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第10話 タンポポは雑草か?

10. 復習(4) is, am, are, do, does からの適語選択問題の解法

(5月25日 教室⑥)

教室を取り囲む木々の葉が、いよいよ緑色を増してきた。
見上げると、絵に描いたような青空と白い雲が、べランダで一人佇む俺の心を和ませる。
手すりの端に止まっている銀色のハエが少々気になるが、――これも自然の産物――自然ほど美しいものはない。
が、やはり気になるものは気になるもので、こうしてベランダから見下ろしていると、見て見ぬふりをしたくなるものも目に入る。
――雑草だ。
今年に入ってまだ1度も庭の草取りをしていないが、手が付けられなくなる前にそろそろ始めなければなるまい。
畑の周りにも結構な数の雑草が生えている。
あいつらを根こそぎ抜いて、……と思っていると、ふと雑草群の中に紛れてしおらしく咲いている1輪のタンポポが目に入った。
「おぉ、なんと可憐な!」
昨日まではなかったはずだが、いつの間に咲いたのか。
愛くるしい黄色の花がこちらを見上げて俺に微笑みかけている。
が、知人の話では、タンポポも雑草だと言う。
そんなバカな。
あんなに可愛い花を咲かせているというのに。
俺の辞書には、「雑草=花の咲かない汚い草」と書いてあるのだが、……。
そこで、世間の辞書で「雑草」を調べてみると、「人間の意図に反して勝手に侵入し、成長・繁殖する植物」とある。
どうやら、花の有無は関係ないらしい。
英語の dandelion(=「タンポポ」の意)も、その語源は花ではなく葉に着目している。
dan= tooth(=「歯」の意)、de= of(=「~の」の意)、lion(=「ライオン」の意)、葉のギザギザがライオンの歯に似ているところから。
ということは、ハコベも雑草なのだろうか。
理科の教科書に出てくるカラスノエンドウは?
シロツメクサもか?――
晴れ渡る大空の下、陽気なチョウチョが舞い踊る緑輝く大草原で白いワンピースを着た1人のいたいけな少女がちょこんと座って楽しそうにやっているのは、……雑草取りだと言うのか!
おぉ、少女よ、君は何をやっているのだ。
その花の首飾りは、雑草の輪か?
ちゃんと軍手ははめているのか?
服は汚れていないか?
「お前はバカか」と言わんばかりに、手すりのハエが飛んでいった。
タンポポが雑草だとすれば、義務遂行を重んじる俺としては、庭の草取りの一環としてお前を抜かなければならない。
一方で、俺の辞書には「義務遂行=やりたくないことを渋々やること」とも書いてある。
抜かなければ自分の信条に反することになるし、抜いたら抜いたで俺は救いようのない偽善者だ。
おぉ、神よ、豊穣の女神デメテルよ、……俺はどうしたらいいのだ。
「お前は救いようのない偽善者だ」
「はっ、今の声は? ははぁ、失礼いたしました、……豊穣の女神デメテル様。今日はどちらに? てか、またハエ、来やがった。あぁ、うるさい」と、手で追い払うと、
「痛っ、ちょっと、何すんのよ!」
「ひっ、デメテル様?」
ハエはデメテルの化身だった。
「で、……抜くの? 抜かないの? はっきりおし!」
「はぁ、……」
「まったくもう、この優柔不断男が。抜いちゃいなさいよ、……どうせまた生えてくんだからさぁ」
「で、ですよね。じゃあ、思い切って、抜きます!」
すると、
「え? 本当に抜くの? 可哀相なタンポポちゃん」
「そんな~」
――これは試練か。

「どぉれ、やっぞぉ。今日のテーマは『復習(4) is, am, are, do, does からの適語選択問題の解法』ね」
「なんか、難しそう」と、メドりんが呟く。
「そんなことないよ。これまでやってきたことをちゃんと理解していれば大丈夫。どれ、1つ例題やってみっか。はい、『次の英文の(  )内から適語を選びなさい。(Is, Am, Do, Does) he like baseball?』」
「Is(×)」と、ソン太が答えた。
「なんで?」
「主語が he だから」
「うん。でもさぁ、だったら Does でもよくね?」
「ん? あ、そっか、……てことは、あれ? どっちだ?」
「てなわけで、<アテナの黙示録10>を見てみましょ。

