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4:20に芽生えた出来心、恐怖体験の話

お?と思った方はイキリ日本人かアウトローでしょうか。

google検索で”420”と調べると、一番最初に出てくるのはこんなwiki。

420、4:20若しくは4/20(フォー・トゥエンティ, four-twenty)は、大麻を表すスラング。(wiki引用


ということで初回noteはBAD TRIPについて。

初めのnoteがこんなモノでいいかと考えたが、誰もがしてない体験のほうが興味湧くかなと思ったので語らせていただく。


数年前、私はカナダへ留学した。

留学という大枠の体験については追々更新するとして、本noteではその際に体験した恐怖体験について書こうと思う。

※ちなみにこの話はフィクションなので、話半分に聞いてくだちい。

※前置きが長い場合は目次から”恐怖のはじまり”へ飛んでね。


ある韓国人との出会い

何の変哲もないカナダの語学学校に入学した私は、人種の偏りにたじろいでいた。

学生達の内訳はアジア人が70%で中東系が30%といった感じで、せっかく留学したのに”コレジャナイ感”たっぷりだったからだ。

「あ、これは英語学習に適した環境ではないな」と一瞬で思ってしまった私は、せめてもこの環境を最大限活用しよう、日本じゃできないことをしようと躍起になっていた。


私のホームステイ先のルームメイトは韓国人だった。

とても気さくな彼と私はすぐ仲良くなり、家から学校までほぼ一日中一緒にいるような仲になっていった。

幸か不幸か、そのせいで私は必然的に韓国人のグループに属すことになり

英語を使って韓国人に日本語を教えたり、韓国人から韓国語を無理やり教えられたりするという意味不明な留学ライフを過ごしていた。


そんな生活の中で私はリアム(仮名)という韓国人と親密になる。

韓国人グループの中で私と彼だけ喫煙者(※1)だったためだ。

彼は長身長髪のイケメンであり、物騒なタトゥーが見事に刻まれていた。留学した理由は「兵役に行きたくないから」であり、それを笑顔で語る彼はとても魅力的だった。

彼と出会ってからは、毎日のようにダウンタウン(※2)へ繰り出し酒を飲んだ。

ホームステイ先からダウンタウンまでは定期フェリーに乗らなければならないので、終電ならぬ終フェリー(※3)で帰り、煌びやかな街明かりが海に反射してゆらめく様をほろ酔いで眺めるのはとても気持ちの良いものだった。

画像1

(画像引用元:https://tabinaka.co.jp/magazine/articles/79789


”あるニオイ”に気付く

そんな生活を暫く続けていたところ、夜が更けてくるとあるニオイがすることに私は気付いた。


なんていうんだろう?

臭いんだけど、鼻をつまむほどではない。

タバコで言うとhi-liteのたま~に出くわす臭いやつ(共感してくれるでしょうか?)みたいな。


まあとにかく独特なニオイが街中から醸し出されるのだ。


そんな事を思っていたある日、リアムに何気ない会話の中で

「カナダって独特のニオイするよね」

と私が言うと、彼はキョトンとした顔で

? 大麻の匂いのこと?

と当たり前のように答えた。


そう言われた途端、

あぁそういえばカナダって大麻合法だったな。とかトレーラーパークボーイズ(※4)ってカナダが舞台だったっけ。とか色々なことを思い出して、すぐ合点がいった。


これが大麻の匂いなんだ!と納得した途端、私は当初に抱いていた日本じゃできなことをしようという気持ちが膨れ上がり、大麻を試してみたいという衝動に駆られるようになった。


宅飲みの誘い

留学生には珍しく(※5)リアムはホームステイではなく、彼と彼の兄、そして兄の友人の三人でマンションを借りて生活していた。


カナダ生活にも慣れてきたある日、私はホームステイマザーから外泊の許可を得た。

リアムが「宅飲みをしないか」と誘ってきたからだ。カナダのバーは日本の居酒屋とは違い24時間営業なんて概念はなく、大体日が変わる前には店を閉めてしまう。普段から飲み足りないなとぼやいていた彼は、朝まで飲み明かそうと提案してきた。別段断る理由もなかったので快諾した。

せっかくなら大人数で飲もうということになったので、それならばと私も学校で出会った日本人の女の子を誘った。


一応彼女の説明をしておくと、名前はあいこ(仮名)という。

裕福な家庭に育ち、クラブ通いの酒豪で、韓流好きが高じて韓国語はペラペラ。英語も覚えて将来はハイソなイケメンと結婚したい。

みたいな感じの女の子だ。

お酒が異常に好きであったことと、韓国語が喋れるということで彼女を誘った次第である。


私個人的には宅飲み~!とかタコパ~!とか大嫌いなタイプなのだが、当時の私は留学ハイのような状態に陥っており、男子校生活(※6)と理系大学では味わえなかった”アオハル笑”を取り戻そうとしていたのかもしれない。

