なんでアスパラにしたの?② 実は10年植え替えがいらない。そのメリットとデメリット。

ども。松本です。福島県の浪江町で農業をしています。
先だって、かいつまんで書いた「なんでアスパラガスにしたのか?」を少し掘り下げていきたいと思います。

意外と知られていないのが、「アスパラガスは多年生作物である」ということ。
「多年生作物」という言葉をはじめて目にする人もいると思いますが、対義語は「一年生作物」です。
植物の中でも、1年で、発芽⇒成長⇒生殖(種実を生み出す)を終えると枯れてしまう植物と、それを数年から数十年のサイクルで繰り返す植物に分かれます。
ざっくり分けると、ナスやトマトなどのいわゆる野菜のほとんどが一年生作物、リンゴやモモなどの果物のほとんどが多年生作物です。

とはいえ、果物の中にも一年生のもの、野菜の中にも多年生のものがまれにあります。アスパラガスはそのまれな例、というわけです。

で、アスパラガスは多年生作物のため、ちゃんと根付けば10年ほど植え替えしなくても収穫し続けられます。
これが意外と知られていないな、と最近感じます。スーパーに行けばだいたい並んでいるメジャーな野菜のひとつだと思うのですが。

しかし、その多年生作物のデメリットとして、植えてから1~2年は収穫ができません。
慣用句で、「桃栗3年、柿8年」とも言いますね。だいたいの多年生作物は植えてから数年は収穫できません。
アスパラの場合、収穫が本格化するのは3年目からと言われています。

なので、メジャーな野菜のわりに、いわゆる参入障壁が高くなります。
他の野菜は植えてから早ければ1カ月くらいで採れだすものが多いので、植えてから1年は待たないといけない、というのは大きなデメリットと言えます。
しかし、参入障壁が高いからこそ、収量当たりの単価が高くなっていく、という構造があるわけなんです。
収穫まで待つことができれば、なかなか悪くない選択肢だと言えます。

そして、「植え替えがいらない」ということはつまり、農業をする上で様々な作業がカットできる、ということでもあります。

他の野菜だと、毎年、畑を耕し、肥料を撒き、畝を立て、ものによってはビニールマルチを張り、苗をつくるか買うかして、植える、という作業が必ず必要になります。
多年性作物の場合は、これらが全てカットされます。
なので、単純に「手間」がかからない、というわけです。

そして、もう一つ大きなメリットがあります。
畑で野菜を栽培する場合、大型農業機械類が一番活躍するのが、この「植え付け」までの間です。
最近はいろいろアタッチメントもあるのでその限りでもないですが、いわゆるあのトラクターは、「田畑を耕す」ということが基本性能なので、「植え付け」の前にメインで使うことになります。

つまり、アスパラガス栽培の場合、トラクターなどの大型農業機械を使うのは、10年に1度なわけです。
毎年、もしくは毎月、ある程度使うのであればトラクターの購入も必須となってきますが、アスパラガス栽培をメインにした場合、トラクターは植え付け前の数回しか使いません。
なので、農業をはじめる上での障壁の一つである「大型農業機械の購入と操作能力の獲得」が無くなるわけです。
これはけっこう大きなメリットだと思います。

ちなみに、私の場合、トラクターで畑を耕したのは2回だけです。
正確に言うと、自分でやったわけではなく、ご近所の農家さんにお願いして、作業委託料をお支払いして作業してもらいました。
トラクターは安いものでも100万円くらいしますが、作業委託料は1反あたり5000円程度です。ケタが違います。

ここまで読んでいただければわかると思うのですが、私はトラクターを持っていません。
トラクターに限らず、大型の農業機械は一切保有していません。軽トラさえ持っていません。

さらに言うと、私は大型の農業機械に限らず、「乗用して操縦する機械」がだいたい苦手です。車とかも含まれます。
これは生まれつきの個性だと思います。
(乗用しないタイプの草刈り機とかチェーンソーはむしろ得意ですし、機械を使わない細々とした作業はもっと得意です。)

実は農業をする上で、この「乗用機械の操作が得意である」というのは大きなメリットになることがけっこうあります。
というよりも、だいたいの農業において、必須と言える能力です。
この能力が無くて農業しようという方が無理ゲー、と言った方がいいくらいだったりします。
これが免除されるのは、ごく一部の狭い範囲の農業で、アスパラガスはたまたまそこに分類されていて、私はそこに目をつけた、ということになります。

今のところ、その読みは当たって、「自分にとって不得意であることが絶対に必要になる場面」は来ていません。
たぶん、これからも来ないと思います。

こういう、裏ワザではないけど、正道とも言えないけど、生き残れる道を探せるのも大事なことではないのかな、と思う今日この頃です。





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