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マシンは考える

先日、イギリスの新しい50ポンド紙幣の肖像にアラン・チューリングが採用されることが、イングランド銀行総裁から発表された。

「アラン・チューリングは傑出した数学者で、その業績は現在の私たちの暮らしに巨大な影響を与えた」

「コンピューター科学や人工知能(AI)の父として、そして戦争の英雄として、アラン・チューリングの貢献は、多岐にわたる画期的なものだった。現代の大勢が、その恩恵を受けている偉人だ」


2014年には、第二次世界大戦中にエニグマ暗号の解読に取り組んだイギリスの暗号解読者アラン・チューリングの物語、
イミテーション・ゲーム / エニグマと天才数学者の秘密 が公開された(日本では2015年公開)。

この映画には、チューリングテストを彷彿とさせるシーンがある。

マシンは思考するのか、人間のように考えられるのか?と刑事に問われたチューリングは答える。

「マシンは人間のように考えたりしない マシンは人間とは違うふうに考える」

違うふうに考えるというのは、考えていないことなのだろうか。
人間はそれぞれ違いがあることは、誰もが認めている。ではなぜ違いが生じるのか。

「それぞれの脳がちがうふうに働いて 違う考え方をするからだ」
「人間がそうなら ワイヤーや鋼でできた脳にも同じことが言えるはずだ」

チューリングテストは、人工知能に関する議論で聞いたことがある人も多いのではないかと思う。
このテストは、ある機械が知的かどうかを判定するためのもので、まず人間の判定者が別の人間と機械に対して会話を行う。判定者が人間と機械との確実な区別ができなかった場合、”その機械が思考していると言える”というものである。

このテストでは、マシンが知的かどうかを判定しているが、どのように思考しているかの過程には注目していない。
マシンは人間とは違うふうに考えると言ったチューリングは、
”違うふうに考えるというのは、考えていないことなのか?” と問う。

もし、人間のようには考えていないならマシンは考えているとは言えない、というのならば、知的であるということの本質は何だろうか。
マシンが知的であるかどうかと、マシンは思考するかどうかは、何が違うのだろう。


Google DeepMindによって開発されたAlphaGoは、2015年にプロ棋士を破った。AlphaGoにはニューラルネットワークの技術が使われている。

このマシンは、人間のプロに勝利するほど知的だ。
しかし、おそらくマシンは人間とは違うふうに考えているだろう。

マシンは何を思いながら、その碁盤に置く石を決めるのだろう、と思った。

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