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心が風邪を引いている #日記16

それは前触れなく唐突にやって来る。

目覚めた瞬間から泣きたい気分になっている朝、というものが皆さんにもおありだろうか。そばにいる人からしたらどう接していいかわからず困るだろうなと思うけど、私自身もなぜこんなことになっているのか未だにわからず困惑している。なんなら起き抜けにひと泣きしてからフツーの顔して電車に乗り込んだりしている。きっとそういう人は意外といるんじゃないかなって思っているのですが、どうなんでしょうか。

大人になるうえで大切なことの一つに「自分の機嫌を良くする術を身につける」ということがあると思う。嫌なことがあったり、ちょっとした体調の変化だったり、人は(というと主語が大きすぎますかね)何かの拍子に簡単に不調に陥る。しかしながら、それでも日々は続く。きょう一日を出来るだけ健やかに機嫌よく過ごすためにはどうすればいいのか、ということを知っていれば、少し調子が悪くても比較的いつも通りにいられる。つまりはライフハックだ。

そういうことを本気で考えるようになったのは社会人になってからのこと。大学生の頃は不真面目だったので「もうダメ」と心が訴えたら「わかりました」って感じでワンルームのベッドでダメになっていた。さすがに毎回ではないものの、なんか無理だなと思ったときは割と休息に時間を充てていたのだった。

とはいえ社会人になればそう簡単に仕事を休むわけにもいかんだろう。というプレッシャーを勝手に感じはじめ、半ば必要に迫られる形で「セルフご機嫌取りプラン」を探しては試す日々がやって来たのだった。

私の場合は、
・気に入った入浴剤を入れた湯船にゆっくり浸かる
・好きな音楽を爆音で聴く
・コンビニで好きなだけ食糧を買い込み、満足するまで食べる
・一人で行きつけのバーに行き、お客さんと話しながら酒を飲む
・ドラッグストアでコスメを買い漁る
・食べたい料理を作りまくる
・とにかく寝る

ぱっと思いつくところでいうと、こんな感じだろうか。時折不健康なものもあるがそこは一旦無視していただくとして…。

昨日は、岩渕宏美さんの連載エッセイを読みながらそんなことをぼんやり考えていたのだった。

エッセイの中では確か、坂口恭平さんの「苦しい時は電話して」が紹介されていた。その坂口さんの言葉だったか、「死にたい気持ちになるときは、心が風邪を引いているようなもの」というような一文があった。

「機嫌よく過ごす」というのは、社会人として周りに迷惑をかけないためという側面もあるが、自分にとっても気持ちのいいことだと思う。ずっとイライラしながらごはんを食べても味が分かる気がしないし、落ち込んだまま仕事をしても捗らない。

とはいえ、そういうスキルを磨くのと同時に「もうダメ」という声に耳を傾けることも大切だよなと当たり前ながら再認識した。

そもそも冒頭のライフハックについて「大人になるうえで」と無意識的に思っているのは、社会人になったら人様に迷惑をかけてはならん、自分のことは自分一人で責任を負っていくもの、との思考が強いからだと思う。でもそういう観点で日々機嫌をとっているとしたら、それは「機嫌よく過ごすためのスキル」ではなく「無理して心身を酷使するためのスキル」でしかない。

一昨日は、胸の辺りのざわつきを感じて無性に泣きたい朝だった。いま思えば、あれは風邪の症状だったのだろう。今週末は家でじっとして過ごすことに決めた。温かいスープを仕込んで、毛布にくるまりながら飲むというのはどうだろう。なかなかいい案ではないかしら。

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