見出し画像

数字日記

日々真面目に家計簿なるものをつけている。
日々の支出がどれくらいあるのかを把握するために
数年前から始めた。

はじめの頃は家計簿専用壁掛けカレンダーに
日付のところ下に直接支出を書いていった。
毎日毎日よく金を遣うものだなと気付き、
たまに日付の下がまっしろな日があると
不思議な達成感があった。

やがてこれでは遣った日と遣わなかった日の
オンオフしか把握できないことに不十分さを覚えて
スマホアプリに手を出した。

最初は新しいおもちゃのような気分で
楽しくつけていたのだが、
ちょっとした仕様が物足りなかったり
便利な機能が私には不必要だったりと
ストレスが溜まっていくようになった。
またカレンダーに戻すか迷いに迷って
結局重い腰を上げて自作することにした。

自作だなんて言っても大したことではなくて
エクセルに入力していくだけだ。
そこに関数を色々仕込んで
自分好みの家計簿を作成する。
あぁでもないこうでもないと試行錯誤の結果に
ようやく仕上がって使い始めても、
端々にほころびがあって
それを繕うのが一苦労だった。

そして完成したのがちょうど一年半前のこと。
それ以降自作家計簿にこつこつとつけてきた。
しかもエクセルにつけるようになったのだからと
支出を分類別にグラフ化なんていうことにも
つい手を出してしまって
それが面白くてデータを蓄積させていく
楽しみにも目覚めてしまった。

そして今、
また不足を覚えるようになってしまった。
この一年半の間
——もうちょっとこうできたらな
なんて思ったことは何度もあったけど
見て見ぬ振りをしてきた。
しかしついに耐えかねて家計簿の改修をしてしまったのだ。

改修作業自体は大したことなかった。
本来やるべきことの合間合間に
やっても1日で終わったほどだった。
グラフも新しくして
より詳細なデータを比較できるようにした。

するとどうだろう。
これまでの1年半のデータもグラフにしたくなってしまったのだ。

絶対に手を出してはいけない。
あれはもう過去の数字。
過去の家計簿の管轄だから、
新しい君には関係のないこと。
確かに君の方がずっとあれこれ気のつくことができる子だけど、
あのちょっと抜けてる感がよあの子のよさだと思うよ。
だからそうっとしておいてあげようよ。

そう宥めたのだけどだめだった。
好奇心とグラフ欲に負けて
うっかり手を出してしまった。

やってしまった感満載の中、
やっぱりねというほどの大変さだ。
支出区分けと支払い方法の区分けの登録方法を
一変してしまったがために
1件ずつ登録し直し作業が待っていた。
まだ引き返せる、まだ引き返せると思いつつも
好奇心の方が強くて結局こつこつやっている。

しかしこの作業をやっていると
お金の動きから何をしたのか
どんなイベントがあったのかが
はっきりと思い出すことができた。
家計簿ってお金主軸の日記なんだと知った。

食事に手を抜いた日も、
外食、旅行、映画、遊園地へ行った日も。
本屋に何度も行っている月は
——自分に迷ってビジネス本買いまくった頃だ
なんて思い返せたり。

そんな生活を見ていたら
今のどこへも行かない生活と比較してしまって
急にさみしくなってしまった。
——旅行へ行きたいな
——遊びに連れてってあげたいな
——目的もなく買い物にでかけたいな
——せめて外食して楽しく過ごせたらいいな

自粛生活に肯定的で
振り返らず前だけを見て過ごしていたのに
まさかこんな作業から
気持ちが揺れるとは思わなかった。
不意を突かれて防ぐこともできず
さみしさはかなり染みている。

また楽しい思い出をつけられる日がくると信じて
いまは過去の整理をしよう。
まだ去年の後半の作業が残っている。
後半は楽しいイベント目白押しだから
また色々思うところがありそうだけど
みんなの笑顔も同時に思い出せるから大丈夫。

過去を受け止めて
未来を書き込もう。

よろしければサポートお願い致します。 製作の励みになります。