<アテナの黙示録10> 復習(4) is, am, are, do, does からの適語選択問題の解法
【1】is, am, are, do, does からの適語選択問題の解法
|★「is, am, are, do, does から適語を選びなさい」という問題でどれを選ぶかは、文中に「動詞の原形があるかないか」と、「主語の種類」によって決まる。
||①動詞の原形があるとき → do/does を使う。
|||(1)主語が I のとき → do
|||(2)主語が you のとき → do
|||(3)3人称単数主語のとき → does
|||(4)複数主語のとき → do
||②動詞の原形がないとき → is/am/are を使う。
|||(1)主語が I のとき → am
|||(2)主語が you のとき → are
|||(3)3人称単数主語のとき → is
|||(4)複数主語のとき → are
||例1)(Is, Am, Are, Do, Does) he like baseball?
|||||答え:Does
|||||理由:①動詞の原形 like があって、②主語が he(=3人称単数主語)だから。
||例2)She (is, am, are, do, does) not from Hokkaido.
|||||答え:is
|||||理由:①動詞の原形がなく、②主語が she(=3人称単数主語)だから。

いがぁ。この手の問題を解くためには、主語の種類だけを見てもダメなのね。まずは、英文中に動詞の原形があるかないか、を確認する。もし、動詞の原形があれば、答えは do/does のどっちかだし、動詞の原形がなければ、答えは is/am/are のどれか、ってことになるよ」
全員がテキストをじっくりと目で追っていた。
「じゃあ、do か does か、あるいは is/am/are の使い分けはどうするか、っちゅーと、はい、ここで主語の種類、ね。主語が3人称単数であれば does あるいは is だし、複数主語であれば do あるいは are ってことよん。で、I と you は特別な主語だったよね。動詞の原形があれば、I do/you do だし、動詞の原形がなければ I am/you are ってことだ」
「フムフム」と、ソン太が頷く。
「よって、この手の問題を解くためには、まず動詞の原形があるかないかを確かめて、do/does を使うのか、is/am/are を使うのかをはっきりさせる。その上で、主語の種類によって do か does か、あるいは is/am/are を使い分ける、……この2つの作業をやって初めて正解が出るからね。ま、慣れないうちは、テキストを見ながらやってもいいよ」
「てことは、……」と、ソン太が言った。
「うん、じゃあ、さっきの、『次の英文の(  )内から適語を選びなさい。(Is, Am, Do, Does) he like baseball?』だったら?」
「えーと」と、テキストを見るソン太。「わかった。Does だ!」
「おぉ、どして?」
「まず、動詞の原形があるから」
「おぉ、そだ。ちなみに、どれ?」
「like」
「そのとーし! like は『好む』っていう意味の動詞の原形だ。よって答えは do か does だね。んで?」
「主語が he だから」
「そのとーし! he は3人称単数主語だからね、……よって does を使う。いでしょ。んで、もう1題。『次の英文の(  )内から適語を選びなさい。She (is, am, do, does) not from Hokkaido.』だったら? んで、メドりん」
「んー」
「テキストを見ながらでいいよ」
「んーと、is かな?」
「おぉ、どして?」
「動詞の原形がないから」
「そのとーし! この文には play とか、like とか、live といった動詞の原形がないんすよ。だから do/does は使えない、ってことね。じゃあ、答えは is/am/are に絞られるんだけど、どして is を選んだの?」
「えっとねー、主語が she だから」
「そのとーし! she は3人称単数主語だからね。よって is を使う。いでしょ」
――声に出さずとも、メドりんの「テヘ、できた」が俺の心に響く。だが、これで満足してはいけない。
「いがぁ。てことはだよ。この手の問題を解くためには、ある程度、動詞の原形を覚えなきゃダメだ、ってことだよね」
「たしかに」と、ソン太。
「え、何個?」と、メドりん。
「ま、150個くらいかな」
「「「「「ひゃくごじゅう~~~~~?」」」」」
と、教室中がどよめいた。
「何、言ってんの、……たったの150個だよ」と、淡々と語る俺。「普通、英語の辞書に載ってる単語は45000語、その中のたったの150個だぞ。割合で言ったら、なんぼや? 計算してみぃ。150は45000のどれくらい?」
「いきなり、数学になってるし」と、ソン太が言う。
「こんなの算数だ!」
「そんな~」「あれっ、どうやるんだっけ?」「割り算?」「え、何÷何?」「……」
「おめだづは、まったぐ。大体、『○は△のどれくらい?』って聞かれたら『○÷△』だ。はい、150は45000のどれくらい?」
「てことは、150÷45000か」と、計算し始めるソン太。
釣られて全員が計算に取り掛かる。
「えーとね、分数だと約分して、……300分の1」と、ソン太がいち早く答えた。
「あ、そっか、分数で計算すればいいんだ」と、ヘラクレス。
「うん。てことは、……ん?」
グスッ
――パンドラの様子がおかしい。泣いてるのか?
「どした? パンドラ」
「わ、割り切れないですぅ、……グスッ」
――お前は、タラちゃんか。
「いいんだよ、割り算なんだから、割り切れないことだってあるよ。てか、そんなことで泣かない。ほら、150÷45000=0.003333333333……、って、3がいっぱいあって面白いねぇ、カワイイねぇ」
「うんっ!」
「納得すんのかよ!」と、すぐさまメドりんが突っ込んだ。
「まぁ、割り切れないときは分数を使った方がいいね。さて、300分の1ってことはだよ、……目の前に1円玉を300枚ジャラっと出されて、その中のたった『1枚だけでいいから、発行年を覚えなさい』って言われてんのと同じなんだから、どってことないっしょ?」
「「「「「……」」」」」
時間をかけた割には、なんと説得力のない例えだったこと。――
「ま、【2】の『主な動詞の原形』くらいは、覚えといてくれよ。【3】の『主語の位置』については、<アテナの黙示録5>でもやったんで、覚えてなきゃ復習しとくべし。

