2024年:AI時代のデザイナーに必要なキャリア形成予想
毎年書いているデザイナーのキャリア動向予想2024年verです。
今年はAI関連の知見を如何に集め、デザインに転換できるか?で明暗がくっきりと分かれるだろうなと思っています。
AIによるデザインの大きな変革に備える
2023年、AI技術の発展はデザイナーにとっても大きな影響を与えています。ジョン・マエダ氏の「Design in Tech Report 2023」によれば、AIの進化はデザイナーに新たな可能性を開くとされています。報告書では、AIが「デザイナーに創造性をより発揮する機会」を提供する未来を描いています。
そして、実際に8割のデザイナーが「AIによって仕事に変化が迫られる」と感じているそうです。
デザインの世界は常に新技術によって変わってきました。私がデザインを志した頃、多くのデザイナーは印刷会社での仕事が中心でした。
しかし、インターネットの出現により、ウェブやデジタルメディア制作が主流に。今では、パソコンだけでなく、スマートフォン中心のデザインにシフトしています。作るだけでなく、完成後の運用も重要になっています。
このような大きな変化ごとに、デザイナーは新しいスキルを身につけなければならず、それができない人たちは市場の変動に苦しむことになりました。
今、私たちはこれまでにない大きな変革の時を迎えているかもしれません。我々デザイナーは、時代の変化に適応し、常に準備をしておく必要があります。
AI対応における2023年の現場感
2023年は、私の経験に基づいて言うとすでに生成AIは既にビジネスへの実用化が進んでおり、実際に投資も集まってきていると強く感じます。
現在の状況は、まるで進化の爆発期であるカンブリア紀のようです。iPhoneが初期にアプリが登場した時期に似ています。
これからも、新しいビジネスでのAI活用に向けた挑戦が進むでしょう。
今回の変革で注目すべき点は、各国間での活用に関する知見の差がまだ小さいことです。
これは、AIが世界中で急速に広がっている証拠でもあります。以前のように海外の事例から学ぶことが難しくなり、世界中で同時に活用の試みが進んでいるため、私たちも新しい挑戦を続ける必要があるようです。
2024年のAI活用予想
2024年には、デザイン分野でAIの活用に関する知識がさらに体系化されるでしょう。手探りでのチャレンジが徐々に減り、企業は自社の試みから得た知識を蓄積し始めると思われます。
デザインにおける新技術の活用は、以下のようなフェーズを経ることが多いです。
試行錯誤:個人のアーリーアダプターがさまざまなことを試し始めます。
実証実験:先進的な企業が新技術を実際の事業に取り入れ、知識を蓄積していきます。
体系化:様々な企業で蓄積された知識が共有され、デザイン業界全体での一般的な理解や「正解」とされるものが形成されます。
職能化:その知識を持つ人々が特定の職種名を持ち始め、企業はそのような人材を求めて求人票を作成します。
よく似た例として、UXデザイナー職の流行り廃りがあります。
キャリア化が進むと、多くの人がその分野に興味を持ち、学ぶ人が増えます。
しかし、新しい考えが登場しキャリア化が進むと、その時点での参入は遅れていることが多いです。
新しい情報は、既に情報があるところに集まる傾向があるため、ゼロからの追い上げは困難です。
過去には「UXデザイナーになるにはどうしたら良いですか?」という質問が多くみられた時期がありましたが、その時は初学者まで情報は行き渡っていない状態でした。
そして、本や授業でカリキュラムが作られ、知識の取得が初学者にも容易になる頃には、UXデザイナーのスキルは既にコモディティ化し、特別なものではなく「皆のもの」となっています。
まさに諸行無常です。
AIに関しても、次の時代の最先端のキャリアを乗りこなしたいと思うのなら、今から準備を始めておく必要があります。
デザインにおいてAIを俯瞰する3つの観点
デザイナーとして見たとき、AIの活用は次の三つの観点から考えることができます。
ツールとしてのAI
インターフェースとしてのAI
サービスモデルとしてのAI
1. ツールとしてのAI
まずはAIを自身のデザイン作業支援のツールとして導入したパターンです。
