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顧客のとらえかたのとらえかた

【前回のお話】
・STP(とくにSとT)が古くもない:顧客の絞り込みはいまも大切
・だが、その方法には工夫が必要
・顧客を見分けるさいは、顧客がどう「とらえている」のかを基準にする(感情/体験/認識を理解)

今回は、顧客の目線をどうやって理解するか、おもにアンケート調査などの定量データをつかって顧客の「とらえかた」理解を深める方法論を例として紹介する(あくまでもひとつの例)

心がみえたら、かった(勝った/買った)も同然

ひとの心のなかをのぞくのはむずかしい。ほんとうに、むずかしい。
たとえば恋人どうし、夫婦、親子、親友でも、相手のことをほんとうに理解していると自信をもって明言できるひとがどのぐらいいるだろう。

マーケティングでは、そうはいってもビジネス上の関係を問題にするので、男女関係ほどの心の機微を追うということにはならないわけだが、それでもほかの誰かがどんなことを思っているかを知るのはとても難易度が高いことは誰でも想像できるだろう。

マーケティングの一側面は、思考が科学的またはシステマチックだという点にもあると思う。
まあ、それは組織で客観的な情報が重視されるという意味でマーケに限らずビジネス全般にいえることかもしれない。
定量データや客観性の高い情報が重宝されることは、顧客理解において顧客の心理をのぞいたり、顧客になりきって心情や認識のレベルでとらえることの難しさに輪をかけている。
(前回話題にあげた「雑なターゲティング」が根強いことの一因でもあると思う)

VOC あるいは うわべだけ?の理解

ところで、顧客の声をひろえとか、やれVOCだとか、社内でいわれたことはないだろうか。いぇ、ぜんぜんわるいことではない。マーケティングの目線でも、きわめてまっとうなお話で。
で、けっきょくアンケートをとってそれで終わってしまうことなんかもままあるかと思う。

むろん、アンケートもすばらしい取り組みであることも違いない。
ただ往々にしてあるのが、「〇〇(商品)を買いたいと思いますか」「満足していますか」のように直接的にしりたいことをきくだけになってしまっておわり、というパターン。
こうしたケースでは、社内での報告も「76%の支持を得ました!」といったもので、周到に企画・計画を〈とおす〉ために使われることがおおい。

社内説得やローンチが最終目的で、これでそれは達したというのなら、なにもそれに文句をつけるつもりはない。ただここでは、そのようにマーケットをざっくりとひとまとめにして顧客の声を「傾聴」してもうまくいかない、ということ、また〈30代独身男性・中間所得層〉のような顧客の決めかたをしてもやはり的を射た企画や戦略にたどりつかない、ということがこの時代の常で、もっと顧客の目線や心理をとらえて考えていかなければならない。
そうした状況の理解にたって、具体的にどんな方法、どんな手順で顧客理解を深めていけるだろうかという例を紹介してみたい。

アンケートを使ってセグメンテーションをやってみる

統計解析の手法を使いセグメンテーションを行う方法(例)
・単刀直入ではない〈幅広〉な質問を設ける
・因子分析/主成分分析で〈顧客目線〉を知る材料を得る
・クラスター分析で顧客をグルーピングしてみる
・けっきょく、仮説がだいじって話にオチてしまうのだが... w

アンケートを使ったマーケティングの検討を例示すると、

さっきあげたような、企業目線でつまるところ知りたいと思う、単刀直入な質問(だけ)ではなく、もう少し広い視野をもって顧客へ質問していく。

〈単刀直入〉質問をすること自体は、なんの問題もない。ただ、それだけに終始するとけっきょくあまり発見が浮かび上がってこず、それは問題だ。
最終的にききたい質問への回答にもとうぜん濃淡が出る。その差がどこから出てきているのか、見極めるための情報をあわせてとっておかないと理解が深まらない。そのための情報源を質問として織りこんでおくという論法だ。

回答結果(顧客の意見)を全体一律ではなく、分割し比較してみる。
その比較から結果の背景にある要因や原因を推察していくというのが、定量的なデータの分析で基本中の基本となる。
その分割軸を、デモグラフィック(年齢とか性別とか職業とか地域とか…)な顧客属性だけでなく、ライフスタイルや行動パターン、価値観、センス、などを軸にできないかという方法論が、かなり以前からいろいろ試行錯誤、蓄積されてきている。

ここでは顧客の意識やとらえかたを把握するための方法として「因子分析」という解析を使ったものを紹介する。
まず、顧客のタイプ分け(ひいてはターゲットの絞りこみ)に使えそうな〈切り口〉を仮定してみる。ここで、精度が高くなくてもなんらかの仮説はやはり必要になってくる。はじめは直感や体験をもとに、自信はなくても構わない。情報収集や分析、試行錯誤をくりかえして、だんだんと精度アップをはかっていく姿勢で検討をすすめていく。

家電製品を例にとって、セグメンテーションをおこなうためのアンケート(→分析へ)をいっしょに考えてみよう。

アンケートということで具体的な質問に落とし込んでいく。そのさい直接的な商品やその購入に関する質問ではなく、知りたい顧客の認識や意見、行動についてなど、ぱっと見には間接的にも思えるかもしれない質問項目を幅広に出していく。

