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JORKERは後味スッキリ系映画だった(ネタバレなし)

ドット・フィリップス監督、ホアキン・フェニックス主演の「JORKER」を鑑賞してきました。

今年の映画賞を総ナメにすること間違いなしと大絶賛される理由がわかりました。ただ、私はちょっと違う見解です。物語には色々な描き方があって、それがまた議論を呼ぶから面白いのですが、私の感想は

「ズルい、見なきゃ良かった」でした。

ネタバレになるため、物語の詳細には極力踏み込まずに書きます。本作ではバットマンの宿敵であり極悪人の〝JORKER〟がいかにして生まれたのかが描かれています。

今回のJORKERでメガホンをとったのはドット・フィリップス監督ですが、私の中でジョーカーを強く印象づけたのはクリストファー・ノーラン監督の三部作の一つ「ダークナイト」に登場するジョーカーでした。何を考えてるのか全く読めない底知れぬ怖さがありました。そのため、物語もまったく先が読めない展開で進んでいき終始ドキドキしっぱなしのジェットコースターでした。

ダークナイトでジョーカーを演じた若き俳優ヒース・レジャーは急性薬物中毒により亡くなってしまいました。巷では「ジョーカー役にハマり過ぎて自殺してしまったのでは?」と噂されるほどでした。この噂はヒースの家族によって否定されていますが、ダークナイトファンの間では今でもまことしやかに語られている都市伝説となっています。

ヒース扮するダークナイトのジョーカーは、作品を通して、誰の中にも悪の心が存在し、いとも簡単に悪の道へと落ちることを様々なシーンで観客に見せつけ、問いかけてきます。

例えば、ゴッサムシティという街で悪と戦う検事、ハービー・デントという勇敢な男がいて、バットマンは陰ながら彼を支援しようとしますが、ジョーカーは彼を悪の道に引きずり込みます。

デントはジョーカーの仕掛けた罠によって最愛の女性を失い、顔と身体の半分が火傷で焼けただれた姿のツーフェイスという復讐の化け物に変わってしまいます。ジョーカーは単に人を殺めるのではなく、苦しめながら悪に変えていくのです。そのため、ジョーカーにとってバットマンは倒すべき存在ではなく、共存すべき存在だとしています。バッドマンが振りかざす「正義」を「悪」に陥れるために対極であるバットマンの存在を必要としているのです。その様を見せつけられ、私は大きな衝撃を受けました。

ダークナイトの作中には勧善懲悪なかつての正義の姿はなく、正義とは何か?について悩むバットマンがいます。それはまさにダークナイト(暗黒の世界)

一方でそんな世界をダークな存在になってでも守ろうとするバットマンも描かれていて、ダークナイト(暗黒の騎士)でもありました。

ヒース扮するジョーカーは、いつ何をしでかすかわからない底知れぬ怖さ、そして強靭な強さを持っていました。彼の強さはまごうことなき悪への衝動、確固たる悪への信念ゆえでした。それは、生まれながらの悪を思わせるものでした。

しかし、今回のドット・フィリップス監督が描いたJORKERは違いました。母を労わりながら暮らす、心根の優しい弱さを持つ男性でした。そんな彼がちょっとしたきっかけで悪のJORKERになっていくのです。ダークナイトでも本作でも、人はちょっとしたきっかけで悪になることを我々観客に突きつけてきます。その点は共通しますが、JORKERの描き方、キャラクターが全く違いました。

本作で描かれるJORKERはとても繊細で、弱い男でした。そんな弱さを持つJORKERの姿を見ていて、不覚にも涙しそうになる場面がいくつかありました。

「そんなのズルい。ジョーカーは生まれながらの生粋の極悪人であってほしかった」

本作は共感や感動を誘うヒューマンドラマです。だからこそ、多くの人を魅了し注目されているのだと思います。

クリストファー・ノーラン監督のダークナイトには全く何の救いもありませんでした。だからこそ、ジョーカーの怖さが引き立ち、後味が悪い食事をしたかのように喉元に苦みが残り続けました。しかし、その苦さは大人にとっては実に味わい深いものでした。

今回のドット・フィリップス監督のJORKERはR15に指定されており、鑑賞するのに年齢制限がかかっていますが、こちらは後味スッキリ系です。鑑賞後はスカッとした気持ちになります(あくまで個人的見解)

ダークナイトのほうが年齢制限をかけるべき救いのない映画、恐ろしいジョーカーでした。私の中ではジョーカーはあの恐ろしいジョーカーのままであってほしかったので、本作を見ないほうが良かったと思うほどでした。

ただ、本作を見てどのように感じるかは人それぞれだと思います。後味スッキリ系かどうかはご自身の目で確かめてみてください。

私は今回のJORKERを見て、家にあるDVDのバッドマンビギンズ、ダークナイト、ダークナイトライジングを見直したくなったのは言うまでもありません。

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