスニングにおける大原則です。発音できないオトは聞き取れない、という逆は真ならずなのですが、発音できれば100%聞き漏らすことはありません。これは厳然たる事実です。

リスニングが苦手という方の大半は、そもそもそのオトを自分で正しく発音できていない場合が多いです。

同様に、正しいリズムやイントネーションで英文を読む事ができないこともまた、リスニング力に悪影響を及ぼします。

英語というのは僕たちの想像以上に「リズム・イントネーション」が通じやすさ/伝わりやすさにダイレクトに影響を及ぼす言語です(ま、日本語もうそう言うところはありますけれど)。逆に正しいイントネーションで話せさえすれば、少々発音がまずくても、LとRの音を正しく使い分けられなくても、あなたの英語は通じます。

「英語の音」に対する感性を常に敏感に保っておくためにも、コンスタントな英語の発音矯正システムは必須なんです。

2.発音は独習できない

どれだけ耳(アタマ)がいい人でも、英語の発音やイントネーションを独学のみで習得するのは不可能です。僕たち日本人はほぼすべからく、英語の音を勝手に日本語に置き換えて発音してしまうからです。

この傾向から目をそらしたまま英語を読む・聞くというプラクティスを続けてしまうと、限られた人にしか理解できない奇妙な英語でしかその英文を読めない/その英語音源を聴けない「私」が完成してしまいます。

そのような状態で多読多聴や『英語のハノン』を続けると、その方がアウトプットする英語は、ネイティブスピーカーを始めとする世界中の英語話者にとって大変了解するのに骨の折れる代物になってしまうでしょう。

発音ミスはコンスタントにその間違いを指摘してくれるメンターがいて始めて気づくことができるようなものです。どれだけ流暢に話せる人でも、3歳児以降に英語に触れ始めた人は必ず日本語のアクセント・オトに引っ張られた訛りのある英語を話してしまいます。

訛りやアクセントが悪いと言うつもりは毛頭ありませんが、それらがあまりに顕著になる過ぎると、英語力アップにおいて様々な弊害があちこちに現れてきますし、それは結果的に全体的な英語力の向上における障害/足かせとなってしまいます。

3.正しい音で「書く」とは?

以前『英語のハノン』の横山先生の講演を聞きに神戸にある大学にお邪魔したときのこと。先生が「英語が話せない人の書いた英文ライティングは一発で分る」という言うようなことをおっしゃってて膝を叩いた記憶があります。

どれだけ文法的に完璧でな英文でも、英語が話せない、あるいは話すことに慣れていない人が書いた英文というのは、英語のあのうねるようなリズム感・ダイナミズムがありません。まるでお経を読んでいるような、平坦で、抑揚がなくて気持ちの悪い文章なんです。端的に言って読みにくいんです。

一方で、英語をきちんと音で理解できている、英語の音をうまく操ることのできる人の書いた英文というのは、中学3年までに習う英単語・英文法しか使われていなかったとしても、読んでいて気持ちがいいですし、時にうーんとうなってしまうような見事な英文だったりします。

これは参考書やなんやらを読んでアタマで身につけられるものではありません。英語という言語が持つ語感・音感・リズム・イントネーションといった、ある種の身体性をともなった英語を操ることができる人にしかアウトプットできない英語なんです。

徹底した発音矯正と練習は、そんな「読んでて気持ち悪くなる英文」を書くことを防ぎ、すっと体に染み込んでくるような大変にリーダブルな英文をアウトプットすることを可能にしてくれます。

そう言う英語を書ける人は当然ネイティブが聞いても気持ち悪くない、スノッブな感じもしない、とても自然な英語を話せる人です。申し訳ないけれど、これは理屈で理解できるものではありません。飽くなき反復練習とストイックなくらいの発音の矯正指導を長期に渡って経験した人にしか到達できない境地だと、そんな感じがしています。

まとめー英語は「INPUTの量」「英語の音」と「身体化」がキーワード

そんなわけで、現時点で僕が考える最強の英語学習についてご紹介してきました。

このどれか一つだけをとって学習を続けても英語は伸ばすことができます。でも、これらを効果的に組み合わせていくことで、一つの学習だけだと年単位でかかる英語力の伸びを、わずか数ヶ月の間に経験することができる。やらない手はないでしょう。

