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「彼女の背中を押したのは」を読んで  (生きることに少し悩んでいる人にお薦め)

 この人の本は、いつも生きることの難しさを教えてくれる。「いわゆる普通やあたりまえに生きること」に、「素直でいること」に悩む女性の考え方や生き様を教えてくれる。
 今回の本も同じである。ある朝、ある女性(以下「姉」)に妹から久ぶりに連絡があるが、姉は忙しいと相手にしなかった。その夜、妹がビルの屋上から落下し、意識不明の状態になったと母親から連絡がはいる。物語はそこから始まる。姉は、結婚を機に家族から離れて半年が過ぎていた。その間、妹が誰と交流し、どんな生活をおくっていたか全く知らない。妹の連絡を相手にしなかったことを後悔し、落ちた原因(事故か他殺か自殺か)を調べることを決意する。結婚を半分言い訳に家族から逃げた姉が、容姿端麗だが非常に内向的な妹、家事が苦手で感情をすぐに表に出す母親との過去を回想しながら物語は展開していく。自分の知らない妹、予想もしなかった母親の考えを知る。自分の卑怯さも再認識する。妹が何を感じ生きてきたかを徐々に確信するようになる。そして最後に、意識不明の妹は・・・という物語である。
 この物語を読んで、一人で生きることはできないが、一人で生きていく能力を身につけるべきと強く思うようになった。「芸は実を助く」とか「共存共栄」という言葉がある。手に職をつけて生活費を稼ぐ能力を身につけるのも良い。勉強して大学に行って安定的な会社や役所に就職するのも良い。共同体や家族の一員として生きていくため、人と繋がることに注力しても良い。美しいとか印象的とか容姿に特徴があればそれを武器に、変な知識や特技があればそれを武器にしたら良いと。自分でするより人にやってもらうことが得意ならそれを武器にしても良い。なんでもいいから、自分が持っているものやできると思うものを磨いて、生きていけるようになるべきと思った。
 個人的に印象的な場面として、趣味に没頭した男性の葬式に参加した人の話がある。死んだ男性の兄が葬式で、その生き方を「不幸者だ」とで否定する。それに対して、趣味仲間が「彼の幸せを勝手決めるな」と反論するシーンがある。個人的、そのシーンが非常に気に入った。楽しいを選んで必死に生きた人を他人が否定しないで欲しいし、好きに人生を捧げた人の覚悟も認めてほしいと思っている。
 なんか偉そうかもしれないが、生きることに少し悩んでいる人におすすめです。

タイトル:彼女の背中を押したのは 出版社:角川書店 作者:宮西真冬
10月31日読了