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子どもデータベースの危険性(上)国が設計関与 利用歯止めなし〜すべてがNになる〜

                     2022年5月24日【政治総合】
 参院で審議中のこども家庭庁設置法案にかかわり、政府が進めるこどもに関する情報・データ連携が焦点になりつつあります。(土屋知紀)
 データ連携とは、子ども一人ひとりの成績や学力テスト、学校の出欠状況などの教育上のデータ(個人情報)や、生活保護や児童扶養手当の受給歴など福祉のデータを連携させてデータベースをつくり、「真に支援が必要な子どもや家庭」を見つけ出し「プッシュ型支援」を行うというもの。
 デジタル庁が主体で進めていますが、こども家庭庁の重要プロジェクトに位置付けられ、内閣府、文科、厚労両省の副大臣プロジェクトチームが収集するデータ項目を検討中で、項目は今後増える可能性があます。マイナンバーカードの活用も検討し、6月までに論点整理をまとめるといいます。

子供データベースの危険性を訴える新聞記事

「こんなのやめて」

 データ項目は全国学力テストや健康診断結果、タブレットの閲覧履歴、ドリル正答率のほか、障害やいじめの有無、友達との関係など多岐にわたるため、4月27日衆院内閣委員会では野党議員から、「データ項目を子どもに見せたらびっくりされた」との発言や、機微な個人情報の収集について子どもから「黒歴史を取られる」「こんなのやめてと言われた」との声も上がりました。
 小林史明デジタル副大臣は「国が情報やデータを一元的に管理することは一切考えていない」(同委)と答えています。
 ところが、日本共産党の塩川鉄也議員が自治体の情報管理システムの制度設計に国が関与するのかと質問すると、デジタル庁の審議官は「他の自治体へ横展開できるよう課題を整理する」と述べ、今後国が関与することを認めました。さらに「市民は個人情報ることを認めました。さらに「市民は個人情報の一元管理を拒否できるか」「どのような情報の収集・分析・対応策を行ったか開示できるか」との質問には、拒否や開示ができるとは答えず、データ利用の歯止めも示しませんでした。(5月13日同委)
 政府は、データベースを使い人工知能(AI)で虐待の有無を判断するシステムを開発するといいます。すでに全国で実証事業を実施していますが、野田聖子こども政策担当相は、先進事例とされる大阪府箕面(みのお)市の「子ども成長見守りシステム」は「好事例だ」と評しました。
 同市のシステムは、市内在住の0~18歳の全ての子どもの家庭状況や学力テスト、意欲、健康状態、家族や先生・友人とのつながりなど「生活困窮」「学力」「非認知能力」の3要素に大別した詳細なデータを収集し、データベース化。一元管理して支援の必要性をAI判定するもので、2017年度から運用しています。しかし現場からは「困窮世帯の子どもをラベリングしているだけ」などの批判の声が聞かれます。

学力テストの活用

 さまざまな課題を抱えるデータベースですが、とりわけデータ項目に全国学力テストの活用が検討されているのは大問題です。
 07年に始まった悉皆(しっかい)式の全国学力テストは、各地で学校や教員が平均点競争に走らされ、「テスト対策のドリルばかりで本来の授業がおろそかになる」という事態が起きています。
 参院本会議(5月18日)で日本共産党の田村智子議員が、子どもを取り巻く現状は貧困やいじめ、不登校、自殺等の件数が高止まりか上昇傾向にあり、学力テストは子どものストレスの最たるものだと指摘しました。ところが岸田文雄首相は、競争主義的な学力テストが子どもに深刻な影響を与えているとは認めず、これまでの教育行政への反省もありませんでした。
 このような認識でつくられる子どもデータベースに問題はないのでしょうか。(つづく)

収集が検討されているデータ項目

社会経済的背景、転出入歴、生活保護の利用状況、児童扶養手当受給、受診歴、処方せん、友達との関係、特別支援教育の状況、生活・学習履歴(家庭)、出欠・学習状況(民間)など

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