これら複数の学習方法を組み合わせることでねらう相乗効果の根拠はこちらの3点です。

1.INPUTの「量」がOUTPUTの「質」を左右する

よく「英会話がうまくなりたいから」という理由でひたすらオンライン英会話を続ける方がいらっしゃいますが、はっきり言って下策です。この方法で伸びた方を見たことがありませんし、そもそも第二言語習得論的にも効果が疑問視されているからです。

会話力=アウトプットを継続的に向上させたいなら、やるべきは「読む・聞く量の増大」です。英会話だけを続けても、せいぜい今ある英語力を維持するのが関の山で、これだけを年単位で続けてほかをやらないということになると、あなたの英語力はかえって低下しさえするでしょう。コロナ禍で帰国して以降、英語コーチとして稼働する中で、このケースの方を山程みてきました。

英語学習界隈でまことしやかに言われているのが「インプットの量は、アウトプットの質を左右する」というものです。これには僕は反論の余地はないと思っています。というのも、これは人間の言語習得能力のとても自然なプロセスをなぞっているからです。

小さい子供を考えてみましょう。彼らは誰からの影響も受けずに、いきなり言葉を使い始めたりしますでしょうか?クルマ・鳥・お母さん・暑い・寒い・美味しい‥すべて「周囲の大人が喋っていることを聞いてるうちに使えるようになる」んです。

成人もまたしかり。たくさん本を読んでインプットしている日本語話者は、とてもきれいな日本語を書く・話すようになります。反対に、あまり本を読まない人というのはしゃべる・書く日本語も大抵は稚拙で、こういってはなんですが、知性を感じることができない、ややもすれば聞くに耐えないものが多い印象があります。

僕たちはまず自分に近しい他者が使っている言語に触れ、それを自分の言語能力や言語経験に照らし合わせて、それを繰り返し経験し、使ってみる(そして間違える)というプロセスを果てしなく繰り返すことで、その言葉・表現を使えるようになります。

そしてその「他者が使う言語に触れた経験」が多ければ多いほどその言語に習熟していくんです。インプットの量は、アウトプットの質を左右すると言うのはそう言うことです。

第二言語習得論は、狼に育てられた人間の女の子が(←実在します)ほとんど言葉をしゃべることができなかったという事実を持って「人間はインプット無しで言葉を話すことができるようにはならない」と科学的に結論づけています。

オンライン英会話だけでスピーキング力が伸びる、と信じている人は、狼に育てられた子どもでも人間の子供なのだから、そのうち唸り声や遠吠えから言語を使いこなせるようになると信じている人のことです。

そんな馬鹿な話がありえるでしょうか?

2.英語は音にフォーカスして学ぶべし

世界中に存在する6500に及ぶ言語のうち、文字を持たない言語は実に6000、9割以上にも及ぶと言われています。

逆に「音声を伴わない言語」というのは存在しません。つまり「言語≒音声である」ということです。

「英語を学習する」というと、日本人は机にチーンと座ってコリコリと問題集を説いたり、難しい英語構文を暗記したり、難解な英文を辞書を使ってウンウンうなりながら翻訳している姿を自動的に想像しがちですが、こんなのは言語を習得するときの振る舞いとしては不自然極まりないものです。

机に座ってコリコリ勉強してさえいれば英語は習得できると思っている人というのは、幼児が言葉を覚える=机に座って絵本なりを読み、そこに書かれていることを実際に口に出せるようになっていくプロセス以外はないと信じている人ということになります。

そんな幼児に出会ったことがありますでしょうか?音声無しで始まる言語体験を有するHuman Beingは、多分この地球上に存在しません。

英語は音から。これは『英語のハノン』の著者の横山先生もおっしゃっていることです。ある言語環境にさらされ、その言語の音を繰り返しく中でそこにある種の法則を見出し、その法則を無意識になぞれるようになるまで繰り返し練習していくプロセスのかなで人は母語を習得していきます。これには例外がありません。

第二言語習得においてもこの法則を当てはめて見ることは決して突拍子もないことではないでしょう。そして僕たちは義務教育を通じて(高等教育じゃないですよ)第二言語である英語のアルファベットと、基礎的な英単語をすでに読めるようになっています。

