洋書多読で英検一級一発合格の僕だから言える『黄リー教』という参考書の効用
2022年の4月から『基本文法から学ぶ英語リーディング教本』という参考書を使って学習を始めています。
ファンの間では『黄リー教』の愛称で親しまれている一冊で、随分高い評価を得ているようです。
先週1周目が終わり、間髪入れず2周目に入りました。この本を始めたことで、僕の英語力、特に読解力がUPしたと実感しているからです。1周目で読み落としているところを拾いつつ、より理解を深めるためにすぐに2周目を始めた、そんな感じです。
今日は、この参考書の素晴らしさをご紹介したいと思います。
僕の英語スペック
その前に、まず僕自身の英語力について、ご紹介しておきたいと思います。
資格:英検一級・TOEIC925点
英語学習歴:5年半(2016年11月から学び直し英語)
海外生活歴:3年3ヶ月(世界一周12ヶ月+フィリピン・ゼブ在住15ヶ月)
最終学歴:関西外国語大学外国語学部英米語学科(2000年卒業 以降、英語からは遠ざかる)
おそらく、一般的な日本人の方の中では比較的「英語ができる」人にカテゴライズしてもらえるスペックだと思いますが、そんな僕が、この「中学1年生でやることから説明している」(「はじめに」より引用)この本を一冊終わらせることで「もっと英語が伸ばせる!」と確信している、それが『黄リー教』なのです。
『黄リー教』総論
『黄リー教』(以下「本書」)は端的に言えば英文読解力を養うための英語学習参考書ですが、面白いと思うのが
英語の品詞・働き・活用の相互関係
に焦点を当てて英語読解を解説している、というところです。
英語には「名詞」「動詞」「形容詞」「副詞」などの様々な品詞がありますが、本書はこの4つをメインに、それらが文中でどのように振る舞っているか(働き)、どのように変化していくか(活用)を論じることで、英語の背後に働いている法則を解説してくれています。
これがどういうふうに効くか?はまた後ほど論じるとして、この、一見すると非常にシンプルなテーマに沿って実際に本書を使って学習してみると、自分の「英文の読み」が今までいかにでたらめだったか、ということが、身にしみてわかります。
英検一級の僕にでさえ、文章の中でその単語・句・節がどのように振る舞い、どのように機能することで一つのセンテンスを意味のある語群たらしめているのか?を本書は気づかせてくれます。目からウロコの解説にあふれているんです。
本書を結構馬鹿にしたり、意味ないなどと言って批判(というかけなす)レビューが多いようですが、僕にはちょっと信じられないことです。
どんなふうに学習が進んでいくのか?
では、具体的に『黄リー教』の内容を解説していきます。以下の英文をご覧ください。
中学一年生が習う英文法・単語のみで書かれた(office は習わないがかも知れない)何ということのない英文です。
が、ここに、以下の「問題」がぶら下がっています。上記の文章が「簡単である」と思わる方は、以下の問題にすべて答えられるでしょうか?
どれだけ英語が読める人でも、ここまで厳密に一つ一つの語の持つ役割や機能を問われると、思わず詰まってしまうばずです。ちなみに問6はもちろんdoneじゃないですよ(当たり前じゃないと思った方は、残念ですが中学レベルの英語もわからない…ということを証明したことになります)。
そして「詰まるところ」というのは「理解が及んでいないところ」です。あるいは、頭では分かっているけれど、言語化出来ずにいるために、具体的な知識としては腹落ちしておらず「なんとなく」読んでいる部分ということになります。
『黄リー教』は、この「曖昧さ」を決して許してはくれません。徹底的に、繰り返し繰り返し、この微に入り細を穿つような質問を投げかけてきます。
実はこの問題文の一番上にはこのような指示があります。
この「即座に答えられるようになるまで」がミソなんです。どういうことでしょうか?
