見出し画像

グレープフルーツ

僕は食べることが大好き。
まぁ、それは多分、大多数の人がそうだと思うけれども。

ただ、好き嫌いの話になると、
結構な数の人が、案外主張をする。

僕の祖母は、熱心に家庭菜園をしていて、年間を通していろいろな野菜を作っては、僕に食べさせようとしてくれていた。特に夏野菜は、トマト、きゅうり、ナス、ゴーヤ、ズッキーニなど、僕の好物ばかりが畑に並んでいたし、トマトやナスに関していえば、植えている種類も一つではなかったので、飽きることがなかった。

しかしだ、祖母にとってみれば、トマトもきゅうりも、ゴーヤも好きではないらしく、自分の食べるおかずのところには全然並べない。でもナスは好きだそうだ。

僕は、ありがたいことに好き嫌いがなく、どんな食べ物でもパクパク食べる。最近では、無農薬/減農薬で作り手がはっきりしている食材を好んで食べるようにはなっているけれど、それでも好き嫌いという観点から見れば当てはまらない。

ただ、好きではなるのに、食べられなくなってしまったものはある。

一つは、ブリやハマチ、カツオの類。
小学生の頃、正月になると。僕の家が本家に当たるので、親族一同が集合して、
皆で食卓を囲むことが常だったが、その時のテーブルには、祖母が数日前から用意していたおせち料理に加えて、大皿に盛られたエビフライや、ハマチが数皿並んでいたのです。当時の僕は、ハマチが好きすぎるばかりに、その大人4人前ぶんくらいの量の乗ったハマチの大皿を抱えて、一人でパクパクと口の中に放り込んでいたのだけれど、それを見ていた祖母からは、毎年のように、

「そんなふうにして食べてたら、一生分食べたことになって、もう食べられなくなるからそろそろやめときなさい」

と言われていたわけです。そんなアホなと思いながら、聞こえないフリをしていたけれど。

それが、祖母の言った通り、小学6年生の正月に突然やってきまして、
例年通り、ハマチの大皿を抱え込んでパクパク食べていたら、突然、凄まじい吐き気に襲われまして、そのまま食べていたハマチを全部吐き出してしまったのです。
そしてそのまま、ハマチを含む同じ系統の魚が一切食べられなくなってしまうという、なんとも悲しい結末を迎えてしまったのでした。むぅ・・残念。。
最近になって、ようやく多少は食べられるようになりましたが、それでも2・3きれいただけばもう十分でございます。

それと、もう一つは、グレープフルーツ。
これに関しては、幼い頃からつい最近まで、変わらず大々大好物でして、
外の皮は流石に剥きますが、中の白い皮については丸ごと食べてしまうくらい好きで、グレープフルーツに関しては、その香りももちろん好きな訳です。
ただ、非常に残念なことで、全身性エリテマトーデスの治療が始まってから、
その治療の要となる免疫抑制剤との兼ね合いで、薬を飲まなくてよくなるその日まで、グレープフルーツについては禁止されてしまいました。グレープフルーツは成分の力が強すぎるので、香りであっても避けてくださいねと言われました。むぅ・・

それでも、ちょっとだけ救われたのは、その治療が始まる前日、
病院に見舞いに来てくれていた祖母から「何か食べたいものがあるか」と聞かれ、
迷いなく「グレープフルーツ」と応えていたことで、禁止される直前に食べることができていた為、いがいと我慢もできるものです。

そう思えるくらいに、大病の治療が始まる直前までの、固形物が一切食べられなかった時のことを思うと、全ての食べ物に対して、美味しく食べることができていることへの感謝があります。食べられるって本当に素晴らしい。


ちなみに、願掛けなどで、「〜断ち」という事をする話を聞きますが、
僕にとっては、本気になって望めばそれほど苦ではないことだなぁと、
今まで思ってきていた訳です。が、その自信なんぞは簡単に折られてしまうくらいに、「好きな人に逢えない事」は辛いものですね。これは辛い。

死ぬほど愛した人が亡くなった時に、一度だけ感じたことのある凄まじい感情は、
この一生の中で一度くらいやろうなぁと思っていたのですがね。いやはや・・

私の為に注いでくださった想いは、より良い創作活動への源泉とさせていただきます。こうご期待!!