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「スロウハイツの神様」と「V .T .R .」を読んで(創作に興味ある方にお勧めかな)

「スロウハイツの神様」は、既に成功している映画脚本家と小説家、そして児童漫画家や画家等をめざすクリエイターの男女が棲むアパート(スロウハイツ)での物語。及びその小説家のデビュー作品。

本編でも言及されるが現代版トキワ荘をイメージしている感じがしました。小説家が手塚治虫で、売れない漫画家を世話する石ノ森章太郎が脚本家、そして、児童漫画家は、暴力的な漫画に悲観していたテラさんこと寺田ヒロオさんかなと思いました。

クリエイターとしての成功者、非成功者の苦悩、クリエイターにならなくても生活できる環境での惰性、自分にどこまで厳しくなるのか、そして、その必要があるのかという、クリエイターによるクリエイターの苦悩や幸せと現実が描かれた作品でした。

この物語は、ある自殺サイトを立ち上げ、子どもも巻き込みながら死者15人をだした事件を実行した少年が、「この小説家の本せいで人を殺した」と発言したところから始まります。その後、小説家は休筆し、あるファンのおかげで、3年後に復活します。

本編自体は、小説家が再起した後の話です。クリエイター達の心情やモチベーションに触れながら、映画脚はなぜこのアパートの大家になったのか、小説家を救ってくれたファンとは、と展開していきます。

最後の謎解きパートは少し強引な感じもしましたが、爽快感がありました。
クリエイティブな世界に興味がある方は読んでみても良いかも。個々の創作活動に対するモチベーションの違いを知れたのが良かった作品です。

なお、「V .T .R 」.は、ハードボイルド風の雰囲気を楽しむ設定であり、世界や登場人物の設定も多くを語らず、今後の展開は読者におまかせという作風で、読者に想像や創造を駆り立てるつくりでした。

11/29 読了 出版社:講談社 作者:辻村深月
タイトル:スロウハイツの神様上・下 V .T .R .




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