見出し画像

映画 レジェンド&バタフライ

タイトル:レジェンド&バタフライ
監督:大友啓史
脚本:吉沢良太
主演:木村拓哉 綾瀬はるか
公開:2023/1/27

※ネタバレ注意

織田信長と濃姫のやり取りがメインでストーリーは進んでいく。
歴史ドラマや映画となると、どうしても大河ドラマを連想してしまい、
歴史を辿るストーリー展開を期待してしまうのだが、
本作は年号が表示されるだけでいつなにが起きたのかという
歴史上の出来事についての説明は特になかった。

そのため登場人物たちの発言や、戦の作戦会議の場面で
歴史的にはこの瞬間なのかと自分で理解する必要がある。
私のように歴史に疎い人間には、若干置いてけぼり感が否めないが、
それは自分の勉強不足が原因であり、映画のせいではない。
「そんなことあったかもね」という軽い気持ちであっても十分に面白いし、
史実を抜きにしてストーリーを理解することができる。

織田信長と濃姫との政略結婚から始まるのだが、
互いに馬鹿にし見下し合い、信頼関係が全く築けていない部分を
時間を掛けて作られていた。
子どもの張り合いのような展開が多く、
徐々に打ち解けていく過程では笑ってしまう場面も多い。
映画というのは、後につらい展開が待っているとわかっている場合、
こうした幸せなエピソードは、どうしてこうも切なくさせるのだろうか。

木村拓哉扮する織田信長は、
格好いいのは当然なのだが(キムタクだ。それだけで格好いい)、
綾瀬はるか扮する濃姫は、
キャラクターとして織田信長よりもずっと格好がよかった。
なぜこんなに濃姫が格好いいのかと疑問に思うのと、
反面織田信長が子どもに見えてならない。
まぁ濃姫と絡む時のみ、幼稚な部分を垣間見せる織田信長なのだろうから、
気を許している間柄ということで納得すればいいのだが。

織田信長が大うつけだったというのは周知と思うが、
いつになったらその仮面を剥いで
デキる信長が出てくるのかと待っていたのだが、
一向に出てくることはなかった。
終始信長は大うつけであったように思う。
そこが私の中で違和感があった。

そもそも全国統一へは濃姫に乗せられて始まるのだが、
そこに信長の意志がなかったかと言えば嘘になる。
しかし幼稚な信長はどうやら濃姫に褒められたいようで、
その意志の方向性は少し違うように感じた。
だからこそ権力を極めた信長は、
なんのためにこんなことをしているのかと自問する。
この時濃姫とは既に離縁しており、
喜んでもらいたかった人は側にいない。
空しさの中、信長は精鋭を欠いていく。

弱く、どこか情けなく、しかし憎めない本作の信長は、
非常に人間くさく描かれていた。
完璧で冷徹な信長のイメージはなく、
幼稚で、褒められたくて、淋しい孤独な信長だ。
身なりが徐々に整いはじめ、
装飾品等が西洋化していく様子から、
時間の経過と、持つ力が大きくなっていく様を
目で見て感じられるのだが、
信長の行動、言動の根本に変化は見られない。
従って信長自身は果たして成長していたのか疑問が残った。

本能寺の変で、
自害前の信長が白昼夢を見る場面がある。
あの場面は必要だっただろうか。
ずっと日本文化を邁進し、
ところどころ西洋が入ってきているのがよかったのに、
がっつり西洋の服を着て、タイタニックごっこして、
異国に辿り着くシーンには、少し、いやかなり引いてしまった。
ずっといい感じだったのになぁと現実に引き戻されてしまい残念だった。
その後信長はしっかり自害してくれるが、
その格好よさも何割か減ってしまったのではないだろうか。

信長は実は生きていたという説があることは知っている。
改めて調べてみれば、映画の内容と同様に、
本能寺には地下通路があったという記述があった。
なるほど。確かにあながち嘘ではない。

生きているのか、死んでいるのか
どちらであっても、信長と濃姫の心は繋がっており、
目指すところは同じだという絆の強さを伝える場面だった。
生きるときは共に生き、
死ぬときさえも共に絶える。
運命共同体の2人の最後だった。

敢えての見所は、中谷美紀の美しさだ。
品があり、華があり、例え白髪姿であっても
凜とした美しさを絶やすことがない。
濃姫を溺愛し過ぎている感がまたよくて、
濃姫を大切に思うがあまり
最終的には織田信長に頭を下げさせることまでやってのけてしまう。
美しく、強く、怖ろしい。

全体を通してとても見応えのある作品だった。
カリスマ的存在の信長をそのままに表現するでなく、
人間くささを存分に表現していたのが逆によかっとと思う。
怖い場面は怖く、笑ってしまう場面は徹底して笑わせ、
見る側の心を鷲掴みにする。
あっという間の時間だった。

この記事が参加している募集

映画感想文

よろしければサポートお願い致します。 製作の励みになります。