ウキウキで酒を買い込み、その日が来るのを待っていた。


リアムの兄貴

語学学校が終わった私、リアム、あいこの三人は彼らが住むマンションに向かった。他の参加者は大学やらバイトやらで遅れてやってくるようだった。とりあえず乾杯をして、ちびちびやりながら待っていると他の参加者も少しずつ到着しだした。段々と盛り上がってきて、

ピンポン玉をカップに投げ入れてイッキ飲みする謎のゲームをしたり(ビアポンというらしい)

画像2

(画像引用元:https://giphy.com/gifs/abcnetwork-single-parents-abc-brad-garrett-2tTiXl0egJQX6j9HLl

大音量で音楽をかけたりと、さながら外国人のホームパーティーのようになっていった。アジア人しかいなかったが。


ちなみにこのビアポンというゲーム。何故か外人はめちゃくちゃ盛り上がる。

ピンポン玉をカップに入れるだけで人が波打つように笑う。
そんなに面白いかってくらい笑う。

萩本欽一が言っていた(※7)が、お笑い芸人は一生に一度くらいは会場が揺れる経験をするという。本当にウケた時は、お客さんが一斉に腹を抱えて笑うため、観客席がまるで波のようにグラグラ揺れるのだ。

それと同じくらい外人はビアポンで笑う。

笑えない自分の感性を疑ってしまう、ある種の恐怖体験だった。脱線してしまいまった、申し訳ない。



謎のゲームも終わり、飲み会も終盤に差し掛かった頃リアムの兄貴が帰宅した。

彼はオズワルド伊藤を極限まで浮浪者に近づけたような見た目をしており、一目で


あ、こいつヤバい。


と思わざるを得ない風貌をしていた。

画像3

(画像引用元:https://news.yahoo.co.jp/articles/3f2f06c94764668e8abce3aa4c795cccdc3f6ce4

この人物の髭と髪を三倍くらい伸ばして瘦せ細らせた感じ。


飲み会も終わりに近かったからか、彼の見た目がそうさせたのか。次第に雰囲気は盛り下がっていき、大勢いた参加者も次第にちらほら帰り始めた。

最終的に私、リアム、兄貴、あいこ、兄貴のルームメイトの5人になった頃、リアムの兄貴が私にこう囁いた。


「イイの持ってきたぞ」


恐怖のはじまり

実は以前リアムに質問したことがあった。大麻を吸ったことがあるか、と。彼は当たり前じゃんと言わんばかりにイエスと答え、興味があるのかと私に聞いてきた。興味があるし体験したいが、抵抗感と恐怖感があると素直に伝えると、彼は「そうか。」とただ一言返答した。

彼の兄は大麻愛用者だった。私が大麻に興味があることは宅飲み前に伝えてあったらしく、なんならそのために宅飲みを開いたとのことだった。

「で、試すんだろ?」

異様な雰囲気のある兄に気圧され、断るわけにもいかず、酔った勢いもあり、、

いや言い訳はよそう。完全に興味本位で私は大麻を吸ってみることを決意した。

このあと起きるコトも知らずに。。


How to smoke weed

画像4

(画像引用元:https://giphy.com/gifs/comedy-2012-8anH9hKSfoMwg

圧縮したブロッコリーみたいなものがジップロックから出てきた。

それをゴソッと崩すと、ポケットサイズにしたミニ剣山みたいなものの間に挟み、これでもかというほど磨り潰す。非常に手際がいい。

奥から実験室でしか見ることのないようなクソでかいフラスコみたいなものを持ってくる。

そのフラスコの中腹にある小さなワイングラスのようなものに、磨り潰されたブロッコリーを入れる。慣れた手つきだ。

火をつけ、上の口から吸う。


ゴボゴボゴボゴボゴボ・・・


フラスコの中の水がそう音を立てると、内部に白い煙が溜まっていく。

どうやら特殊な吸い方をしてフラスコ内に煙をためているようだ。

そして、スゥッ!と一気に肺に引き入れる。


「ッッアァ~!!分かったか?」

「次はお前の番だ」


いや、分からんけど?

まあいいや、モノは試し。やってみよう。


見よう見まねで、ゴボゴボゴボゴボゴボ・・・


さっき見たような白い煙は溜まらず、薄いもやのようなモノが出来上がる。

スゥーと吸ってみる。


何も起こらない。

「合ってる?」と私が聞くと、

「もっかいやってみろ」と、兄貴はニヤニヤしながら答える。


ゴボゴボゴボゴボゴボ・・


スゥッッ!


BAD TRIP

ガクンと頭が落ちた。

座っている椅子に張り付いてしまった。

身体が重く動かない。

身体の神経が全部切れて、神経がシャットダウンされてしまったようだ。

しかし、思考だけはハッキリしている。


どうしようと思っていると、兄貴が近づいてきた。


「Are you fuckin' HIGH????」

俺の眼前でニヤニヤしながらそう言い放ち、柏手を打った。


パァン!!


その音が脳内で無限に反響し、焦った私の思考は”ヤバい!”に汚染された。

やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい、、、

どうしよう?どうしたらいいんだろう!