【2】主な動詞の原形
|★動詞の原形には次のようなものがある。
||play(<スポーツなどを>する), like(好む), go(行く), speak(話す), wash(洗う), want(欲しがる), work(働く), get(得る), teach(教える), walk(歩く), know(知っている), have(持っている), study(勉強する), use(使う), make(作る), run(走る), swim(泳ぐ), talk(話す), come(来る), buy(買う), take(取る), drive(運転する), eat(食べる), give(与える), hear(聞く), keep(保つ), leave(去る), see(見る), teach(教える), tell(言う), write(書く), say(言う), catch(捕まえる), …
【3】主語の位置
|★主語の位置は文末の符号(=./?)によって変わる。
||①ピリオド<.>で終わる文 → 主語(is, am, are, do, does)~.
|||例)My mother (is, am, are, do, does) a teacher. 答え:is
||||※主語は(  )の左側にある。
|||||例外)There (is, am, are, do, does) not any books on the table. 答え:are
||||||※There で始まる文(=「~がある/~がいる」の意)の主語は(  )の右側にある。
||②クエスチョンマーク<?>で終わる文 → (is, am, are, do, does)主語 ~?
|||例1)(Is, Am, Are, Do, Does) you a high school student? 答え:Are
|||例2)What subject (is, am, are, do, does) you like? 答え:do
||||※主語は(  )の右側にある。

てなわけで、<スピンクスの謎10>、やっぞぉ。

<スピンクスの謎10> 復習(4) is, am, are, do, does からの適語選択問題の解法
次の英文の(  )内から適語を選びなさい。
(1) I (is, am, do, does) not play baseball.
(2) (Is, Are, Do, Does) your sister a college student?
(3) (Is, Are, Do, Does) your sister work at a bank?
(4) (Is, Are, Do, Does) you know her name?
(5) There (is, are, do, does) not any books on the table.

はい、ヘラクレスから、(1)、答え入れて読みぃ」

次の英文の(  )内から適語を選びなさい。
(1) I (is, am, do, does) not play baseball.

「I do not play baseball.」
「そのとーし! なんで?」
「んーと、まず、動詞の原形がある」
「そだ。どれ?」
「play」
「そ。play は『(スポーツなどを)する』っていう意味の動詞の原形、これがあるから答えは do か does のどっちかだ。んで?」
「主語が I だから」
「そのとーし! 主語が I のときは do を使うんだった。いでしょ。ちなみに意味は?」
「私は野球をしません」
「おしっ。はい、次、(2)、メドりん」

次の英文の(  )内から適語を選びなさい。
(2) (Is, Are, Do, Does) your sister a college student?

