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規律

カチカチカチと振り子時計が鳴る。
カコンカコンと鹿威しが岩を打つ。
人がいなくなったこの世界に。
時間を伝える道具だけが残っている。

その世界には時間という概念は不要だった。
それを用いるものは既に存在しない。
あまねく時間を伝える道具たちは。
無意味に道具としての寿命を終えていく。

最後の振り子時計が朽ち果てる。
すると、世界に変化が起こった。
それはモノクロフィルムみたいに。
世界から一切の変化がなくなったのだ。

世界はそのことを大いに後悔した。
なぜ、人間を滅ぼしてしまったのかと。
しかしいくら努力をしようとも。
もう人間を再び生み出すことは叶わない。

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