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変化

その国の季節は着飾ることがとっても好きでした。
着物、Tシャツ、パーカー、トレンチコート。
彼女の服装に合わせて気候も変化します。
その様子を人々は風情があるといって称賛しました。

しかし彼女は好き勝手に服を選ぶことはできません。
気候の変化には一定の法則がなければならないのです。
それでも彼女なりに一生懸命おしゃれをします。
そのけなげな姿に人々はしみじみと感じ入るのです。

ある時、幼い少年が一言ポツリとこぼしました。
「季節はいつも決まった服ばかり着ていてつまらない」
季節はわっと泣き出し、その涙で枕を濡らしました。
そして決心しました、もう法則になんか縛られないと。

それから季節は好きな服を着るようになりました。
ドレス、ダッフルコート、スーツ、ワンピース。
冬には猛暑日、夏の雪、もう季節はめちゃくちゃです。
そうして彼女を褒めたたえた人間は死に絶えたのでした。

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