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三日坊主はやめられない

押し入れを整理していると、いかに自分が飽きっぽいか、思い知らされる。

特にこのコロナ自粛の期間はそれが顕著に表れていたようだ。

例えば、「かわいい趣味が欲しい」とプリザーブドフラワーと専用の液体を買って、ハーバリウム(植物標本、うまくいけばインスタ映えが狙える)づくりを始めた。

出来上がったハーバリウムを友達に贈与するなどしたが、友人に喜んでもらったこと、インスタに画像を上げて褒めてもらったことで満足し、その後作ることはなかった。

ある時は、ピアノを弾いたことなどないのに、急にピアノが弾けるようになりたい、と思った。当時ブームを巻き起こしていた「うちで踊ろう」を、星野源ファンたるもの弾けるようになろうと、ロールピアノを買った。

二、三か月でそこそこ弾けるようになって、これも周りの人に「すごいね!」と言ってもらって、悦に浸りある程度満足してしまった。

そんなこんなで、三日坊主が投げ出した、草履やお経本のようなあれこれが押し入れにはたくさん詰まっている。

その上、「またいつか始めよう」として、いつまでも人に譲ったり、捨てたりできない。始めるハードルはどちらかというと低い方で、なおかつ、どちらかというと続けるのが苦手なのは、たちが悪いな、と自分事ながら感じる。


とは言え、性懲りもせず、新しいことは挑戦したい。この間はプリンを作りたくなったのでプリンを作った。

また例によって次はいつ作るかわからないが、プリン自体は美味しくでき、満足した。

しかし、なれないことをした代償というのか、プリンを作るのに使っていたグラスを作る過程に必要な温度差で大きなひびを入れてしまったのだ。

そしてそのグラスはかなりお気に入りのグラスだった。

綺麗な緑がかった半透明のグラスで、側面には赤や濃い緑の石が埋め込まれている、知人からもらった沖縄土産。

私は後悔した。冷静に考えれば、工芸品のようなものだったので、温度差に耐えられるはずはなかったのだ。

一度、プリンづくりをやめて、十分悲しむことに決めた。

十分に反省した後、もう一度グラスを見た。冷静になろう。
すると、ひびは入っているが、完全に割れてはおらず、としては使えそうだ。
飲み物用のグラスとして使うのは危なそうだが、飾りにはなるのではないか、と思った。

―これにプリザーブドフラワーを差して花瓶みたいにしたら、案外いけるんじゃないかな。

―土替わりに、コーヒーがらでも入れてみようかな

ドリップコーヒーを毎日飲んでいるので、コーヒーがらを使おうと思えば、いくらでも使える。それに、私が去年一回作ったきり飽きた、ハーバリウムの材料のプリザーブドフラワーも物置から脱出できるのも大きい。

私はコーヒーがらをせっせとため、ベランダで天日干しした後、グラスにコーヒーがらを入れた。その後、プリザーブドフラワーの長さや形をハサミで整え、コーヒーがらで作った偽物の土に刺した。
ピンク色のプリザーブドフラワーは緑のグラスとよく合い、殺風景な玄関を賑やかにするのを助けてくれそうだった。

あぁ、よかった、と思った。

大切なグラスを壊してしまったが、捨てずに済んだことと、私の三日坊主でお役御免になってしまったプリザーブドフラワーに役を与えることができたこと、両方に対して、そう思った。そして微かにすっきりとした。



一度始めたことを続けられるに越したことはない。しかし「何が自分に会うかわからないから、いろんなことをしてみる」というから、私は三日坊主になるとわかっていても何かを始める。

そしてもう一つ、たとえ三日坊主の経験だとしても、どこかでつじつまが合い、割れた陶器を金で繋ぐように役に立つことが、たまにある。その瞬間が快感である。くるかどうかも分からぬその一瞬を待ちわびて、私は三日坊主をやめられないのである。

アイコンを変えたい、、絵が得意な人にイラストを書いてもらいたいなぁと考えています。サポートいただければアイコン作成の費用にかかるお金に割り当てたいと思ってます。