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AIにより生み出された余剰で、次に君は何デザイナーになるのか?

Figmaの大型アップデートが発表されましたね。
AIによる作業効率化、汎用性の高いUIキット、スライド作成機能、Devモードなど、クリエイティブのハードルを下げ他職種との共創を支援する機能が目白押しでした。
これらの新機能は、間違いなく

  1. 既存のデザイナーの仕事を圧倒的に楽にする

  2. 他の職種がデザイナーの仕事を気軽に実行しやすくなる

ことを示しています。

これらによって自分たちの仕事はより効率化される一方で、効率化されて浮いた時間やリソースをどこに投下するか?をまだ決めていないデザイナーが多いのではないでしょうか?

これらの輝かしい新機能を啓蒙する旗手になることで短期的に注目を浴びることができる一方で、中長期では誰でもできる仕事が増え、多職種とのコラボレーションが進み、「何者でもない」デザイナーを量産してしまう毒にもなり得るのではないかと危惧しています。

AIによって得た余剰時間を使ってあなたは次に何をクリエイトするべきか、真剣に考えるときが来たのかもしれません。

非常に直感的なfigmaのTone Dial、テキストのトーンを調整できる

共創の罠、「何者でもない」デザイナーになるな

この数年は、共創・コラボレーション・越境という言葉がムーブメントになり、これまで閉ざされていることの多かったデザイナーの仕事の聖域化の緩和が進みました。
一方で、皆の意見を集約することや、ユーザーの声を聞くことに過剰に傾倒し、「自分で決めない」意思のないデザイン活動も増えてしまったように感じます。
AIを活用したコラボレーション・ツールの加速的進化において、より意思なく簡単にモノが作れるようになり、この流れは加速していくでしょう。

様々な声やセオリーを集約し、合理的に物事を判断することは他者に反対されにくく、一見してロジカルで客観的に自分の意見を通しやすい側面があります。

このような誰がやっても同じ結論になる合理的な意思決定こそAIが得意とするところです
ガイドラインに沿ったデザイン、すでに実績のあるUI、わかりきったUXのセオリー…そういったものはこのAIの時代にどんどんと効率化が進んでいます。
つまり人間がやることが少なくなっていきます。

そんな中、社会で求められていく仕事は人間だからできるある意味非合理でアートな意思決定だと考えています。
しかし業界の常識を打ち破るようなアートな意思決定は非合理に満ちていて反論が行いやすく、それを押し通すには強い主観の意思の力が必要です。

ですが「あなたはどうしたいのか?」という問に、自分の意志で答えるエゴイズムにこそ、あなたのデザイナーとしての仕事が残されているのではないかと感じています。

AIでアウトプットのハードルが下がっていく中で、
どう作るか?」ではなく、「何を創りたいか?」に、よりコストが集中していくのではないでしょうか?という予想です。

どう作るか?ではなく。何を創りたいか?

過去の正解は一瞬で古くなる

昨今のAI生成の進化は本当に加速度的です。
これまで誰も体験したことのないような速度で進化が続いています。
問題は、これらのAIが過去の正解を常に高速に学習しながらアウトプットをしているということです。

これまでデザイナーは過去の事例や教科書からセオリーやハウツーを学ぶことで、与えられた要求下で最適解を出す能力を伸ばしていきました。
サイトの制作事例サイトや、Appleなどの出す様々なガイドライン、先人が検証した成功・失敗の知見などを元に、与えられた要求から最適なアウトプットを出す能力です。
その能力が今まさにAIに勝てなくなる瞬間がすぐそこまで来ています。

生成AIのClaudeには、瞬間的にUIやcodeを作成してプレビューされる機能が搭載されました。ここにはツール操作のセンスが必要とされず、正しい指示を出す力が求められています。

Claudeは対話形式でサイトを作成・アップデート可能

Figmaにも AIでUIを自動作成する機能がついに搭載されました。これまでは独立して存在していた各種AI生成ツールは取り回しに工夫が必要でしたが、通常作業で使われるツールに取り込まれることで真の効率性を発揮するようになっていくでしょう。

figmaもプロンプトからUIを作成可能に

プロフェッショナルなき越境は自分の首を真綿で締める

もしかするとAIによる業務の効率化は"今"シニアなデザイナーの勝ち逃げには効果的に作用するかもしれません。
なぜなら、作業者としての以外の強み、例えばビジネスマンとしての交渉スキルや、物事を抽象化して突破口を見つける思考力、人を動かす人心掌握術…等を強みにする、いわゆる"上流"と言われるデザイナーは人に頼らずその強みに集中することができるようになるからです。

いま特に気をつけるべきは、まだ強みを確立できてないジュニアや、ジェネラリストのデザイナーです。
過去、若手はツールのオペレーションを学ぶことで、シニアデザイナーのアシスタントを行うことができ、仕事を見て盗み順当に職位を上げることができました。
一方でデザインの教育を受けていなかったり、ツールの利用の学習コストを払えない他職種のメンバーは、制作物を依頼する以外にアウトプットする方法はありませんでした。

ところがAIの台頭により、アシスタント業務の総量は減り、他職種が学習コストなく作成できるアウトプットの上限も日に日に向上しています。

このような状況の中で、AI利用したツールを聞きかじり覚え、ただ他職種とコラボレーションしているようでは、特筆した強みのない者から共創の輪には不要になっていってしまいます
それがデザイナーとて安心できない状況になった、というのが今の現状です。

ここから先の未来のデザイナーは、自分の強みや軸を定めていくことから始めていかなければならないかもしれません。

もしAIを得意としようとするなら、ただツールのオペレーションに長けるだけではなく、それを独創的にハックする力をつける必要があるでしょう。
他職種との架け橋になるのであれば、ファシリテーションの力に特化しなければならないし、あえてこの時代にこそ自分にしかできないグラフィック表現を見出すというのも面白いでしょう。

何にせよ「自分がなんのプロフェッショナルであるか?」という問の重要性がどんどん増しています

悩める時間はそんなに長くないかもしれない…

AIで浮いた時間で、君は何のプロフェッショナルになるのか?

これだけコラボレーションのツールが進化し、働き方やマインドセットもクリエイティブな共創を伴う時代に変わってきています。それ自体は、もはや差別化ではなく、当たり前の品質として世の中に浸透していくことは間違いないでしょう。

一人ではできないことを共創で生み出す時代に突入しています。 そんな時代だからこそ、共創の輪に入るために逆説的に「自分が何の役割を果たすのか?」を真剣に考える必要があります

多様性の低いコワークはイノベーションを生み出しません。専門性の高い適切な対立と議論こそがイノベーションを生み出す源泉です。

幸いにも、世の中に溢れている知識や技能は一人で学ぶにはとても間に合わないほど多様性を見せています。
今こそあらためて、AIで浮いた時間をどこに投資し、何のプロフェッショナルを担っていくか?を真剣に考える必要があるのではないでしょうか?

デザイナーの皆さん、AIという新たな仲間を得て、私たちの仕事はこれからどう変わっていくのでしょうか。そして、その中であなたは次にどんな役割を担っていきたいですか?

追記:自分ならここに投資する!という記事を続編で執筆しました

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