「college って、動詞の原形?」
「いや。college は『大学』っていう意味の名詞。ま、a college student で『大学生』だな。大体、動詞の原形の前に a がつくことはないから」
「じゃあ、Are your sister(×)」
「ん? まてまて、主語は you じゃなくて、your sister だぞ」
「あ、そっか。3人称単数主語か。じゃあ、Is your sister a college student?」
「そのとーし! ところで、なんで your sister が3人称単数主語だ、ってわかった?」
「え、だって、sister に s がついてないもん」
「そのとーし! よく覚えてた。いつだかもやったけど、『あなたの姉妹』が単数か複数かは、sister(姉妹)に複数を表す s がついてる(=複数形)かついてない(=単数)かで判断するんだった。いでしょ。ちなみに意味は?」
「あなたの姉妹は大学生ですか」
「おしっ。はい、次、(3)、パンドラ」

次の英文の(  )内から適語を選びなさい。
(3) (Is, Are, Do, Does) your sister work at a bank?

「Is your sister work(×)」
「ん? なんで?」
「え、主語が your sister だから、今と同じかな? って」
「いやいやいやいや、この手の問題を解くときは、まず何を確かめるんだったっけ?」
「……、あ、動詞の原形があるかないか、だ」
「そ。さて、この文の中に動詞の原形は、ある? ない?」
「ある」
「うん。どれ?」
「work」
「そ。work は『働く』っていう意味の動詞の原形。よって、答えは do か does だぞ」
「あ、そっか。てことは、Does your sister work at a bank? だ」
「そのとーし! いがぁ、動詞の原形があるときは is/am/are っていうのは使えないからね。最初にも言ったけど、この手の問題を解くためには主語の種類だけを見てもダメだ、ってことよん」
「んー、ムズい」
「まぁね、慣れないうちは、しゃーないよ。初めはテキストを見ながらでいいから、じっくり、ゆっくり、ルール通りに、正確に、答えを出してってちょーだい。ここで焦って、今までの生半可な知識でテキトーに答えを出す癖をつけちゃうとさぁ、今までやってきたことが全部水の泡だかんね。OK?」
――頑張れ。ここを乗り切れば第1段階終了だから。逆に、ここでつまづいてるうちはこの先、何をやっても無駄、……先には進めんぞ。よって、田村塾ではこの手の問題を『イヤ』っちゅーほどやらせます。
「ちなみに意味は?」
「あなたの姉妹は銀行で働いていますか」
「おしっ。はい、次、(4)、ソン太」

次の英文の(  )内から適語を選びなさい。
(4) (Is, Are, Do, Does) you know her name?

「Do you know her name?」
「そだ。どして?」
「動詞の原形の know があって、主語が you だから」
「そのとーし! know は『知っている』っていう意味の動詞の原形、よって答えは do か does だ。主語が you であれば do の方を使う。いでしょ。はい、ちなみに意味は?」
「あなたは彼女の名前を知っていますか」
「おしっ。はい、ラスト、(5)、オルっぺ」

次の英文の(  )内から適語を選びなさい。
(5) There (is, are, do, does) not any books on the table.

(……)
「この文の中に動詞の原形は、ある? ない?」
(……ない、です)
「うん。てことは、is/am/are のどれかだね。で、これ、チョイと注意。【3】の①の例外)にも書いてあるんだけど、There で始まる文(=「~がある/~がいる」の意)の主語は(  )の右側にあるんすよ。よって、この文の主語は any books(何冊かの本)、つまり複数主語だ。そーすっと、答えは?」
(There are not any books on the table.)
「そのとーし! ちなみに意味は『テーブルの上には本が1冊もありません』ってなるんだけど、……ま、この There で始まる文については、後日じっくりやりますんで、今日のところは、There で始まる文の主語は(  )の右側にある、ってことを頭ん中に入れといてちょうだい。以上、どっか質問ある? なければ、本日終了。おつかれさ~ん」

「んー、何だか今日の授業は疲れたなぁ」と、ソン太が言う。
――頑張れ。これも試練だ。

<オイディプスの答え10> 復習(4) is, am, are, do, does からの適語選択問題の解法
(1) do
(2) Is
(3) Does
(4) Do
(5) are

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