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ORIAI
2024年9月24日 07:01
取り返しをつけたい、つけなければならないことがある。私の父の母、つまり私の祖母は、日本語の読み書きができなかった。識字できない人がこの国で直面する生きづらさとは、どんなものなのか。想像し難いかもしれない。たとえば、かかりつけの病院に行き、名前を呼ばれて返事をする。そのコミュニケーションは自分でできても、問診表は書けない。病院へは、娘である叔母が付き添うか、受付の人に向かって話し、それを
2021年11月20日 21:21
大人には、いつだって説明が必要になる。子どもは、くたびれてしまう。 『星の王子さま』序盤にある一節。それを思い出す出来事があった。 四歳の次男が造形教室に通っている。その日の絵画のお題は「はたらく人」。すぐに息子は、クレヨンで描き始めた。巨大なカブトムシを。鼻唄を歌い出さんばかりに愉しげだ。 「せんせいのはなし、きいてた? はたらくひと、だよ?」苦笑いしながら、スケッチブックに向かう
2021年11月1日 14:43
満たされなさや淋しさを、何で埋めるのか。 本書を貫くテーマであり、登場する人たちは、抱えている不足感を、それぞれの形で埋めようとする。 夫の朝帰りに悩みながら夫に愛されたくて絶食を続ける妻・ひかり、特別な相手との不倫でプライドを守る知歌、自分と娘を残して夫が家を出て20年以上経つのに離婚を認められない母親・美智子。初恋の人との同棲を続けるヨウ、水を飲むように浮気を繰り返す夫・直人、製作の