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『ガーデンロスト』という本を読んでの雑記

 私がまだ高校生だったころに、一等のめり込んだ小説。
 すごくしんどくて、とてもきれいな話。バラバラに色々こじらせた、めんどくさい女の子が四人出てくる。その四人が一章ずつ主人公をやるオムニバス。

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 あらすじとかは公式で読んでもらうとして、とにかくすごく『少女』だった。
 描写がちょうど大人と子供のあわいにいる感じ。レゾンデートルが曖昧になりがちな。あえてこういうこと言ってみがちな。
 女子高生だった人ならこの四人のことわかるんじゃないかな。特にクラスの隅っこの方にいた人たち。というか中心ではなかったーみたいな……人種の。
 図書室とか保健室の常連だった人は結構感覚としてわかると思う。作中にはどっちも出てこないけど。
 息苦しさとか焦りとか、そういうのが詰め込まれてる。
 お砂糖とスパイスと素敵なもの、のスパイスがちょっと強めの少女たちの話。

 一章から結構しんどい話で、いや、実害は何も出ないんだけど。周囲からしたら四章の中で一番穏当な話なんだけど。
 でもこれが一番『病』って感じだった。言い方がよくわからないし語弊もあるけど、思春期病……でもないな。エカは多分ずっとやさしい子なので。優しいというよりやさしいと平仮名で書く方がエカっぽい。そこに何か明確な差異があるわけではないとしても。
 いい具合に病んでた。優しすぎるのも、そういう。
 のっけから引き込まれる文章だった。そうそう、春の空気って甘いんだよね。って。

 個人的にはシバが好き。
 というか、シバの内面はかなり私に似ていたので共感性が強かったというか。
 違うかな、共感はできるけど、根本的な部分で全然似てないからかも。シバは努力家だけど、私はサボり魔だし。勉強について、親にあんな期待されたことないし。
 なんとも言いにくいけど、毒を吐きながら甘えてしまうあたりは、すごく。そこに共感するのよくない気がするけど。
 全体的にシバが聞いたらすごい苦虫を噛み潰したような顔されそう。私はシバ好きだけどシバは私のこと嫌いそう。一緒にしないで、って言われるの想像できる。

 でも、そう。物語の締めが彼女でよかった、っていうのをずっと思ってる。
 多分、他の三人と比べて、なんだかんだ一番「このメンバーでいたい」という思いが強かったのはシバだと思っていて。強い言葉を使って、気も強いけど、根っこが寂しがりで脆い子だなあと読んでいた記憶があって。
 だからこそのタイトルだと。そんなことを初読のときに考えた。
 エカも近いとは思うんだけど。マルは自分で前を向けるタイプだし、オズはとりあえず足を動かすことはできるタイプの子だと感じて。いや好きなんだけど。進学にあたってはオズと似たような選び方したし。

 でもガーデン『ロスト』なら、シバのことだと思う。
 失われる、というなら。それはシバだ。

 幸せになって欲しいな、と願う。
 いい子たちだったから。花園は、自分でもゆっくり、作っていけるよ。というか、そうあって欲しいというのは、私自身の願望だけど。

 ちなみにこれ全部私が勝手に行間を読んだ上での感想だから、作中にそう書かれているわけではない。ので、他の人がどう感じるかも聞いてみたいなあと思ってみたりする。

 そういえば、これだけ書いておいてなんだけど、実は初版では読めていない。
 もっとも初版は私が小学生の頃で、そのころ読んでたらこんなに刺さらなかっただろうし、本の方がちょうどいいタイミングで呼んでくれたんだろう。

 読んだ当時既に電子書籍の波は派手に押し寄せてきていて、私も結構しっかりめに流されていたけど、それでもこの本は、絶対に紙で読むのがいいし、紙じゃないといけない本だと思う。
 勿論これは私の意見だし、電子書籍でも全然いい。なんの問題もなく良作だし。
 だけど、私は紙の、重量と質量があって、持ち運ぶ手間がある本であることに意味を見出した。そう書くとあまりにも大げさだけど。
 紙を捲って文字をなぞるという行動そのものが救いになる時があるのだ、と。本を抱きしめて眠ることで、救われる夜があるのだ、と。

 ……と、中学生くらいに少女小説的なものを書いてた時の文体を思い出して書いてみました。少女の特権だよね、こういうまどろこっしい文章書けるの。

 今現役の高校生、で色々燻ってる人ならきっとハマるだろうし、大人でも面白いと思います。
 私はまだ懐かしい、といえるほど(主に精神面が)成長できてないから普通に当時とほとんど変わらない息苦しさを覚えてる。
 いつかこの感覚を懐かしめる日が来るのかもしれない。けど、それはまだ先でいいかな、とか思いました。まる。


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