AIをブレインストーミングのパートナーとして使ったり、落書きからUIを自動生成するなど、直接的な作業アシスタント任せることができます。現在、最も注目されているのはこの分野です。このツールの進化には必ず適応する必要があるでしょう。
一方で、これまでチームで行っていた仕事の一部がツールとしてのAIによって代替される可能性があります。
従来、チームでのアイデア出しは多様な視点からの発想や意外なアイデアを生むメリットがありましたが、AIがチームを上回る多様性を提供するかもしれません。
要するに、より個人でできることが増え、作業効率が向上しますが、近年デザイナーの中で重要視されていたファシリテーションやワークショップ管理、また分析・リサーチの一部などの業務が代替される可能性があります。
これまでデザインにおいてはコワークの重要性が強調されてきましたが、AIツールの支援を受けることで、逆にクラフトマンシップを要するような作り込みの仕事が再注目されるという逆転現象が起きるかもしれません。
▼フレームワークの準備だけではなく、アイデアの創出も可能に
▼手書きからアプリを作成可能に
2.インターフェースとしてのAI
次に、AIをユーザーインターフェースとして活用する観点です。
AIによる自然言語処理の進化により、アプリケーションのUIは従来とは全く異なる選択肢を提供できるようになりました。
これにより、多くのサービスのインターフェースが今年一気にリデザインされる可能性があります。
例として、旅行予約サイトでは、好みに合うカテゴリを探したり複雑な条件入力をせずとも、対話を通じてユーザー好みの結果を得られるようになります。
また、サービスのヘルプページでは、辞書のように複雑な用語集を参照せずとも、直接質問に対する回答を得られるようになります。
人間にとって最も直感的なコミュニケーション手段は対話です。
AIを用いて対話型のインターフェースが導入可能になると、従来の機械に合わせたフォーム状のインターフェースは減少していくでしょう。
あなたが担当するサイトにおいても、「AIの存在を考慮した場合、これが最適なインターフェースなのか?」という問いを新たに投げかける必要があります。
▼旅行のプラン作成と生成AIは相性が抜群に良い
▼ノーコードでGPTを利用したヘルプチャットがサイトに導入できる
3.サービスモデルとしてのAI
2.では既存のサービスをもとにAIを活用し体験を高める話をしましたが、ここでは「AIが可能にする新しいサービス価値提供」に焦点を当てたいと思います。
最も大きな可能性は、これまで「人間にしか提供できなかった価値」と「システムにしか提供できなかった価値」の境界線があいまいになり、新しい体験が生まれることです。
人間ならではの柔軟な対応と文脈理解、システムならではの広範な提案力の間には新たな可能性が存在しています。
例えば、英会話学習においては、これまで静的なテキスト学習か人間の教師の二択が主な選択肢でしたが、AIが人間に近いコーチングを提供出来るようになり。
時間や相手の機嫌や都合にとらわれずとも。まるで人間と話しているように英会話を学ぶ。という新たな体験の選択肢が生まれました。
UXデザイナーは、AIによって次にどのような新しい体験が可能になるのかを考える必要があります。
▼人間と会話しているような英会話学習体験
▼「手のひらの秘書」という新しい価値提案
2024年:AIを活用し、意思決定の仕事を増やす
最低限の能力としてAI活用の選択肢を持たず正しいインターフェースを設計したり、新しい価値を生み出したりすることが難しくなる時代が迫っています。
一方で2024年以降もしばらくの間、意思決定はデザイナーの重要な業務として残るでしょう。
自身の仕事をアイデア出しや情報整理に留めること無く、意思決定の作業を増やしていきましょう。
まず今年行うべきことは以下の通りです。
自身の業務に積極的にAIを取り入れてみる
新たなAI活用事例を追跡し、学ぶ
インターフェース提供方法の前提を再検討する
過渡期には情報があるところに新しい情報が集中する傾向があります。
この時期にデザイナーとして存在感を示すためには、情報を吸引する力を持つことが重要です。
AI活用を選択肢として持つことで、サービス設計やUI設計における意思決定の質を高めることが、2024年以降のデザイナーのキャリア形成において重要になるでしょう。
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