子どもデータベースの危険性(下)プライバシー権 保障できない東京家政学院大学教授 小野方資さんに聞く〜シン・すべてがNになる〜

                                                               2022年5月25日【政治総合】
 参院で審議中のこども家庭庁設置法案にかかわり、政府が進めるこどもに関する情報・データ連携について東京家政学院大学の小野方資(おの・まさよし)教授(教育学)に聞きました。
 こども家庭庁が真に子どもの権利条約を尊重するというのなら、プライバシー権を保障すべきです。これは「ひとりで放っておいてもらう権利」から「自己に関する情報をコントロールする権利」として展開しています。
 情報化社会となり、行政に個人情報が集中的に収集・管理されるという状況を背景に、この展開が見られました。

議論のやり直しを求める新聞記事

利用範囲が不明確

 これに基づくと、子どもは(子どもの権利を代わって行使する保護者は)自己に関するどのような情報が集められているか閲覧する権利が保障されなくてはなりません。また、収集されることを望まない自己情報の訂正や抹消の権利が保障されなくてはなりません。
 国会で好事例だと評価された箕面市の例に即して考えると、市が集めた情報を子ども(やその保護者)が見たいと言った場合、見せてくれるのでしょうか。訂正や抹消をしてくれるのでしょうか。集められた子どもの情報の利用の範囲が明らかでないことも、「目的外利用」がないように限定する議論が聞かれないことも問題です。「ない」と思いたいのですが、この集められた情報が商業利用された場合や漏えいした場合を考えると、ゾッとします。この懸念は、収集された情報がいつまで残されるのか、いつ抹消されるのか、誰がどのようにこの情報が抹消されたのを確認し、この抹消は本人に知らされるのかという議論がないこともあり、払拭(ふっしょく)されません。
 また、「プッシュ型支援のために子どもの個人情報の集約が要る」との議論にも反論が必要です。

議論やり直し必要

 考えるべきは、この個人情報の保護にルーズな傾向がある教育現場の現状です。「情報公開をすると教育が萎縮する」として、指導要録や学校に集まる子どもの個人情報を隠した事案もありました。「教育」を理由にして権利保障がルーズであってはならないのは「プッシュ型支援」などの場合も同様です。仮に「プッシュ型支援が要る」としても、児童相談所の職員や福祉の専門家などの厚い支援体制が不要になるわけではありません。
 先進とされた事例から見える問題を踏まえると、国会では、子どものプライバシー権の保障の必要性を正確に踏まえた議論のやり直しが要ると思います。
 私は、先述した懸念を払拭し、権利保障を図るためにも「こんなに扱いに困る情報は、集約しない」という判断の方が賢明だと思います。(おわり)

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