「多読をしていると、リスニング力が伸びた」という英語学習者の証言の根拠はこれです。彼らは幸運なことに、どこかのタイミングで正しい英語発音で「読める」ようになっていた。だからただ「読んでいる」だけで、ネイティブの発音が頭の中に鳴り響き、それゆえにリスニングがメキメキ伸びていくんです。

読むときですら「音」が重要なのはこのような意味においてです。英語を学習するなら視覚的な情報以上に「耳から」すなわち聴覚にフォーカスした学習を優先させるべきであるという根拠はここにあります。

3.身体化するまで繰り返す

大量のインプットはOK、音にフォーカスして学んでいる。よし、これで私も英語がペラペラ…とはなりません。そうは問屋がおろしてくれないんです。

INPUTと音にフォーカスした英語学習でTOEICなどの資格試験では十分に高得点を狙えるでしょう。しかしながら、言語というのは「話せてなんぼ」なところがあります。そして悲しいことに「第二言語習得論」は「INPUTをしているだけでは、効率的なOUTPUTにはつながらない」という事実を明らかにしています。

つまり「たくさんインプットしたら、それを繰り返し使ってみる」事が必要なんです。その繰り返しのうちに、インプットした英語の種が花を開き実をつけます。

大切なのは「繰り返し使ってみる」ということです。これにより、「アタマで」でわかっているものが「体で」理解できるようになります。

言語というのはアタマで話すものではありません。これはよく自転車の運転や楽器の演奏に例えられます。

自転車に乗るとき「時速〇〇km以上で走れば転ばない…」とか「あのカーブはだいたい半径○mくらいだから内側に車軸を〇〇度傾けよう。スピード出てるから○○%余計に内傾しないとな」とかいちいち考えて運転しません。

自転車の運転は小脳という運動を司る脳の部位が視覚や触覚などのさまざまな感覚情報と脳から筋肉に向かう運動指令を統合することで可能になりますが、ネイティブレベルで操られる言語もまたこの自転車の運転における小脳のパフォーマンスのようなものによってもたらされていると考えることができます。

僕たちは自転車に乗れるようになるまでに何度も転んで痛い目をして、そのたびに少しずつうまくなっていきました。バランス感覚が身につき、自転車に乗るための筋肉がうまく使えるようになり、そうやって次第にスムーズに自転車に乗れるようになっていきました。

言語も同じです。最初は頭で考えながらでしか文章を構築できなかったのが、くり返しその言語を口に出すことで徐々にスムーズにアウトプットできるようになる。上手な顎の使い方や舌の丸め方に習熟し、英語らしい音が出せるようになっていく。そのプロセスの中で変な英語を喋ってしまって恥ずかしい思いをしたり、LとRをうまく発音できない経験をします。

それでも繰り返しトライしているうちにあるときふとそういうミスをしなくなっている自分に気づく。頭で考えなくても流暢に、正しい文法・英語らしい発音で話している自分に気づく。そしてまたあらたな課題が見つかって、痛い目をして…という繰り返しのうちに、僕たちは少しずつ言語に習熟していくんです。

フィリピンの語学学校に勤めていたとき、私達日本人が英語をうまく話せない根本的な原因の一つとして同僚であるフィリピン人講師たちがよく口にしていたのが「日本人は間違いを怖がりすぎて話すことをそもそもしない」というものでした。

これは「言語習得はトライアンドエラーの繰り返し。そこから逃れることはできない」という事実を端的に物語っていると思います。同じように第二言語として英語を学んできたフィリピン人たちの経験に照らして、私たちは圧倒的にトライアンドエラーの「エラー」を怖がりすぎて、トライが少なすぎるというんです。これには正直言ってぐうの音も出ないと思います。

英語ができるようになりたいなら「たくさん読む/聞く」「正しい音で読む/聞く」というインプットを大量にした上で「身体化するまでトライアンドエラーを繰り返す」

この3つが一体になったとき、英語学習者の英語は「頭打ち」を知らなくなります。つまり永久に英語力が伸び続ける状態の完成というわけです。これができるようになれば「英検一級」だとか「TOEIC900点」みたいなものはただの通過点となり、造作もないことになります。


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