俺は死に物狂いで「It's OK, totally fine」と答えた。

実際には「いぇ~っううおおおうけえええええええい、とぉおおおぉああいいぃぃいいふぁあああんんん」だったらしい。

兄貴はサーカス(※8)でも見るように馬鹿笑いしてた。


その瞬間、味わったこともない吐き気が押し寄せてきた。

「あ、吐く」

妙にクリアな思考でそう確信した私は必死でトイレへ駆け込もうとする。
しかし、私の周りだけ重力が数倍になっているんじゃないかと思うくらい身体が動かない。

私の中でシンジ君は決死の思いで叫ぶ。

動け!動け!動け!!!


画像5

(画像引用元:新世紀エヴァンゲリオンより


...

......


オロロロ……!


私は座ったまま、かろうじて動いた頭部だけ横に傾け、床に嘔吐してしまった。


それを見て更に馬鹿笑いする兄貴。



俺が何をしたって言うんだ。


続・BAD TRIP

気持ち悪さが引いてきた。しかしまだ身体は動かない。目と耳だけはかろうじて神経が繋がっているようだ。


ん?なにやら揉めている。

リアムと兄貴が揉めている。


リアム「はdfgさdふぁさふぁいsgふぃあf!!!!!!」

兄貴「fさgふさdさいyqてうkjfべひだd!!!!!!」


なになになになに???????


リアム「あhfばおいふぁおふぁpfばf!!!!!!」

兄貴「んvかうすdbさdヴぁjsd!!!!!!」


分からないが母国語で喧嘩しているようだ。我々日本人からすると、朝鮮系の言語は普通に喋っていてもなにやら怒っているように感じるのは共感してくれるはずだ。それがものすごい剣幕で本当に喧嘩しているのだ。非常に怖い。めっちゃ怖い。

先述した通り、頭だけは冴えている俺。何故か勝手に韓国語を脳内で翻訳する


リアム「こいつは俺の友達だ!だから今回は勘弁してくれ!」

兄貴「知るか!お前が連れてきたんだろ!覚悟を決めろ!!」

リアム「分かってるけど殺すことはないだろう!」

兄貴「いつもこうやって殺してきただろ!!早く殺せ!


いや文脈とかは分かんないけど、何やら俺を殺すかどうかで揉めているんだと分かった。
縛り付けられてどこかへ売られるとか、バラバラにして臓器を売るとか。

そういったことで揉めているのだと、
研ぎ澄まされた私の思考はハッキリと確信した。


頭の中で謝罪した。

お母さんお父さんごめんなさい。留学中に大麻を吸った挙句、コリアンマフィアに殺されるのです。本当にどうしようもない息子でした。


種明かし

段々と感覚が戻ってきた。シャットダウンされていた神経系が徐々につながりだし、スートピアに出てきたナマケモノの公務員(※9)くらいのスピードで動けるようになってきた。

私が動けるようになる頃には男達は眠りについており、あいこだけが気付いて水をもって来てくれた。天女だ、天女がいたんだ。どっと安心感が押し寄せ来る。なんて有難いんだと思いながら、あいこに何時間経ったか聞いてみる。2時間くらいしか経っていなかった。私の頭の中では軽く5時間くらい経過している計算だったので、感覚のズレに驚愕した。


そしてもう一つ質問してみた。そう、彼女は韓国語が分かるのだ。

「リアム兄弟は何を喧嘩してたの?」

その答えはこうだった。


あまりに大麻酔いが激しい私を見て、リアムは兄貴がなにか悪いものを吸わしたのではないかと問いただした。兄貴としては、弟の友人のためにわざわざ手に入れた高級品を悪いもの扱いされたことに対して言い返した。

このような喧嘩だったらしい。

良かった。生きて帰れるんだと心の底から思った。


終わりに

あのニオイは私のトラウマになった。

それ以後カナダの街を歩く度に、あのニオイがするとパブロフの犬の如く気持ち悪くなるようになるし、身体の感覚が遠のくような気がするようになってしまった。


帰国後、日本でもそんなニオイがすることがある。

ドラッグ、ダメ、絶対。


以上、またね。

※このnoteはフィクションです。


いらない注釈たち

※1 カナダのタバコは高く、一箱当たり1,500円くらいする。

※2 繁華街って意味だけどそこまで栄えてなかったからダウンタウンって書いてイキってみた。

※3 ちなみに終フェリーの時間はとても早く、20時くらいだった気がする。

※4 大麻作っては逮捕されるおバカ三人組のモキュメンタリードラマ。

※5 中国人はマンションを丸ごと一棟借りて留学生同士でシェアしていたので、日本人以外では割と当たり前なのかもしれない。

※6 私は中高一貫の男子校だったため、6年間男としか関わりが無かった。

※7 多分勝俣のすべらない話だったと思う。

※8 見世物小屋的な意味で。

※9 本人たちはキビキビ動いている。決して怠けてはいない。

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