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不毛地帯【読書感想文】

これは、今や時代劇だと思う。


不毛地帯
著:山崎豊子
出版:1978年


①あらすじ

拷問、飢餓、強制労働――11年に及ぶ地獄のシベリア抑留から生還した壹岐正は、第2の人生を商社マンとして生きる事を決意する。「商戦」という新たな戦いに身を投じ、戦後日本の高度成長を陰に陽に担った男を活写する、記念碑的長編。

この本はフィクションですが、主人公である壹岐には実在のモデルが存在すると言われています。

伊藤忠商事で会長にまで上り詰めた、瀬島龍三氏です。

本書では、壹岐のエリート軍人⇨シベリア抑留⇨商社マン という激動の人生を目の当たりにできます。

私は1〜5巻の合本版をKindleで読んだのですが、総ページ数2,313、連載原稿は約5千枚、執筆にあたっての取材人数377名、という化け物じみた超超超大作なのです。


②感想

この本は、商社で働く人だけではなく、すべての働く人が見るべき「時代劇」だと思います。

こんなにも苛烈に働き続けてきた人たちが今の日本を作ってきたのかと、感慨深い思いをすると共に、自分にこんな働き方はできない……。と思ってしまいました。

また、敗戦とシベリア抑留についても先の取材人数から分かる通り、事細かに小説に起こされています。
抑留生活がどんなものだったのか、それを日本で待つ家族はどんな思いだったのか。
どれも自分には想像し得ないほど壮絶なもで、とても勉強になりました。

特に、全編とおして印象に残っているのは、「言外に含ませる台詞の多さ」です。

壹岐が商社マンとして近畿商事に入社すると、彼は間も無く熾烈な商戦に巻き込まれます。

その中で政治家への献金、社内の派閥争い、時には法を犯すことまで、どっぷりと沼に浸かっていきます。
そんな環境では気が置ける会話が限られ、互いに牽制しあい言外に意図を込めることが増えます。

「本音」と「建前」を使い分け、みな一様に自分の思うように事を運ぼうとする、意図の交錯が随所にあります。そこが本書の面白いところの一つだと思います。

「本音」と「建前」を使うのを見て、自分にはできないなと思ってしまいました。

使えないのが良いとは全く思っていなくて、むしろ絶対に必要な場面はあるので使えた方がよいと思っています。


あと、壹岐のライバルとして出てくる鮫島という男が居るですが、作中で「臍の緒を切った瞬間から死ぬまで商社マン」と言われています。
狙った獲物は逃さない、がめつくて物凄く嫌味なキャラなんですが、凄く印象に残っています。

テレビドラマ化した時の鮫島役が遠藤憲一氏というのをwikiで見て、ピッタリすぎて笑ってしまいました。


③最後に

学びが多くあると思うので、ビジネスマンの方には是非読んでみてもらいたいです!

もうかなり昔の本かつ有名な本なので、読んだ方も多いかもしれませんが……!

色々なジャンルの本を読みたいと思っていますので、オススメの本を是非教えてください。

それでは。

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