見出し画像

香港(トーキョー、パリ、そしてインド)旅行/【文章のきほんコース受講生作品 Vol.3】

この文章は、大阪編集教室の「文章のきほんコース」受講生作品です。
課題原稿に添削が入って書き直したものを、一部編集した文章になります。
詳しい授業の内容はこちらからご確認ください。

今回の課題のテーマは「自分の好きなコト・モノ」でした。

香港(トーキョー、パリ、そしてインド)旅行

「コンニチハ!ヤスイヘヤ!キンイロトケイ!ハッパハッパ……」。あらゆる勧誘をいなすため、一気に身体に力が入る。年季の入った建物に、やたらとギラギラした看板がそこかしこについている。多種多様な人種がひしめき合っており、中でもインド系の人々が熱心に客引きしている。

ここは香港。人通りの多いネイザンロードの中でも、特に人だかりが目立つ場所がある。九龍島に立つ巨大複合ビル「重慶大厦(チョンキンマンション)」の入り口だ。

かつて香港には「九龍城」と呼ばれる巨大スラムがあった。九龍城は香港の中国返還後に解体。行き場を失った人々が移り住んだ場所の一つが、重慶大厦だ。現在は17階建てで、その大部分を格安ホテルが占めている。違法に増築が繰り返されるその構造は、まさに迷路のよう。1階にはレートのいい両替商と、いつ作ったのかわからないカレーが陳列するインド料理屋が軒を連ねる。どうやらうまいと評判らしい。全然食べる気がしない。

初めて香港に行った時、とにかく安く泊まるために予約したホテルが、このマンションの中にあった。1泊2000円。しかしマンション内にはホテルが無数にあり、全く見つからない。誰に聞いても「そんなところは知らない。それよりオレのホテルは最高だ」と、この調子である。みわたせば、「トーキョーホテル」に「上海ホテル」、「NYC ホテル」に「パリホテル」。どこも各国を代表するホテルではないか! しかし何かがおかしい。客引きはみんなインド人だ。「もうここどこなん、インドなん?」といった感じだ。

結局、予約のホテルは見つからず、うながされるがまま「ハッピーホテル」に泊まることに。受付のおばはんいわく、旅行者のバイブルである沢木耕太郎の「深夜特急」で本人が泊まったホテルなのだとか。本当か? 部屋には窓がなく、トイレなのか風呂場なのかよくわからないスペースがあり、ベッドにはいつ洗ったのかもわからない染みのついたシーツがのっている。さすがは沢木氏が泊まったホテルだ。全然リピートする気がしない。


地元民と食べる飲茶、ビクトリアピークから望む100万ドルの夜景、はたまた香港ディズニーランド! 香港の楽しみ方は、数えきれない。

しかし私は、香港初上陸の友人がいると決まって、「高いレートで両替できる場所がある」と、マンションに直行する。告知なしのあらゆる勧誘に耐える引きつった顔を見るのが、香港旅行最大の楽しみなのだ。そこでは、強烈なインド……いや、カオスを感じることができる。マンションに行った際は、1階のカレーの感想を是非とも聞かせてほしい。

【大阪編集教室では、受講生を募集しています!】
これから文章を学び始めたい人・みっちりと学びたい人・発想力を鍛えて面白いネタ探しがしたい人……。いろいろなニーズに応えるコースがありますので、下記HPより詳細をご確認ください!