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小説投稿用アカウント。切ない話、感動する話が好き。誰かの心に残る作品を作るべく、日々創…

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小説投稿用アカウント。切ない話、感動する話が好き。誰かの心に残る作品を作るべく、日々創作を行っています。 アイコンはミカスケさん(https://t.co/JwQuN39Grc?amp=1)の、ヘッダーはmayu!さん(@_kapibara_san)のイラストを使用。

最近の記事

理解

私あなたのことなら何でも知ってるわ。好きな食べ物、はまっていること、財布の中身だってお見通し。最近、物忘れが多くて気にしてるでしょ。大丈夫よあなたが覚えていなくても私が全部記憶しているから。ほら言ってごらん、何を探してるの?ああ、なるほど。愛人の家のカギは上着のポケットの中よ。

    • 追憶

      少女は歌うことが好きだった。 細い腕、色白の肌、やせこけた頬。 そこから考えられないような澄み切った美声。 低くつやのあるその声は多くの人を魅了した。 少女のそばには決まってロボットが控えていた。 きしむ関節、武骨なボディ、まぶしく光るセンサー。 そんな外見でも彼のライブ演出は特別だった。 遠く響く少女の歌が人々を魅了する様を彼は残さず記録した。 その様子はSNSで拡散され、初めてのライブが開催される。 「ここまでこれたのはあなたのおかげ、ありがとう」 ロボットの背中に回

      • 投資

        「子供を作ることは損得じゃない未来への投資なんだ」 そう言ってほほ笑んだおとうさん。私のやることは何でもほめてくれた でも最近、その笑顔が妹ばかりに向けられるのはなんで? それは私という投資に失敗したから? ねえ教えてよおとうさん。

        • 犯罪

          「行かないで」 そう言って裾をつかんだ小さな手。 つながる腕は病的に細く、青あざだらけ。 もう彼女を守れない、自分の無力さを呪った。 この幼い少女が僕の本当の娘だったなら。 うつむく誘拐犯をパトカーのライトが照らした。

          規律

          カチカチカチと振り子時計が鳴る。 カコンカコンと鹿威しが岩を打つ。 人がいなくなったこの世界に。 時間を伝える道具だけが残っている。 その世界には時間という概念は不要だった。 それを用いるものは既に存在しない。 あまねく時間を伝える道具たちは。 無意味に道具としての寿命を終えていく。 最後の振り子時計が朽ち果てる。 すると、世界に変化が起こった。 それはモノクロフィルムみたいに。 世界から一切の変化がなくなったのだ。 世界はそのことを大いに後悔した。 なぜ、人間を滅ぼし

          変化

          その国の季節は着飾ることがとっても好きでした。 着物、Tシャツ、パーカー、トレンチコート。 彼女の服装に合わせて気候も変化します。 その様子を人々は風情があるといって称賛しました。 しかし彼女は好き勝手に服を選ぶことはできません。 気候の変化には一定の法則がなければならないのです。 それでも彼女なりに一生懸命おしゃれをします。 そのけなげな姿に人々はしみじみと感じ入るのです。 ある時、幼い少年が一言ポツリとこぼしました。 「季節はいつも決まった服ばかり着ていてつまらない」

          現実

          「もう知らない!」そう言って走り去っていく彼女。 違う女性と一緒にいたところを彼女に見られてしまい。 その理由を尋ねられ、言いよどんだことが原因だった。 必死に後を追って踏切の前で何とか追いつく。 どくどくと脈打つ胸の鼓動をどうにか抑え彼女に伝える。 女性には君に送る婚約指輪について相談してたんだと。 驚いた顔を見せる彼女、僕はカバンから指輪の箱を取り出す。 「会った時からずっと好きだった」彼女の薬指に指輪を通した。 彼女は照れるように指輪を見た後、太陽のように笑った。

          救済

          看護師からカルテを受け取って状態を確認する。 手術室に入る、患者の状態を見るとかなり悪い。 荒い呼吸、真っ白な肌、胸には大きな穴。 こんなにも苦しんでいる人、早く救わなければ。 死体安置所のドアを開くと独特のにおいがする。 肉食獣の便と肉の腐ったにおいが混じりあう。 先ほどの患者の遺体を安置してポツリと一言。 「お疲れ様でした」そうつぶやいた。 僕は医師、人の生死にかかわるお仕事。 今日も僕に仕事の依頼が入る、安楽死の依頼が。 右手には筋弛緩剤、それは人を殺すための薬剤。

          平等

          コンンイチハ、ワタシハオシゴトロボットデス。 マイニチ、ソウゾウシュサマノタメニハタラキマス。 ワタシノオシゴトハ、ウマノセワデス。 アサカラバンマデ、バフンニマミレナガラハタラキマス。 キョウハ、ドウリョウノロボットガコショウシマシタ。 ソレデモワタシハキンベンニハタラキマス。 ドウセアスニナッタラ、カエノロボットガクルノデス。 イツカジブンモ、ソウオモイナガラモガンバッテハタラキマス。