 ▷ 製品選びでは、必ず専門家の意見を直接聞くことにしている
 ▷ 家電には機能よりもインテリアとしてのデザインにこだわりがある
 ▷ 家の中に置くモノはできるだけ少なく、最小限に留めたい
 ▷ 製品がどのメーカー・ブランドのものかを重視している
 ▷ 新製品情報を自分でいろいろ調べるのは楽しい
 ▷ 実際に使用した人のレビューコメントを購入前に確認する
 ▷ 見ず知らずの人よりも、身近な人の意見を聞くようにしている
 ▷ モノ選びには、自分の価値観が色濃く反映されると思う
 ▷ 高価な製品を所有することに高揚感を覚える
 ▷ 「シンプルライフ」に憧れる
 ▷ 製品がどのぐらい環境・エコに配慮したものかに強い関心がある
 ▷ 家電は人生を豊かなものにしてくれる
 ▷ 自分の情報感度は最も高い層に属すると思う
 ▷ ファッションセンスには自信がある
 ▷ 自分磨きのための投資を普段から怠らないようにしている
 ▷ ・・・

などなど、あげだせばキリがないのだが、はじめは思いつくかぎり数おおく出してみるのがいいだろう。たが、実際にアンケートですべてをきくことはできないので絞り込まなければならない。そのときに必要になってくるのが先ほどもあげた〈切り口〉ということになる。仮説といってもいい。

顧客視点に徹することを目指しながら、じぶんで決める切り口、仮説に範囲を狭めるというのは自家撞着のようだが、実践ではイタシカタないところもある。また、検討、考察のレンジを的確におくためには、繰り返しや蓄積が欠かせない。アンケート(定量調査)の限界もあるのでインタビューや観察(定性、質的調査)も駆使して、鋭い着眼をもつことを目指していく必要もやはりある。

そのうえで、アンケート(分析)によって理解を深めたい顧客意識の分野をあるていど絞り込む。また、「こんな志向のひとがいるのではないか?」「このようなタイプにリーチできれば強く気にいってもらえるのでは?」といった仮説をたてて、それが正しいかどうかを確かめるうえで関係しそうな領域を、あえて振れ幅をもたせて、すこしずつズラした感じで、質問項目を決めていこう。
そんなぶらすようなことをするのは〈顧客目線〉を分析の段階でとりいれていこうとしているからだ。仮説は不可欠だが、過信にならないように慎重に考えもする、という感じだ。仮説が正しいかを、顧客にYes / Noで直接きくのではなく、周辺の関連する観点も意見をとり、とらえかたのちょっとしたずれも拾っていく姿勢で質問内容を組みたてていく。
このとき、分析でどんなことをするのかがイメージできていないとなかなか具体化しづらいと思うので、以降はそこを紹介しよう。

さきほどあげたような(そこから絞りこんだ)質問を、〈非常に当てはまる 〜 まったく当てはまらない〉 〈そう思う 〜 そうは思わない〉といった段階質問(5段階、10点満点の11段階などがおおい)としてきいていく。
YesかNoかの選択型ではなく、段階的なききかたにしておくのは、回答結果を数値情報にみたてて分析の処理をするため。複数項目からあてはまるものをえらぶような選択式にすると、回答で得られる情報が〈0か1か〉のようになってしまい統計処理上の自由度がさがってしまうので、できれば〈程度〉がわかるような質問のしかたにしておく。

こうした項目をたとえば20問ほど、バリエーションをもたせて質問する。
その回答結果に統計処理(解析)をくわえ、顧客が関連テーマにどのような〈とらえかた〉や〈目線〉をもっているのかをよみとっていく。
具体的には、回答結果を「因子分析」や「主成分分析」という解析(多変量解析)にかけ、解析結果から〈意味あい〉を考察しよみとるという手続きをふみます。

(統計学の正確な用語にはこだわらず、できるだけイメージしやすいようにするつもりで“丸く”書くが)

上記の例でいえば20個の質問に、1,000人の回答者からそれぞれ5段階の回答を得たとして、AさんはQ1が「どちらとも言えない」、Q2が「まったく当てはまらない」、Q3が…、BさんはQ1が…、Cさんは…という調子で1,000人の意見がわかったとしてもけっきょくどういうことか、さっぱりわからない w

また、質問ごとに情報を要約してみて、Q1は5点満点中の平均点が4.4、Q2は3.9、Q3は…のようにしてみても、20問もあるとそこから傾向や意味あいをくみとるのはやはりむずかしい。
じぶんで20問も質問するからよけいややこしくなるのだが、この、せっかく20の観点で意見をとった情報をできるだけ損ねることなく、もっと要約したかたちで読みとくことはできないだろうか。

統計学の叡智もちょっと拝借し、それを叶えてくれるのが因子分析や主成分分析だ。
この2つの分析は、数おおくの種類の情報(変数)をもっと少ない数の要素に〈まとめ〉をしてくれるとイメージしてもらうといい。

2つの分析は結果をもとめる計算処理の方向性がちがい、結果の〈まとめ〉かたもすこしちがうのだが、分析の種類としては親戚のようなものだ。

因子分析は、回答結果に共通性があれば、その背景で共通の要因(因子)がはたらいていると考えて、その共通の要因を探索するように解析していく。

対して主成分分析は、回答結果の出かたにどんな共通性があらわれているか、結果を〈まとめ〉するイメージで計算処理をしてくれる。

じっさいは因子分析にかけてみて、解析結果がおもわしくないときに主成分分析もためしてみる、というかんじに進めることがおおいが、ここでは詳細は割愛する。

【つづく...】

※ まだ、記事の内容のうちとても中途半端なところまでだが、とてもながくなってきてしまったので、一度ここでアップさせていただきます。つづきはおいおい追記か、別記事にするかたちで掲載させていただきます。

m(_ _)m
(後日この記事の内容が更新されるかもしれませんが、ご容赦ください)

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