即座に答えられないのは「英文法が身体化していないから」
僕は「英語の多読」で、英語力をここまで伸ばしてきました。だから、本書の解説に書かれていることはだいたい理解しています。でも「読んで分かる」のと、「実際に運用できるレベルに理解している」のとは、また別問題です。
黄リー教を熟読して、各章の最後に用意されている上記のような問題にあたってみると「即座に答えられるもの」と「そうでないもの」にはっきり別れます。
「即座に答えられるもの」というのは「実際に運用レベルで理解できている」事項です。もう少しざっくりと言えば「喋れる」英語、「聞き取れる」英語、ということです。僕が「身体化している」という表現で示しているのはこのことです。
本書には独特の言葉遣いや用語が散見されます。これらを覚えて口に馴染ませることで「スラスラ言えるようになる」ものがある一方で、どうしても最後まで頭に入ってこないものがぼくにも若干あります。
それが、僕の英語力が届いていない「穴」であり、僕の英文読解、及びリスニングなどのINPUTにおける「弱点」というわけです。
この「徹底的に弱点をついてこられる容赦なさ」。最初は正直言って不快でした。僕だってそれなりに英語ができるはずだし、英検一級だし、TOEICだって900点を超えています。翻訳の仕事もしているし、英語指導で生計を立てているという自負だってないわけじゃありません。
でも、『黄リー教』はそんなことにはお構いなしです。そして僕の知識の穴、文法理解の脆弱性、英語読解の甘さを指摘してきてくれます。そして少しずつ気づき始めるんです「この本が全部理解できたら、自分の英語はもっと上に行けるんじゃないか?」って。
そこにきちんと謙虚に向き合えるようになったら、おそらくその瞬間から、『黄リー教』は、読者にとって最高の伴侶になってくれるはずです。そしておそらく、本書が主張するように「他の読み方ができなくなってくる」んです。
それでも「そんな読み方に意味があるのか?」と思う人へ
それでも中には、この微に入り細を穿つような本書の英文読解・解説に、嫌悪感とまでは言わないまでも、ある種の拒否反応を示される人もいらっしゃるとおもいます。
実際、こんなことを学ばなくても、英語を読んだり聞けたり、話すようになる方はゴマンといます。事実、この僕がその「ゴマン」の中のひとりだったからです。
でも、そんな僕だから一つ言えることがあります。
本書の「微に入り細を穿つような解説」は、例えば僕のように英語多読・多聴だけで英検一級まで合格できた英語学習者が、無意識のうちに行っている英文読解のプロセスを、それを経験したことがない人が追体験できるように丁寧に解説しているからこその細かさなんです。
そう、僕たち英語上級者は、実にこのようなプロセスをほとんど無意識に行うことで、英文を読んでいるんです。その辺りの消息は、本書p416〜始まる
という英文に添えられている、5ページも渡る本書の記述に譲ります。ここは本書の一番のハイライトだと思います。是非、ご一読いただきたいのです。
上に挙げたような「問題」とか「質問」にスラスラと答えられるようになることで「どんな英文も読めるようになる」という本書の謳い文句は、誇大宣伝でもなんでもなく、極めて理にかなっているんです。
先に上げた、一見大変細かくてめんどくさく複雑に見える「問題」群をなんのくもなくスラスラと言える=無意識に想起できるくらい身体化することが、「英文をスラスラ読めるようにしてくれるためのものである」ということは、疑いもないことのように、今の僕には思われます。
『黄リー教』も英語多読も、目指す頂は同じ
英語多読もまた、この「身体化プロセス」のためのものであることは、僕自身の経験からはっきりということが出来ます。
多読は文法事項などの難しいロジック抜きで、この「身体化」をダイレクトに引き起こすためのトレーニングです。ロジックはわからない。でも、英語のバックグラウンドに働いているある種の法則の存在はわかる。どうしてそう言うのかは分からないけど、そう言わざるを得ないことだけは分かるようになる。それが「多読」の効用です。
『黄リー教』も、目指しているところは一緒です。ただ、そのプロセスを「ロジカルに」「日本語を介して」「徹底的に」行うという点が決定的に違うだけです。
どちらも大量のインプットと飽くなき反復練習を求めているという点では全く変わらないと思うし、個人的な実感として、多読に費やしたのと同じだけの時間を、「黄リー教ドリルの反復練習」は求めてくると思います。
でも、たどり着ける場所は同じです。
言ってみれば、富士山を富士吉田口から登るのか、須走口から登るのか?の違いだということです。どちらも大変な道のりであることには代わりありません。時間もそんなに変わりはしないし、目指している頂上も、そこから見える景色も全く同じもののはずです。
僕は41歳からの学び直し英語学習歴3年、多読歴1年で、英検一級という地点まで上り詰めることができました(まだ山頂だとは決して思っていませんが)。
もし『黄リー教』にそれくらいの時間と労力をかければ、きっと皆さんにも、僕が見ている風景くらいは見ていただけるようになるはず。
これは自信を持って言うことが出来ます。
さぁ、黄リー教を手にとってみてください。ここからきっと、あなたの英語のブレイクスルーが始まるはずですから。
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