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NPO・社会的起業って善いことですか?

僕は今年で25周年を迎えたNPOの代表ですが、いつからか言われるようになった「社会的起業」という表現に、ちょっと過剰なものを感じています。そもそも、NPOの活動や社会的起業ってそんなに善いことなのでしょうか?

社会を支える無意識の社会貢献

NPOや社会的起業など、「社会貢献」を掲げた活動や組織体があります。利益を目的とするのではなく社会貢献を目的とするという点で、一般企業とは異なります。

でも、普通の会社だって、社会課題を解決しています。「営利目的だ」と言えばその通りなのですが、営利「だけ」を目的としているとは限りません。むしろ、誰かの課題を解決しているから商売になっているわけです。

大企業が300円台で牛丼や蕎麦を提供したり、低価格で良質な衣類を提供したりすることで、多くの人が助けられています。もちろん、そうしたサービスの背景に搾取的な労働が隠れている場合もありますから、評価には注意が必要です。

とはいえ、一般企業で働く人たちも、社会貢献をしているのです。自覚していない人も多いでしょうが、労働は社会を支えています。納税そのものは「義務」ですが、同時に社会への貢献であると言えるでしょう。

括弧付きの「ザ・社会貢献」

おそろいのTシャツをきて大勢で一斉に公園を清掃すれば、公園がきれいになるだけでなく地域社会へのインパクトもあります。公園をきれいに使おうという意識が向上するかもしれません。もちろん、こうした活動には価値があります。いわば、括弧付きの「社会貢献」です。

一方で、誰にも知られず、個人的に家の近くの公園の掃除をしている人たちがいます。勝手にやっているため彼らはあまり知られていませんが、それが地域貢献であることは疑いようがありません。

どっちが上とか下とかじゃない──そう思いませんか?

でも、前者は自治体の首長から表彰されたり、新聞に取材されたりします。後者を目立ちませんし、そもそも自分の日課を地域貢献だと考えていないかもしれません。

無意識の社会貢献って、じつはたくさんあるんです。

「正しい側にいる」と考えたら負け

社会課題を政府や地方自治体だけが解決してくれる時代は終わりました。民間の、一人ひとりの力で解決していく時代が来ています。そうした大きな流れのなかで、近年は括弧付きの「社会貢献活動」がまつり上げられる傾向が顕著です。

でも、ここまでで述べてきた通り、NPOで活動するにせよ社会起業家を自認する人にせよ、自分のしていることを「正しい」と思い込んでしまわないことは、とても大切なのではないでしょうか。考えることをやめてはダメです。

括弧付きの「社会貢献業界」の中で世間知らずにならず、広い視野を持つ。人知れず行われている有形・無形の活動に敬意を払う。そうした鋭敏な感性と客観的な視点が、これからの活動者には必要です。

社会を善と悪に分けて、「自分は善の側にいる」と考える。だれにとっても、とても危険なことです。

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