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◆読書日記.《北大路魯山人『魯山人陶説』》

※本稿は某SNSに2019年2月4日に投稿したものを加筆修正のうえで掲載しています。


 北大路魯山人『魯山人陶説』読了。

北大路魯山人『魯山人陶説』

 篆刻・書道・絵・漆芸・料理研究に才を発揮し、さらに美食のために陶芸研究を始めてから本格的な陶芸家ともなる超多才な芸術家。

「美食倶楽部」「星岡茶房」の創立者と言えばお分かりの通り、大人気コミック『美味しんぼ』の海原雄山氏はこの人をモデルにしている。

海原雄山海原雄山

 先日、柳宗悦の『茶道論集』を読んで日本美術の「美」について考えさせられたので、前からちょっと気になっていた魯山人の著作をこのタイミングで読んでみようと思って読んだ。

 本書はそんな魯山人が陶芸の研究を始める動機を書いたものから始まり、彼の陶芸に関わる美意識の変遷を追って興味深い内容になっている。

 民藝運動を主導していた柳宗悦とは考え方が合わなかったらしく、結構民藝運動については毒を吐いているのがちょっと面白かった(笑)。

 文章からは謙虚さが伺えるが、普段は結構傲岸不遜で毒舌家だったそうだ。
 柳宗悦とは美意識が合わなかったようだが、この人の根本的な「日本的な美」に関する考え方は、さほど柳と変わらないように思える。

 日本的な「詫び・寂び」の美意識を突き詰めると禅思想が現れてくる。
 個人的な我にとらわれず、知に耽溺せず、心の美を頼りにし、人工美ではなく自然美を求める。

 見た目だけ絢爛豪華にしたって駄目。外見だけを良くした表面的な美ではなく、内容の美しさを主体にしなければならない。

 反目しあってはいても、こういった欲や作為や我を無くしてひたすら無心に美を追求する姿勢は、柳も魯山人もさほど変わらないのではないかと思うのだ。
 彼らの違いは、民藝の無欲で平易で作為のなさによる素朴な出来に崇高さを見出す妙好人的な見方か、そんな民間意識をも超える芸術の意識がなければ駄目だとした見方か、の違いだったのではないだろうか。


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