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オーディオブック 運転者 未来を変える過去からの使者

タイトル:運転者 未来を変える過去からの使者
著者:喜多川奏
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
出版日:2019/03/28

小説とは言いがたく、自己啓発本とも位置づけられない、間にあるような物語。
人生における全て、仕事も家庭も親とも何もかもがうまくいかない保険の営業マンが、どうやって生きていけばいいのかを学び、人生観を変えていく。

きっかけを与えてくれるのは一台のタクシーだ。
その運転手は人生が変えられる場所へ適切なタイミングで連れて行ってくれるのだが、そのチャンスを掴めるかは自分次第となっている。
チャンスを掴むには、どういう心構えで日々を過ごせばいいのか、うさんくさがりながらも試してみては失敗を繰り返し、都度運転手と話すことで少しずつ考え方に変化が生まれていく。

いつも上機嫌でいること。
日々努力すること。
人の為になにかをすること。
結果はすぐには得られるものではないし、時として自分には返ってこない場合もあるということ。
作中で語られる内容は、どこかで耳にしたことのある言葉ばかりだ。
ただそれらをまとめ、どうしてなのかを丁寧に説明し、物語としてわかりやすく説いてくれている。
聞いたことのあることばだからこそ、改めて納得し、世の中はそういう風に繋がっているのかと腹落ちさせることができる。

全体を通して非常にわかりやすく描かれており、またうまくいかない事柄はどこか自分にも思い当たる気もして感情移入しやすい。
自分は主人公よりもマシだとか、こんなに上手くいくはずがないとか、そういうことが心によぎる時点で、私はまだ他人と比較し上機嫌に生きられていないのだなと思いながら聴いていた。

エピローグで主人公の妻が例のタクシーに乗り込むのだが、この場面が全部を台無しにしてしまったように感じてしまった。
妻に対し、運転手がある男の話として主人公の未来を語る内容になっている。
まだ主人公が不機嫌のまっただ中にいる時のエピソードなため、妻側からするとこの後聞いた話が目の前で次々と現実のことになっていく。
読み手としては、あぁだから妻の夫への反応は夫の予想に反していたのかと合点がいく。
しかしそれらは全て主人公である夫の成長変化を邪魔しないようにという予防線に思えてならない。
ならば抑えるのではなくて、妻にも成長をと思うのだが、妻への扱いはぞんざいだった。
女は男を支えるべきだと言われているようで、それまでいい話だっただけに、最後の最後にがっかりが残ってしまった。

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