Kindle unlimtedのおすすめ:『お江戸の「都市伝説」』

  お江戸の「都市伝説」というタイトル通り、江戸での、つまり江戸時代の東京(つまりは江戸だが。ややこしいな)のあたりで流布していたらしい、いわゆる「都市伝説」を取り扱った内容だ。前に旧日本軍の怪談話も取り上げたが、これも同様の物だ。都市伝説と怪談との線引きは有って無いような物、あるいははっきりとした線引きのある物ではない。このような意味では、本書には妖怪や幽霊の類、ポルターガイストに近いような超常現象などが現われる。こうした細かい点に目を向けるのであれば、都市伝説というよりかはオカルトに近い。
 こうしたオカルトというか、幽霊話は語られる舞台の文化との関係が密接であり、それら文化が垣間見える点が面白いし、何よりたった200年も前の話であるの点には注目してみたい。物によっては300年以上前の物もあるが、文化の断絶と連続を意識してみると面白いのではないだろうか。例えば河童や天狗。これらがさも当然であるかのように登場するし、原因として妥当であると受け止められている。現代のこうしたオカルト話で、河童や天狗の代わりに出てくるのはどういった存在か、というあたりを比較するとまあ天狗や河童は出てこない。が、異形の化け物は共通して現れていたりする。
  話と関係が深いとは言えないが、挿絵もなかなか気合が入っている。こちらも見どころ。

  当時の風景を想像するという意味では、『お江戸の意外な商売事情 リサイクル業からファストフードまで』が役立つ。今から考えてみれば訳の分からん仕事がありふれていたが、そうした仕事は需要があるから成立した訳で、生活の一部として存在していた事になる。今ある仕事も、100年も後になってから考えてみると、相当訳の分からない、あるいは相当詐欺的な仕事であったと思われる物もあれば、100年後も今と変わらずに存在するであろう仕事が見えてくる。ような気がする。つまり、江戸の世にあり、平成、じゃなくて令和の世にもあるのであらば、まあ100年後もあるんじゃないの、という事だ。
 しかし、風景は違うだろう。『江戸の風景と人びと』を見てみるとわかるが、都市から一歩外に出ればどこも一面のクソ緑が広がっている。
 こうした地理的な視点から見る時にわかりやすいのが 『日本史の謎は「地形」で解ける【文明・文化篇】』だ。私はたまたまこれの前編に当たる『日本史の謎は「地形」で解ける』―こちらはkindle unlimited登録作品ではないが―ともども書籍版を購入して一度読んだ事があり、もちろん今もあるのだが、その時の興奮が蘇った。文明・文化編に楽しめたのであれば、是非購入しよう。 こちらは江戸という特定の時期と場所に留まらない「文明」それ自体の在り方や運命という物を提示している。これを読む前に『江戸の風景と人々』に一度目を通し、呼んだ後に再び目を通す、という見方をお勧めする。

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