見出し画像

映画「LAMB/ラム」感想 人間の欲望×羊の子供×ホラーかヒューマンドラマか

ホラーになっているが、どちらかというとファンタジーに近い。かなりグロい作品かと思いきや、人間の欲望や夢があり、それが叶ったときの様子が見事に表現されていた。ホラー要素はラストに分かる半羊人というべき存在に対してだろう。大半がクレアとイングヴァルの生活、さらに生まれた命であるアダとの暮らしが表現されている。アダは頭が羊で身体の大半が人間という存在だ。子供を失った二人はアダを自分達の子供と思い育てていく。正直な話、当たり前のようにアダと生活するのは違和感があった。イングヴァルの弟のペートゥルも同じで、アダを手に掛けようとする。しかし、情が移り一緒に生活するようになる。兄の子供だからこそか。最初は、マリアがアダを奪おうとするものを次々に手にかけるかと思った。アダの生みの親である羊を撃ち殺してからはいよいよかと、身構えながら鑑賞した。また、ペートゥルも撃たれると思っていたので、普通に帰ったのは安心と同時に映画の方向性が見えた瞬間だ。アダはマリアたち以外が見たら、確実に捕らえられ、それを追うマリアの凄惨な戦いかもと予想はしたが全然違う。ハッキリ言って、マリア、イングヴァル、アダの日常を詳しく移し、人間の営みを見せてくれる映画である。ゆったりとした日常。しかし、マリアがアダの母親羊を撃ち殺してからは、事態が急転していく。家の中で、共に暮らすことはできなかったのか。そうすれば、ビターエンドくらいにはなったかもしれない。

あと、マリア達は、アダと暮らしていく中で安心して、アダの行動を注視しなくなるのが気になった。スポーツの試合に熱中して、アダが外に出たのに気づかない。何かあるかもしれないのに。ラストに出てくる謎の存在もあるのに。演出かもしれないが、大切なら熱中しすぎて子供を見失うというのはハラハラした。15プラスの年齢制限があったのは、グロではなく、夫婦生活の表現がリアルからだった。ラストまで、いつマリア達が襲われるかハラハラしていたのだが、そのシーンを観て納得してしまった。ホラーよりも、ヒューマンドラマに近い印象だ。

この記事が参加している募集

#おすすめ名作映画

8,199件

#映画感想文

67,333件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?